現在位置:asahi.com>ニュース特集>イージス艦衝突> 記事 衝突直前、海自艦の謎 レーダー映ったか 赤灯見えたか2008年02月20日17時31分 千葉・房総半島沖でイージス艦「あたご」が19日早朝、マグロはえ縄漁船清徳丸に衝突した事故で、防衛省が明らかにしている情報と、清徳丸の僚船の関係者らによる証言の間には食い違いもみられる。海上で何が起きたのか。未解明の点が残されている中、発生から丸1日たった海域では行方不明の親子の捜索が行われた。
■メーカー「映るはずだ」 高性能を誇るイージス艦の水上レーダーに、漁船の群れは映っていなかったのか――。 事故をめぐる最大の疑問点について、防衛省は、事故から20時間あまりたった19日深夜の会見でも「レーダーに清徳丸が映っていたか否か。また仮に映っていた場合に、乗組員が認識していたかどうか。現時点では不明である」と歯切れが悪かった。 ただ、「あたご」の対水上レーダーは、最長で約20キロまで見通せる。当時は海も穏やかで、船影が波に隠されていた可能性は少ない。 会見ではさらに、衝突2分前に目視で確認した「緑色の灯火」についても「漁船とは分からない状況だった。浮いているブイの可能性もある」と述べた。 こうした場合は、見張り員とレーダー員が相互に情報交換するのが常識だ。が、その連絡が行われたのかと問われると「現時点では分からない」。 こうした発言に、清徳丸と一緒に漁に出た船長らは強く反発する。 「我々のレーダーには(仲間の船が)映ってるんだ。海自艦のレーダーには、確実にこっちが映るはずだ」と康栄丸の中ノ谷義敬船長は言う。 船がレーダーにはっきりと映るように、02年7月建造以降の小型漁船には「レーダーリフレクター」と呼ばれる装置の装着が義務づけられた。93年完成の清徳丸はその義務がなく、05年11月に行われた同船の定期検査でも、装着の記録はないが、漁協関係者によると、全長12メートルの清徳丸ならレーダーに映るはずという。ある船舶レーダーメーカーも「基本的には繊維強化プラスチック(FRP)製でも木造でも映る」という。
■僚船「出港時は全点灯」 「衝突の2分前、右前方に『緑の灯』が見えた」。あたごの乗組員は、防衛省の聞き取り調査に対してこう答えたという。同省は、19日深夜の記者会見で「『赤い灯』に関する情報は入っていない」とも説明した。 海上衝突予防法では、船舶の左舷に赤灯を、右舷に緑灯を設置することを義務づけている。赤灯は船首から左に112度、緑灯は船首から右に112度の範囲からしか見えず、どちらの色の灯火が見えるか、灯火がどの方向に動いているかによって、自船と相手船の位置関係を目視で把握できる。 防衛省の説明通り、2分前に緑灯が見えたとすれば、10ノットで北上するあたごの北東側数百〜千数百メートル先を、清徳丸が船首をおおむね南ないし東の範囲に向けて走っていたことになる。 しかし、清徳丸の僚船は、南西ないし南南西に船首を向けて走っていた。康栄丸の中ノ谷船長は「清徳丸が港を出るときは、電灯は全部ついていた。おれは海自艦の緑灯を見たから、海自艦は清徳丸の赤灯を見ているはずだ」と、疑問を呈した。05年11月の清徳丸に対する検査でも灯火の装備は確認されている。 日本海難防止協会の増田正司・企画国際部長は「もし防衛省の説明通りならば、清徳丸はあたごとすれ違う方向に進んでおり、そもそも衝突の恐れがほとんどなく、イージス艦、清徳丸双方に回避義務が生じない、ということになる」と言う。 防衛省は「緑の灯」について、「現段階では右舷灯だったかどうかはわからない」「緑色の光が動き出したので漁船とわかった」と説明している。
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