ただの雇われ。
 それが彼の今回の立ち位置だった。

 だが、それ自体が目的の一環であった以上、ただこのまま終わらせる訳にもいかない。

 日本の魔法使いたちが、認識面に斑が有り隙が多い事は、今事件への対応などである程度確認出来た。
 とは言え、魔法使いの戦力と言うものは個々の力量にも依存する面が有る。 その成長性まで含めた確認作業も、出来れば果しておくべきだろう。 それが敵となるにせよ、味方に引き込めるにせよ、だ。
 そして今 目の前には、特に大きな魔力を保つ者や、その見掛け不相応な技術の持ち主たちが揃っている。
 飛び抜けた化物も混じってはいるが、サンプリング対象としては悪くない。

 そんな監察者としての視点を持ちながら、それだけではない自分に苦笑する。

 作戦の概略は千草が立てたものであり、自身はある程度深くまで踏み込む為に雇用されていたに過ぎない。
 …のだが、いくら予想外のファクターが加わったからと言って簡単に敗北してしまった事が、彼の低いとは言えないプライドに触れた。 遊び半分でかまっていた小猫に引っ掻かれた事も、気分的にはそれを後押ししていた。

 たといそれが、つまらぬ意趣返しであると、そう理解しては居ても。

 

 

 


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
GS美神×ネギま! CrossOver Story
  ざ・がーどまん
          その31   
 
逢川 桐至  


 

 

 

 エヴァの望外の行動に紅潮していた思考の中で、ネギはふと重要な事に気が付いた。

「…アレ?
 よく考えたら、エヴァンジェリンさん、呪いはどうやって…?」

「そう言えば、そうよね。 エヴァちゃん、外に出らんないんじゃなかったっけ?」

 今更になっての問い掛けに、エヴァはつまらなそうにフフンと笑った。
「ちょっと便利なおもちゃ
「ちょっと便利な道具が手に入ってな」

「マスター。 横島さんの事をそんな風に言われるのは…」

 諌めた茶々丸の言葉に、その名に聞き覚えのある面々の意識が向く。
 その時だった。

「マスター?!!

 茶々丸の警告の声。
 彼女と真名、それにエヴァらの感知に長ける面々は感じ取ったのだ。 至近で突然立ち上った大きな魔力の発動を。

「遅い。
 プノエー・ペトラス
 石の息吹!!

 遅延魔法だろうワードの解放。
 広がり迫る石化の煙に、真名がのどかを、楓が朝倉を、刹那が木乃香を抱え、古菲と共に飛び退る。 面子の大半が、コレに対する抵抗を持ち合わせないのだ。 判断の早さは、さすが武の名を被せられた面々だ。 気絶したまま拘束されている千草は、小太郎が助け出している。
 更に若干遅れてネギと明日菜とが逃げ出す。

 逆に、エヴァは煙を切り裂く様に茶々丸と突進した。
 だが、そこに少年の姿は無い。

 周囲に意識を拡げた瞬間、明日菜の声が上がった。

「なっ?!

 続けて彼女のハリセンの、思い切り振り抜かれた鈍い風斬音。

「ぼーや!?

 真っ先に向かうのは最大戦力か、もしくはその逆との読みを外され、エヴァは慌てて彼の下へと走った。

「危ないっ、アスナさんっ

 無効化が有っても、彼女とて殴られれば傷付くのだ。
 反射的に庇おうとしたネギを、フェイトの拳が打ち据える。

 脇腹への痛みに耐えながら、辛うじて放たれた雷の矢が、彼に一歩退かせる事に成功した。
 その一瞬に、明日菜がネギを抱えて飛び退る。

 そんな彼らを追撃しようと、地に手を添えたフェイトの口から呪文が零れた。
 ドリュ・ペトラス
「石の槍」
「させるかっ レフレクシオー
「させるかっ 氷楯っ!!

