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clear.gif (820 バイト) 「密着、船上生活」では、知られざる船上生活の様子や乗船勤務で経験した珍しいシーンを紹介します。また船員の国際的身分や、世界の船での苦労ばなしを見てみましょう。
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Ani_037.gif (1008 バイト) 海にポイ!。知られざるゴミのゆくえ−人が生活すると必ず出てしまうのがゴミ。もちろん船でも発生します。その処理方法の意外な実態とは!?。

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プラスティック以外は海上投棄します...意外かも知れませんが空き缶やガラス、残飯や紙くずなど、自然界の力で分解可能なゴミは、陸岸からある一定の距離を離すことを条件に海上投棄が許可されています。小さく砕かれたものであれば陸岸から僅か3マイル(5.5キロ)の海域で海に「ポイっ!」と捨てることができます。但し自然分解が困難なプラスティックと、生態系への影響があると言われる油については海上投棄が厳しく禁じられており、船内の小型焼却炉で処理します。しかし広い海では誰も見ていないのも事実。モラルの低い船からの不法投棄が後を絶たず、各国でプラスティック容器類の漂着が問題視されています。

糞尿はどうするのでしょうか?...通常、船内の糞尿は船底の配管をつたって未処理のまま海中へ直接排出されます。しかし港内では衛生上、「汚水処理装置」と呼ばれる清浄装置を経由して排出することが多くの国で義務づけられています。但し取り締まりの厳しくない国では有名無実化しているのも事実で、発展途上国の船を中心に港内で未処理の糞尿を垂れ流す不心得モノがのさばります。もし海水浴場の間近でアヤシイ国籍のオンボロ船を見かけたら、浮遊機雷、いや「浮遊排泄物」に十分注意しましょう!。

違反すると...船上における廃棄物の処理は国際条約によって厳しく定められています。またローカルルールが厳しい国では頻繁に臨船検査が行われており、不正が発見されると莫大な罰金だけではなく、出港停止処分が下されることもあります。特に油の不法排出には各国とも目を光らせており、近年はヘリコプターや航空機を使った赤外線探知装置などによる空からの監視も普及しています。


ダイオキシンは大丈夫?
船には小型の焼却炉があります。しかし焼却温度が800度前後と低い機種が主流のため、プラスティックごみを焼却するとあの有名な猛毒「ダイオキシン」が発生する危険性を秘めています。因みに日本やドイツの都市で標準化されつつある、プラスティック類のクリーン処理にも対応した新型ごみ焼却炉は1500度。紙製品にもビニルコーティングが施されるなど高分子化合物が多用される現在、プラスティックの焼却は避けられない時代です。皆さんも船に乗船したら健康のため、煙突には近づかないようにしましょう。

Ani_037.gif (1008 バイト) 密航者発見。亡命者の現状と悲劇。−貨物船にこっそり隠れて海外へ高飛びするのが密航者。密航者は犯罪者よりむしろ発展途上国からの政治難民や経済難民が多くを占めます。不運にも船内で発見した2名の密航者を突撃取材してみました。

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密航者発見!...南アフリカのダーバン港でうかつにも2名の密航者を乗せてしまいました。発見したのはフィリピン人当直操舵手。ダーバン出帆後、同じく南アフリカのリチャードベイ港でアンカーを下ろした後のことです。闇のデッキでうごめく物体を乗組員が発見、その後おそるおそる近づくと右写真の密航者が現れました。どうやら甲板上の用具倉庫にある麻袋の中に隠れていたようです。

