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恩田陸 初の戯曲「猫と針」

2007年08月14日14時35分

 山本周五郎賞を受賞した『中庭の出来事』や『チョコレートコスモス』など、演劇を題材にした小説を発表してきた恩田陸さんが、ついに戯曲「猫と針」を書き下ろした。若い世代から支持を集める演劇集団キャラメルボックスが、22日から公演する。

写真近著『木洩れ日に泳ぐ魚』でも高い演劇性が評価されている恩田陸さん=東京・渋谷で

◇濃密で邪悪な“うそ”作り

 「猫と針」は、高校の同窓の男女5人が友人の葬式から帰る途中、喪服のまま居酒屋で、亡くなった友や別の同窓生についての話を繰り広げる話だ。セットはいすだけというシンプルな一幕もの。「人はその場にいない人の話をする」という設定は、芥川龍之介の「藪(やぶ)の中」が好きな恩田さんらしい。

 天才女優の誕生を描いた『チョコレートコスモス』執筆時にキャラメルボックスを取材、今回は逆に戯曲の執筆を持ちかけられた。

 同作品の中で、脚本家が〈芝居は、「事件」であり、共有される「体験」なのだ〉と思う場面がある。

 「俳優の演技という“うそ”を、観客が信じる“ふり”をするという、際だった虚構性を前提としているのが舞台。しかも、ライブ。うそを作り込むのが好きなので、いつかは戯曲を書きたいと思っていた」

 小説と勝手が違って苦労したのは「重みと存在感がまるで違った」せりふづくり。劇団の読み合わせに立ち会い、役者の力や、共同作業という面も実感した。

 「書いていて、ここは自然でここはヘンと思っていた部分が、実際に読んでみると逆だったり、ヘンなところも味になったりして」

 いま、雑誌連載を数本抱え、第1稿が仕上がったのは公演3週間前だ。

 「チラシやポスターができた時は、先に本の表紙ができたみたいで新鮮だったんです。が、まだ一行も書いていないのにチケット完売ときいた時は、さすがに穴をあけたらどうしようと、雑誌連載にない恐怖を感じました」

 本番直前まで脚本の手直しを続けるという。「健全でさわやかなイメージのキャラメルボックスに、濃密で邪悪なものをやってもらいたいと画策中です」

 ◇22日〜9月9日、東京・六本木の俳優座劇場(当日券あり)▽9月13〜16日、福岡・天神の西鉄ホール。劇団(03・5342・0220)。

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