 ギリギリ間に合った氷の盾が、ネギたちと石の槍との間を塞ぐ。
 追撃の呪唱に移ったフェイトだったが、それは真名の銃弾が阻害した。

 

 

 

 じろりとそちらを見遣れば、西の長の娘を含む3人の少女を、チャイナと忍者の二人が守る様に挟んでいる。

 小太郎も何やら文句を口にして、千草を抱えてそちらにいた。
 これを奇貨と逃げれば良さそうなものだが、そう言う思考は出て来ないらしい。 主に性格的なものが原因だろう。 種としてのチカラはそれなりだが、甘いに過ぎると意識から外した。

 そんな面々の前に陣取った銃遣いと剣士とが、矢継ぎ早に追撃を仕掛けてくる。
 離れず可能な牽制に留めた攻撃を、それでも複数同時に放って来る2者の手並みは、歳不相応に高い。 護衛対象から離れず、役割と言うものをきちんと理解しているようだ。
 特に銃遣いはそれが自身の距離だからか、狙いも正確で間の読みが巧みだ。 最初から護衛として出てきたのなら、フェイトをして侮るに難い存在だっただろう。

 その一連の流れを、飛んで来る銃弾と気刃とを躱しながら、脳裏へと記憶する。

 それが若干の隙になったのは否めない。

「よそ見しながらとは余裕だな」

 言葉と共に叩き付けられる殺気。

 懐に入り込む小柄な影から、距離を取ろうと反射的に跳ねる。

 そこに飛び込んで来る光の矢。
 崩された姿勢に思わずそちらへ目を向ければ、従者に支えられたネギ・スプリングフィールドの姿があった。
 まだ動けたのかと、フェイトの顔が失態に歪む。

 そんな彼を、創り出したらしい巨大な剣で、エヴァが躊躇無く真っ二つにした。

「やはり分が悪過ぎるね… 見るものはそれなりに見れたし、彼も子供と侮り過ぎた様だ。
 今日のところは退かせてもらうよ」

 そう言葉を残すと、フェイトの上半身と下半身がパシャっと弾けた。

 

 

 

 斬った感触と今の様子とに、エヴァは舌打ちをする。
 取り逃がしたと言うか、本気を出されていなかった事で、気分的に点睛を欠いた。 折角のうっぷん晴らしだったと言うのに。

「ちっ…
 おまえたちは無事か?」

 忌々しさを押して、とにかく一同の確認をしようと振返る。

 駆寄ってくる従者。
 一塊になっている6人。

 そして…

「ネ、ネギ?!
「兄貴?!

 殴り付けられた後背脇腹を押さえて痛みに呻くネギを、明日菜とカモが心配げに支える。

「茶々丸っ」

「はい」

 指示を受けて、茶々丸は彼の体の検査に入る。

 尤も、見ただけでも原因は明らかだ。
 ネギの押さえた手の下。 服も何もが石と化したソコを中心に、その範囲がじわりじわりと広がっていっているのだから。

 

 

 

「おい、爺。 さっさと準備しろ

「何がどうしたと言うんじゃ?」

 いきなり広がった影から出てきたエヴァの言葉に、訳が判らず学園長が聞き返す。

「その馬鹿を連れて行く。 さっさとしないとぼーやが死ぬぞ」

 『死』の一言に、彼の雰囲気が切り替わった。
 いくらなんでも、あの少年を失うなんて事態は問題に過ぎる。

「よし、その魔法陣に入れ。 すぐ儀式に入るぞ」

「判った、急げっ」

 その流れを取り残されたように3人は見遣っていた。
 準備の手伝いこそ出来たが、儀式そのものは高度過ぎて手の出しようがない高音と愛衣。 それ以前にそもそも何も手伝えない横島とでは、手の出しようが無かった事もあるが。

 やがて、短くない呪唱が終わる。
 よしと呟く学園長をよそに、エヴァは立ち上がると横島の襟をひっつかんだ。

「お、おい?」

「行くぞ」

「ちょっと待って下さい」

 横島の当惑を無視した動きに、待ったを掛けたのは高音。
 小うるさそうに見返すものの、エヴァはそれでも尋ね返した。

「なんだ?
 急ぐんだ、大した事でなければ後にしろ」

「私もご一緒します。
 横島さんを抑える手は、多い方がいいと思います」

 その申し出に、確かに一理あるとエヴァは判断した。
 別荘での初会合もそうだが、能力の高さとは裏腹に、注意していないと何を仕出かすか判らない危うさがこの男にはある。

 その様子に、愛衣も名乗りを上げた。

「わ、私も」

「二人も三人も変わらん。
 こいつの袖にでも捕まっていろ。 急ぐぞ」

 高音と愛衣をも伴って、今度こそ横島と影の中へと沈んで行く。

「出来れば、誰か手伝って欲しかったんじゃがなぁ…」

 そう呟く学園長の前には、10万枚近い紙の山。

 魔法陣をエヴァが出た直後から、判子を押し始めたソレの整理くらいは誰かの手が欲しかったのだ。
 エヴァへの報酬を満たす為、土曜の昼になる彼女の帰市までの間、5秒に一度と言う拷問もかくやと言う作業が要求されるのだから。