私の接した密航者たち...発見した密航者たちはどうやらアジア方面への密航を企てていたようですが、この船の行き先が同じ南アフリカだったことにガッカリしていました。身分証明書を所持していないため国籍は不明ですが、ひとりは自称パレスチナ政治難民でイラクから来たとのこと、もう一人は自称パキスタン人でした。2人とも、もともと面識はなかったようですが南アフリカ放浪中、同じ密航者仲間?として知り合ったようです。持ち物は僅かな米ドルと食糧、ラジオそして水筒2個でしたが自称パレスチナ人のポケットから家族の写真も見つかり、何だか切ない気持ちさえしました。幼い子ども達を残して出稼ぎ亡命してきたのでしょうか、それともパレスチナ自治区の空爆によって既に家族が失われてしまったのでしょうか。しかしここで気を許してはダメ、過去に船内に放火して船内動乱中に金目のモノを奪って脱走する者もいると聞きます。とりあえず危険物を所持していないことを確認後、空き部屋に隔離することにしました。しかし何日も風呂に入ってないためスゴイ悪臭、もしあのまま隠れていても異臭で発見できそうでした。

簡単には下ろせない密航者...今回のケースのように密航者は身分証明書を所持していないことが多いため、ほとんどの国の入国管理局は受け入れに難色を示します。しかし受け入れを拒否する反面、どの国の政府も人道的配慮から船側(または船会社)は密航者を手厚く扱うよう要望する始末で、いやはや世界の船会社は困惑しています。今回は幸運にもリチャードベイ港で下船させることができましたが、こうしたケースはラッキーでどの国も身分が定かでない人物の入国を拒否するのが一般的です。

密航者も船を選びます...発見しても簡単には下ろせない面倒な密航者。一旦乗り込まれると数ヶ月もの間、船での保護を強いられることもあります。そこで恐ろしいのがタチの悪いギリシャ船や中国船で、取扱いに困った密航者を海へ突き落とすこともあるそうです。命があっての密入国。密航者達も三流船社のアヤシイ船へは忍び込まないそうです。

密航者はココに隠れる!...埠頭への侵入が困難な私有地に着桟することが多い大型タンカーやLNG船は、密航者が忍び込む可能性が低いと言えます。そこで密航者に最も好まれるのが、身を隠しやすい雑貨船や自動車専用船です。船倉内の荷物の隙間や換気ダクトの内部、クルマの車内やドラム缶の中など身を潜める場所が無数にあるからです。侵入方法は乗組員のスキをみて堂々と船の玄関口「舷梯」から入るほか、係船索やアンカーチェーンをネズミのようにツタってきます。最近は予め改造したコンテナに食料と共に潜んでおき、荷物としてコンテナ船へ積み込んでもらって密航するという手口も見られ、発展途上国ではそれを斡旋、仲介する業者もあるそうです。

密航者はこうして予防...出港直後、船長を除く全乗組員で密航者探しを目的とした船内一斉捜索を行います。また入港前に密航者が潜めそうな箇所を施錠して予防しています。

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手には家族の写真が。
この密航者の所持品は僅かなドルとお菓子、水筒、そして小型ラジオです。「こんな軽装で長旅へ出るとは!」とご察しのとおり、出港後、たいていの密航者は船の乗組員に泣きつきます。自称パレスチナ人のポケットから見つかった几帳面にサランラップで包まれた子どもたちの写真は、密航者の悲劇を物語っているかのようでした。

Ani_037.gif (1008 バイト) 紙切れ1枚で入国、これが船員の身分−船員が寄港地で入国、観光することを「上陸する」といいます。上陸中の船員の身分はこうなっています。

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船員の身分...船員は船の免許「海技免状」に加えて船員手帳(世界的にはシーメンズブック(Seamen's Book)と呼んでいます)を持って乗船します。乗船中の身分証明は、パスポートではなく船員手帳で行い、諸外国寄港の際にはこの船員手帳を元に各国の入国管理局が「上陸許可証」を発行され、晴れて上陸することができます。上陸中は原則的にパスポートを所持する必要ななく、この上陸許可証が身分証明書となります。

でも必要なパスポート...日本人が日本の港で乗下船する場合、乗船勤務中は基本的にパスポートは不要で、船員手帳だけを所持していれば問題ありません。しかし出身国以外の国で乗下船する場合(例えばフィリピン人船員が日本で乗船する場合)は、一旦入国して乗船する形になるためパスポートが必要です。もちろん、日本人が外国で乗下船する場合も同じくパスポートが必要になります(国によってはビザも必要です)。現在、寄港地はその取扱い荷物によって頻繁に変更されることが多く、下船地が定かでないため船員の殆どがパスポートを所持しています。

