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「魚のお兄ちゃん生きていて…」ホームレス祈りと怒り

2008/2/21 17:00
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 イージス艦衝突事故で、漁船の吉清(きちせい)治夫さん(58)、哲大(てつひろ)さん(23)父子の行方は依然分からず、地元千葉の人々の焦りは募る。だが、一心に無事を祈る人が東京にもいる。上野のホームレスだった人々とその支援者だ。「魚でもいいかな」。哲大さんが仲間と捕った魚を初めて差し入れにきたのは4年前。それ以来、哲大さんは黙々と魚を届け続けていた。

 「はあーっ」。ホームレス支援団体「赤銀杏会」(本部・東京都荒川区)会長の石崎克雄さん(61)は20日夕、受話器を置くと深いため息を吐いた。吉清さん父子が所属する新勝浦市漁協に安否を問い合わせたが、「手掛かりなし」。

 泳ぎが苦手という哲大さんだけに、「何かにつかまって生きていてくれればいいが…」。石崎さんは一睡もできずに充血させた目を潤ませた。

 出会いは、石崎さんのボランティア活動を伝える新聞記事と1本の電話がきっかけだった。

 自身もホームレス経験がある石崎さんは上野公園で朝食を配る活動をしているが、食材が足りない窮状を伝える記事を見た哲大さんが先輩にこの話をした。

 「魚でもいいかな…」。石崎さんの自宅兼事務所に2人から遠慮がちな電話があった。石崎さんは「おかずになるんなら喜んで」と返した。それから1週間後の朝、体格がよく、真っ黒に日焼けした男らがトラックで事務所に乗り付けた。

 「最初は、暴力団かチンピラかと思って慌てたよ」

 築地市場からの帰りなのか、哲大さんらはイワシなどを詰めた30箱もの発泡スチロールを差し出した。調理師経験もある石崎さんは魚を素揚げにしてホームレスに提供した。思わぬ海の幸に「うまい、うまい」とみんな顔をほころばせた。

 「今どき、こんな気持ちのいい若者がいるなんて」。うれしさのあまり哲大さんらを誘って朝まで飲み明かした。最初は物静かで口数少なかった哲大さんは、話を振るうちに「船を買う」「それもデッカイ船を買うんだ」と夢を語った。だが、「嫁さんは早くもらうといいぞ」と水を向けると、「うーん」と照れてうつむいた。

 翌朝は上野に朝食を届けるのも手伝ってくれた。哲大さんがホームレスに直接会ったのはこの1回きり。それでも事故後、「あれは魚のお兄ちゃんじゃないか」「何としても無事でいてほしい」と当時のホームレスらからの電話が事務所に寄せられた。

 魚の差し入れは10回を超えた。石崎さんが「無理せんでいいよ。気持ちだけでいいから」と言っても毎回、10箱以上の魚を届けてくれた。朝食の準備で手が離せず、応対できなくても笑顔と魚を残して黙って帰ることもあった。

 「本当、お人よしで、息子みたいに感じていたんだが…。事故のニュースを見たとき震えが止まらなかった」

 憔悴(しょうすい)しきった石崎さんだが、イージス艦の話に思わず、語気を強めた。「小さい船が大きい船とぶつかって勝てるわけない。でも事故が起きたら大きいものが真っ先に小さいものを助けるのが当たり前じゃないか。なぜ乗員が300人もいてすぐに助けてくれなかったのか。それが腹が立ってしようがない」

 石崎さんはぐっと拳を握りしめ、つぶやいた。「ただ、ただ、生きていてほしい」


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