ここから本文エリア

現在位置:asahi.comマイタウン茨城> 記事

病院赤字、医師不足 地域にズシリ

2008年02月22日

写真

医師不足で3〜4階の病室には空きベッドが並ぶ=筑西市の筑西市民病院で

 県内の市町村立病院で膨らむ赤字が、まちの財政を圧迫している。医師不足から休診や入院の中止に追い込まれる診療科が出るなどして、医業収益が低下。経費を抑えるなど努力しても追いつかない。厳しいまちの病院の現実を筑西市民病院を例に見た。(久保智祥、金森定博)
 市民病院の3、4階のフロアは、静寂に包まれていた。廊下の両側にはがらんとした病室が並び、ナースステーションは無人。病室には液晶テレビが備え付けられた空きベッドが並び、時が止まったようだ。
 「医者さえ確保できれば、いつでも再開できるのですが」
 同病院の添野正人事務部長は苦い顔でこう話した。昨年末、4人の常勤内科医のうち2人が派遣元の日本医科大に戻った。これにより、内科の入院を中止し、3、4階の病床は閉鎖。5階に外科などの入院を集約した。残る2人の内科医も1人は3月いっぱいで引き揚げる予定だ。
 内科の「崩壊」で、173床あった病床は60床しか稼働できず、年間6億円の医業収入が減る見込みだという。
 同病院では、1月1日付で看護師や技術職員などスタッフ38人を市役所本庁に配置換えする「大リストラ」をしたが、人件費の削減効果は約1億円だけだった。
 添野さんは「内科の医師がいないと手術件数も減ってしまうし、インフルエンザが流行しても入院などの対応ができない」と苦境を語る。
 内科医のほかにも、同病院はここ数年、医師不足に泣かされ続けてきた。収益をあげるうえで特に痛かったのが、脳神経外科の常勤医がいなくなったことだ。04〜05年に2人が引き揚げ、現在、非常勤医が週1回外来をみている。
 このほかにも、03年度に耳鼻咽喉(いん・こう)科と、産科の分娩(ぶん・べん)が休止。06年度に小児科、07年度には眼科で常勤医が退職したり大学に戻るなどして、非常勤医による外来のみになっている。
 07年度当初には7診療科に15人いた常勤医が08年度からは9人になる見込みだ。
 内科医で1人1億円以上、脳神経外科だと数億円の医業収益(売り上げ)が見込めるといわれる病院の世界。逆に言えば、医師不足は収入減に直結する。
 06年度は市の一般会計から4億円を繰り入れても、なお2億8千万円の単年度赤字を出し、累積赤字は29億円となった。
 07年度も当初予算で一般会計から3億5千万円の繰り入れを計上していたが、12月補正で4億5千万円を追加。さらに3月定例議会には3億円の追加を予定しており、認められれば今年度の繰り入れは11億円となる。
 市の一般会計の規模は07年度当初予算で345億円。ただでさえ、筑西市は財政健全化に取り組んでいる最中で、07年度は手数料を56件見直して280万円の増収を図ったほか、市単独補助金を164件廃止、削減して1億6500万円、市長らや職員給与をカットして人件費を2億円削減するなど、市民や職員に痛みの伴う予算を組んでしのいできた。
 それだけに、多額の繰り入れをせざるを得ないことに市財政当局も「地域医療機関としての役割は大きいが、市財政を圧迫していることは確か」と認める。
 議会も昨年12月の定例会で「1年以内に改善がみられないようなら経営形態を見直していくべきだ」との方針を打ち出した。

ここから広告です
広告終わり

このページのトップに戻る