 

 

 

「連れてきたぞ」

「つか、何がなんだか説明せんか不良幼女っ」

 べしゃりと川原に落されて、横島が抗議の声を上げる。

「横島さん、愛衣ちゃん」

 その姿に、嬉しそうな声を上げたのは木乃香だ。 高音の名が無いのは、単に彼女の事を知らないからである。
 見慣れぬ和服で駆寄って来る彼女に、横島たちは笑顔を返した。

 そんな彼らに、続けて近付いてきた楓が茶々丸の膝枕で横たわるネギへと指差す。

「横島どの、今は危急の時故、一刻も早くネギ坊主を」

 エヴァがわざわざ連れてきた事で、彼女はそれが出来る事に疑いを挟んでいない。

「お、おう…」

「これは… 魔法による石化、ですか?」

 腰回りと左胸・左大腿部がまるまる石と化していた少年に、高音が痛ましそうな視線を向けた。
 それにエヴァが答える。

「そうだ。
 なまじ抵抗力が高い所為で、中途半端に進行が遅いんだ。 このままのペースで肺や心臓が石になったら、全身が石になるより先に血も呼吸も止まって脳が死んでしまう」

「そんな…」

 一気に進行するならまだしも、今のペースでは10分やそこらは確実に掛かる。
 だが、ほんの数分でも酸素が途切れると、簡単に機能障害を起こすのだ、脳は。
 生体としての機能自体は、魔法使いも一般人も大差無い。 このまま放置されれば、この少年の命が危ういのは確実だった。

「なぁ。 横島さんに出来るんやったら、お願いや、ネギ君を助けたって」

 縋り付いてくる木乃香の懇願。
 周囲の少女たちも、一様に期待の視線を向けて来る。

「はぁ… なんだか判んないけど、このガキを治したらいいんだな?」

「そうだ、貴様ならきっと何とか出来る。 急げ」

 言葉は命令なのに、その口調は請願だ。
 エヴァのそんな様子にも時間がないと理解して、横島は仕方なく文珠を一つ取り出すと、見知らぬ少年へぽいっとばかりに放り投げた。

 そんな無造作で無遠慮な行動に、一瞬 少女たちの目がキツくなる。

 だが、ネギに触れた文珠が、ぱぁっと輝きを放った直後にそれは和らいだ。
 まるで行動のソレに比したかの様に、あっさりと石化が解かれたからだ。

「出来るとは思っていたが、また随分と簡単に…」

 エヴァの呟きは、少女たちの総意でもあろう。

 ともあれ、ネギが助かったのは事実。
 疲労もあって意識混濁に陥っているようだが、その命には別状なさそうだ。 少なくとも彼の呼吸は、荒く苦しげだった先程と比べて穏やかなものへと変わっている。

「良かった、ネギ先生…」

 喜んで彼に抱き縋る少女たちの姿に、横島のこめかみがぴしりと青筋を立てた。

「く…
 やはり、美形か? ナンパ師予備軍なのかっ?!

 叫び出した彼の左右の手を、反射的に抑えた高音と愛衣の行動が無かったら、感動の場面がちょっとアレな事になっていたかも知れない。

 いや、もう充分アレか。
 明日菜や刹那、真名の彼を見る視線は、至極胡乱なモノに戻っていた。

「ちょ、放して、高音ちゃん、愛衣ちゃん。 俺は…」
「ダメやって、横島さん」

 そんな様子に、苦笑しながら木乃香が止めに掛かった。
 ネギの命も長らえ、こんな遣り取りも重かった空気を振り払う役には立っている。 とは言え、限度と言うものもあろう。

「そゆうんもマイナスやで」

 腰に左手を当て、右手の人差し指を振って、全身でダメ出しのリアクション。
 だが、一転、笑顔を向けると、愛衣から彼の手を受け取りギュッと握って頭を下げる

「…そやけど、ネギくん助けてくれてホントありがとうなぁ」

 途端に、横島は照れ臭そうに頭を振った。

「い、いや、まぁ… ほら、こんくらい、なんてこたぁないって」

 キラキラした感謝の視線と、握って離さない柔らかい手とに、完全に拘束されている。 内心ではかなりの葛藤に揺れ動いていたが。
 そんな様子は、傍目には単なるむっつりにしか見えないだろう。