船員の上陸...上陸許可証には多少の制限があり、例えば日本では原則的に入港地以外の街(例えば神戸港に入港した場合、神戸市以外の町)へ行くことが出来ません。また上陸許可証は顔写真もない紙切れのため、上陸中の行動が制限されることもあるため(例えば両替や酒類の購入)、トラブル未然防止のために顔写真付きの身分証明書(国際無線免許や写真付クレジットカードなど)を携帯した方が無難なのです。ところで上陸許可証は全ての乗組員に発行されるとは限らず、例えば入国監査の厳しいアメリカでは犯罪者と同姓同名というだけで無条件に上陸が禁止される場合もあり、ペルシャ湾岸諸国のいくつかの国では政治的な理由からすべての船員の上陸を禁止しています。また自動車会社や鉄鋼会社などの私設埠頭はどこの国でも構内規則が厳しく、敷地内での歩行を禁じていることが殆どのために上陸の際はタクシーを使用しなければなりません。タクシー代もバカにならないため、上陸許可証を所持していながら事実上上陸を断念しなければならないこともあります。

脱船者...前述したとおり、船員は入国監査ののちに発給される上陸許可証さえあればパスポートがなくても上陸(入国)できます。そのため密入国目的で船員となり、目的地で脱船する人が後を絶ちません。船員が職務を放棄して脱船、密入国することを「ジャンプシップ」といいます。脱船目的で乗船した外国人船員は予め現地の友人に連絡を取っており、上陸と共に身を眩ませます。平成13年(2001年)に発生した米国同時多発テロの影響で最近は日本やアメリカ、韓国などの入国監査が一層厳しくなっています。そのため、出身国によっては上陸が認められないこともあります(一時期、中国人乗組員の脱船者が多発したことから中国人の上陸が無条件に禁止された港もあります)。

日本国内の船員たまり場...名古屋の築地口は港から近いこともあり、外国人船員の憩いの場となっているようで、ガーデンプレイス周辺には海外用電気製品を扱った電器店やフィリピン人バーなどがあります。神戸の元町ガード下もフィリピン人船員が中古品目当てに多く集まり、また横浜の本牧埠頭付近も諸外国の船員が集うことからシーメンズクラブもあります。意外ですが外国人船員をよく目にする場所として、長崎や坂出、尾道などの大手造船所周辺があります。そのほかロシア船が多く寄港する函館や新潟にはロシア人向けの中古車屋 (写真)や免税ショップが多くあり、市内でロシア語を目にすることもあります。しかし物価の高いわが国でショッピングする船員は少数派、殆どが公衆電話から家族へ国際電話をかけているようです。

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領収書にしか見えない上陸許可証。
これが上陸許可証です(写真はインドネシア政府のもの)。船員はこの紙切れ1枚でパスポートがなくても入国することができます。悪用防止のため出港前に厳重に回収されます。

Ani_037.gif (1008 バイト) これだから恐ろしい、世界のオンボロ船−高度に管理された航空機の世界と違い、世界の海には大小多数そして新旧さまざまな船が活動しています。IMO(国際海事機構)とよばれる国連の専門機関によって、ある一定の国際安全基準が設けられていますが、ルール違反の船は後を絶ちません。そんな世界の「びっくりオンボロ船」を紹介します。

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船の<ピンからキリ>はこんなに広い...空の世界は猫一匹さえ入れないほど完璧に管理された空港を拠点に、高い安全水準で製造された航空機が、厳しい整備基準と管制によって運航されています。対する海では、小型ヨットから漁船、高速ジェットフォイル、超大型タンカーに至るまで、実に雑種雑多な船が混在しています。時には丸太をくり抜いた手作り帆掛け舟の脇を、乗客を満載した大型客船がそろりと通過するシーンもあります。このような混沌とした海上輸送の社会では、国際的な取り決めが行き届いていないのが現状です。整備不良の劣悪船が狭い水路をヨボヨボと走り、国際ルールをまったく知らない貨物船が航路を悠々と逆行するなど、世界の港はまるで雑然とした商店街のようなムードです。

