若者の間で「KY」という言葉が流行しているといわれる。「空気、読めない」の意味という。
周りの人に気配りができず独り善がりの振る舞いで迷惑をかける若者を批判的に言っていると思ったのだが、そうではないらしい。「KY」は、周囲から浮いた存在になりたくない、目立ちたくないなどの意識で使われているようだ。
首都圏の大学生でつくる「大学生意識調査プロジェクト」が行った昨年の調査結果では、日常生活で空気を読むことは重要との答えが九割を超えた。調査に携わった学生たちの座談会が「宣伝会議」(二月一日号)に載っているが「ぼくたちが空気を読むのはごく当たり前のこと。周囲と楽しくやっていきたいだけです」と現代学生気質を説明する。
打たれるなら、出るくいになりたくないといった意見や、負けた人から嫌みを言われるぐらいなら、自分が負けたほうがいいと競争を嫌う。自分が悪いと思っていないのに、嫌な思いを避けるために謝ってしまうなどの発言が続く。
ハーバード大教授のアンドルー・ゴードンさんは、本紙十七日付特集「ニッポン知の現在」で「今の若者たちは何の危機感も持たず、自己満足している」と指摘する。「日本社会の抱える新たな心配のタネだ」。
失敗を恐れぬ挑戦は若者の特権である。きらきら輝く「個性、豊かに」のKYなら歓迎なのだが。