 が、彼を知っている者には、充分な驚きだった。

「な…」

 既に拘束の手が離れていると言うのに、いっかな暴走する気配が無い。 何よりもその事に驚いて、高音は固まっていた。
 これまでの付き合いの中。 不埒な事をされない愛衣でも、横島を抑えるには結局 力尽くしか手がなかったのだ。

「だから、このかお姉様、なんです」

 愛衣が苦笑して、そう呟いた。
 ひそかにこの感動を分かち合えた事に喜びを感じながら。

 そんな横島の前へ、小さな影が進み出た。

 普段、女性以外の名前なぞロクに覚えたりしない横島だ。 だが、『カレ』を知った時が時だっただけに、虚ろな記憶の中からその名が出てきた。 そのおかげで、高音と愛衣の唇の柔らかさを堪能出来たのだ。 いっそ当然だったかも知れない。

「…おまえ、確かカモ、だったよな?」

「おっ、覚えててくれたんすか、兄さん?
 いやそれにしても、ただ者じゃねぇとは思ってたが… またとんでもない高位の治癒術師だったんすね」

 カモのどこか舌舐めずりする様な言葉。

 一度仮契約を失敗させている事もあって、済し崩しにでも引きずり込めればと思い立ったのだろう。
 子供であろうと、男とキスするような男ではないのだが。 尤も、相手が美女・美少女であれば、率先してノッテくる男でもあるけれど。

「ん?
 あぁ、俺はゴース… えぇっと、退魔師の類いなんだが」

「へっ? こっちが専門じゃないんで?」

 とするとアレは賢者の石か何かか、などと呟き出すカモを無視して、横島はぐるりと周囲を見渡した。
 見た顔も含め、いずれも負けず劣らず艶やかな花ばかり。 今はまだ蕾ばかりだが来年になれば高校生だ、無問題だと心にメモ。

 身の内で邪さをたぎらせていて、ふと気が付いた。
 知っている顔で、この場に居る方が自然な少女が一人足りない、と。

「あれ、夕映ちゃんは何処行ったんだ?」

 夕映の取った行動に気付く筈も無い。 …と言うか、彼ならまず逃げる事を当然の様に選択するから、文珠を使って立ち向かおうとしたなんて想像すら出来ないのだ。
 それだけに、この場に居ない少女の事が気に掛かった。 『護』が発動したのだから、当然と言えば当然。 来年、再来年は微妙にしても、彼女は将来に期待の持てる美少女なのだから。

 誰へともなく出た言葉に、反応したのは木乃香。
 はっと、両手を頬に当て、すぐに再び横島の手を取った。

「そ、そやった、横島さん。 お願いや、ウチと一緒にウチに来たって」

「ど、どうしたんです、このかお姉様?」

 いきなりの慌てた様子に、愛衣が過剰に反応した。

 彼女の知る木乃香は、何にも動じないと言うか、マイペースに人を引き摺ると言うか、そんな感じなのだ。
 なのにと、そんな彼女の振る舞いが、余程の事が有ったのだと愛衣に気付かせた。

「ゆえ… ゆえなぁ… なんや来れへんようにしたったって、さっきの白い子が…」

 横島たちにはすぐに理解出来ないその言葉に、のどかがビクっと反応した。
 それは、ニヤニヤと状況を観察していた朝倉も同様。

 その『来れない様にする』と言う言葉に、考えない様にしていた最悪の想像が喚起される。

 カモが言っていた様に、石にされているだけならいい。
 いや、それですらマズイ可能性が有るのだと、ついぞさっき目の前で見せ付けられたばかりだ。
 
「なら、とっとと戻りましょ。
 ゆえちゃんもパルも、その人が何とか出来るんでしょ?」

 ネギを抱き上げて明日菜が言う。
 その言葉にそれぞれ頷くと、エヴァが茶々丸に千草を担ぎ上げさせる。
 そうして、一同はぞろぞろと来た道を引き返しだした。

 

 

 

 関西呪術協会の総本山は、慌ただしい気配に包まれていた。

「えっ? どう言う事?」

「恐らく、各地に赴いていた人員が予定より早く戻って来れたんじゃないかと…」

 明日菜の疑問に刹那がそう答える。

 その推察は正しい。
 茶々丸が意図して成した訳ではないのだが、千草の意識喪失に伴う過剰なフィードバックに因り、各地での騒ぎの中心を担っていた式の機能を損ねたのだ。 それによって、問題の収束は速やかに計られた。
 結果として出来た余裕が、早くに明らかになっていた本山の問題への速やかな対処へと繋がったのだ。