数十年前の古〜い海図でアクアラインをまたぎます...海の地図<海図>は港湾開発や新たな測量にあわせて随時改訂されており、安全運航上、最新版を所持することが義務づけられています。しかし発展途上国の劣悪船ではそんなことはお構いなし、廃船から払い下げたと思われる古い海図を使用しているのがザラです。時には関西新空港(1994年完成)ばかりか、ポートアイランド(1980年完成)さえ記入されていないような黄ばんだ古〜い海図がしっかり現役で使用されていたり、全国図(日本全土が1枚に収められたもの)1枚で地形の変化に富んだ瀬戸内海を縦断する船もいる始末です。東京湾横断道路「アクアライン」の橋脚に衝突する針路で航走し、目前であわてて避ける船もいるとか。

子供用コンパスで航海?...ロシアや東南アジアの老朽船では舵やコンパスの故障、エンジントラブルが頻発します。船の針路を示すジャイロコンパスが故障し、携帯用コンパスや腕時計のコンパスで航海する勇敢な(?)船もいます。コンパスが壊れる程度ならマシなほう、エンジンが後進にかかったまま止まらなくなる船もいます。

全身真っ茶色の船...茶色の船が通過するのでよく見ると、船名が見えないほど全身サビに覆われている船に遭遇することもあります。船乗り経験の長い外国人船員によると、甲板に穴が空き、天井の穴から自然光が差し込む「天窓付き」キャビンが自慢の船もあるようです。もしかするとペンキを節約して環境に配慮した「スーパー・エコ・シップ(次世代環境対策船)」を目指しているのかもしれません(??)。

タチの悪い漁船も...大型船の乗組員にとって、航海中よく「ヒヤッ」とさせられるのが漁船です。漁船は操業中、ほかの船を避ける義務が軽減されるため、サカナを求めて縦横無尽に走り回ります。突然、針路を変えたり猛スピードで走りはじめることもあり、操縦性能の鈍重な大型貨物船にとって手強い相手です。特に日本や韓国、中国周辺は漁船の密集地帯として世界的に有名で、日本近海に近づくとトラウマ状態に陥る外国人船員もいるとのことです。ところで日本の漁船は、出来るだけ大きな船の船首をできるだけ近い距離で横切れば「大漁」になる迷信があるそうで、運動性能が低い超大型タンカーにとってハラハラどきどきモノです。

不審船ばかりが取り沙汰されますが...多発する北朝鮮からの不審船事件のため、特殊工作船による日本海からの密入国がよく取り沙汰されますが、意外に盲点なのが大規模港へ堂々と入港する小型貨物船です。小型船は水先案内人(パイロット)の乗船が免除されているうえ、大きな港は入出港船が多いことから完全に犯罪性の有無を確認できていないのが実際です。神戸や横浜を行き交う何の変哲もない小型船には、ひそかに超高性能エンジンが船底に4台あったり、対空ミサイルが隠されていたりして!?。

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Ani_037.gif (1008 バイト) タンク内部検査は閉所恐怖症注意!−船には通常人が近づかない場所がたくさんあります。肝試し気分でうかつに入ると、酸素欠乏による死の危険が待っています。それでは乗組員による、閉鎖区域の定期点検に同伴してみることにしましょう。

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閉鎖区域の定期点検...広い船内には、通常人が入ることのない閉鎖区域がたくさんあります。バラストタンク(船の安定を保つ海水タンク)や二重底、構造上の空きスペース、そして計装機器が置かれた場所です。普段人目に付かないこれらの場所ですが、サビや亀裂などの異常を早期に発見するため、定期的にチェックしています。

