北京五輪、日本で最終合宿が人気

大気汚染や食の安全を懸念し、会場入りを遅らせる

  • 2008年2月20日 水曜日
中国  環境  日本  韓国 

Kenji Hall (BusinessWeek誌、東京支局テクノロジー担当記者)
Moon Ihlwan (BusinessWeek誌、ソウル支局長)
Frederik Balfour (BusinessWeek誌アジア特派員、香港)
米国時間2008年2月12日更新 「China's Commuter Olympics

 2008年夏季五輪――。その開幕で、中国は新たな経済力を世界に示すことになる。だがこの中国の“国際舞台デビュー”は、もしかすると悪名高い大気汚染で台無しになるかもしれない。

 あえて危険は冒さず、北京滞在をできる限り短くしようというチームも現時点で現れている。20余りの国の代表団は、日本もしくは韓国で数週間調整を行い、大会直前に北京入りすることを最終決定した。

 既にフィンランド、フランス、ドイツ、英国、スウェーデン、アイルランド、オランダ、米国の選手団は、日本で五輪前の最終調整を行うと発表。日本オリンピック委員会(JOC)本部役員の西村賢二氏によれば、今後数カ月でさらにそうした国の数が増える見込みだという。

 韓国も同様の人気だ。シンガポール、スイス、ニュージーランドなど10カ国を受け入れる予定で、ブルガリア、アルジェリア、その他4カ国からも打診を受けている。

 表向きの理由は、「開催地である中国に近い場所で世界レベルの施設を利用したい」というもの。日本や韓国なら、北京への空のアクセスもとりわけ便利だ。しかし、本音は「ぎりぎりまで現地入りを避けるため」というケースもある。

食の安全と大気汚染に不安あり

 日本の大会関係者によると、いくつかの代表団は、中国での調整中に選手が健康を害するリスクに懸念を表明しているという。「声を大にしては言わないが、各国関係者は、北京での食品の安全性と大気汚染を心配していた」と、フィンランドとデンマークの合宿先となる香川県の県職員、今滝哲之氏は明かす。
 ドイツの陸上チームは、北海道の士別と芦別の2都市に滞在する。ドイツ関係者は「最初からはっきりと、開幕まで北京入りはしないと断言した」と、士別市職員の室政敬氏は言う。

 北京での五輪開催が決定して以来、中国は鳴り物入りで大気汚染と取り組んできた。その一環として昨年8月には、交通規制を実施して市内を走行する車両数を3分の1に減らす実験を行ったが、大幅な環境改善効果は見られなかった。

 世界銀行が昨年発行した報告書によると、中国では急成長に伴って交通量が増え、自動車生産台数は拡大中だ。また国内電力の約80%を石炭に依存しており、石炭火力発電量も増加している。

 2000〜2005年では、環境汚染を抑制する13項目の目標値のうち10項目について達成できておらず、大気汚染指数は「横ばいか、場合によっては上昇」しているありさまだ。「中国都市部の環境汚染は依然として世界でもトップクラス」であるという(世界銀行の報告書『Cost of Pollution in China(中国環境汚染による損失)』より)。

時差ボケ解消にも有効

 中国政府はあらゆる手を使って大気汚染の改善を図るものと専門家は見ている。例えば、開幕の何カ月も前から工場の操業を停止したり、車両の乗り入れを禁止したりするといったことだ。

 「できる限りの対策を講じるだろうが、それで事足りるという保証はない」と、環境に関する調査を幅広く行っている中国シンクタンク、シビック・エクスチェンジ(思匯政策研究所、香港)のクリスチーン・ローCEO(最高経営責任者)は言う。とはいえ、開幕までには何とか間に合わせるだろうというのがロー氏の見方だ。

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