 歩いて来る彼女たちを発見して、伝令が飛んでいたのだろう。
 階段を登り切ったそこで、詠春が一同を出迎えた。

「みなさん、ご苦労様でした。
 なにより、木乃香を助けてくれてありがとうございます」

 頭を下げた彼に、代表して答えるべきはネギだったのだが、さすがにまだ意識が戻っていない。

「それで、ネギ先生は大丈夫ですか?」

「えぇ、今は疲れて寝てるだけです」

 明日菜の答えに、彼はホッとした笑顔を見せた。
 詠春にしても親友の忘れ形見なのだ。

 そんな彼に苦言を呈したのは、この場で最も偉そうな最も小柄な少女。

「不甲斐ないにも程があるぞ、近衛詠春」

「エヴァンジェリン?!
 あなたも手伝ってくれたとは… ありがとうございます」

「フン、まぁ一時的にでも自由になれるオマケ付きだったからな」

 そんな軽口に答えつつも、もう一度彼は頭を下げた。
 そしてぐるっと一同を見渡して、見覚えのない面子の中に捕らえられた千草を発見すると、配下に命じて彼女を連れ出させる。 小太郎も大人しくその後に従った。

 同時に、気を失っているネギも客間へと運ばせる。
 こちらには、カモと明日菜、茶々丸、真名が付きそった。 真名が一緒に行ったのは、自身に出来る事はもう終わったと踏んだからだろう。

 のどかも付いて行きたそうにしたが、彼女にはもう一つ気掛かりな事があった。

「あなた方も、今日はここで休んで行って下さい。 部屋は用意させましたから」

 そう言って歩き出した詠春へ、のどかと目配せしあった木乃香が声を掛けた。

「…あんなぁ、お父様」

 さっきから見慣れぬ少年の手を取ったままの娘に、ソレを気にしていると気取られぬよう笑顔を向ける。

「何かな、このか?」

「ハルナとゆえ……ウチらと一緒に来た二人は…」

 その問いに、彼の笑みがピシッと固まる。

 同時に、木乃香と朝倉、のどかの顔に緊張が走った。

 詠春が……明日菜たちの話では石化されたと言う彼が、自分たちを元気に迎えに出てきたから。
 だから、二人も無事に石化を解かれているのではないかと、そう思っていたのだ。

「眼鏡の少女……早乙女さんでしたか、彼女は無事です。
 尤も、状況が状況ですから、今は眠って頂いていますが」

「じゃ、じゃあ、ゆえは…?」

 詠春の言葉に、のどかが恐る恐る尋ね返す。
「もうひとかた
「もう一方は…」

 言い掛けて言葉を飲み込む。
 そしてすぐに口を再び開いた。

「西の威信にかけて、必ず無事にお返しします」

 言葉の意味する所に気付いて、のどかはフッと意識を失った。

 

 

 

 【とにかく、続きをご覧下さい】

 


 ぽすとすくりぷつ

 原作を見る限りでは、この段階でのフェイトの目的って曖昧なんですよね。
 敢えて言うならお金でしょうが、西洋魔法使いを敵視してる千草が、東の所属でないとは言えどうして何処から味方に引き込んだのか、それも不明ですし。 月詠も微妙ですが、小太郎と同格で雇われてるっぽい……何せずっと新入り呼ばわり(^^;……ので、金銭的な実入りが大きかったとも思えないんですよね。 少なくとも、彼の能力とかを考えると格上の額面が動くべきでしょう。

 そんな訳で、日本の魔法使い組織及び構成人員の調査・スカウトなど、を彼の目的に組み込んでます、この話の中では。
 ネギ相手に遊びを見せたり挑発したりしたのも、その一環だったって事で(__)

 それにしても…
 も少し早ければ、朝倉の仮契約、話に組み込めたのになぁ…(T_T


 
 

前へ
戻る
次へ

 

感想等頂けると、執筆の糧になります。 お手数でなければお願いします。
  

    お名前をお願いします。
    (任意)

    差し支えなければ、メールアドレスをご記入下さい。
    (任意)

    タイトル

    ご感想・コメントをお願いします。