大変なタンク検査...照明のないタンク内部は懐中電灯の光のみを頼りに巡回しなければなりません。蒸し暑い空気、滑りやすい床、突出した鉄骨が行き手を阻みます。油分が残る油タンクの内部検査はさらに過酷で、強烈な刺激臭によって涙が止まらなくなることもあり、また酒酔い気分(シンナー中毒!?)になる乗組員もいるそうです。

恐ろしい酸素欠乏...普段立ち入らない閉鎖区域は換気が不十分のため、酸欠の恐れがあります。また船は鉄製のため、サビの進行による酸素の吸収により酸欠が起こりやすい環境でもあります。大気中の酸素濃度は21パーセントですが、18パーセント以下になるとヒトの活動に支障を来します。16〜12%で頭痛、耳鳴り、吐き気、呼吸数増加などが起こり、14〜10%で呼吸困難や判断力低下を呈し、10%以下で意識不明、痙攣けいれんに至り、6〜8%で8分以内に死亡します。酸欠事故の恐ろしさは極度な酸欠状態になると極めて短時間に卒倒してしまう点と、事故発生時に救助者が十分な対策を行わずに現場へ急行してしまい、自身も卒倒してしまうという二次災害が多いことです。恐ろしい酸欠事故を未然に防止するため事前に十分換気し、酸素濃度計を携行しながら点検を行いますが、残念ながら国内だけでも毎年数人、酸欠事故によって命を落としています。

ボロい船は足元注意...タンク内の移動にはハシゴを使うこともありますが、サビの進行した古い船ではハシゴの一部が突然「ボキッ」と脱落するトラップが仕掛けられています。しかし人間の動物的本能は大したもので予期せぬハシゴ破損による転落事故はあまり発生しておらず、むしろ足元不注意による転落事故の方が多いようです。

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閉鎖区域は中腰で。
暗闇の閉鎖区域は懐中電灯を頼りに恐る恐る進みます。そこは後ろ向きでなければ降りられない急なハシゴ、股がさけそうな鋭い敷居、ちょっと触れると一週間は汚れが落ちない汚いカベなど、無数のアトラクションが仕掛けられたアスレチックワールドです。でもそっと耳をすますと波しぶきの音が聞こえてくるのがオツかな。

こんなものにも注意...船底には無数の配管や電線が張り巡らされています。そこでちょっと偉容を放っているのが船首のバウスラスタへ給電する3300ボルトの高圧電線です。まるで高圧電線で囲まれた捕虜収容所といいたいところですが、バウスラスタは入出港時に使われるため、航海中の船底点検では心配無用でした。

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ひたすら働くマシンたち。
人目に付かない船の底部にはポンプやバルブ作動装置など、黙々と働き続けるマシン達がいます。これぞ縁の下の力持ちと言ったところでしょうか。

Ani_037.gif (1008 バイト) 航海中は前進あるのみ。−大型船はエンジンの特性上、一旦出港すると目的地に着くまでスピードは一定にされます。そのため、大洋航海中の船は通常、舵のみで他船を避けることになります。

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意外?、船のエンジンはデリケート...大型船のエンジンはそのデカイ図体に似合わずデリケートです。その大きさが災いして熱伝導に時間がかかることから、熱応力によるひずみが生じやすいためです。そのため、定格出力50パーセント以上の出力調整は時間をかけてゆっくり行います。

巡航速力までこんなにかかります...急激な負荷変動によるエンジン不調を防ぐため、非常に時間をかけて最大巡航速力まで増速するエンジン保護装置が備わっています。大型タンカーが多く採用している最大出力が毎分80回転で2万馬力のエンジンを例に取ると、出力50パーセント(毎分60回転)から増速する場合、2分間にたった1回転しか回転が上がらないプログラムが組み込まれています。すなわち出港してすぐに加速を開始しても、最大速力になるまで50分以上かかるのです。

2つある最大速力...船の多い地域や東京湾などの狭い海域を航海する場合、エンジンの調整に時間がかかっていては危険です。そのため、大型船のエンジンにはある一定の出力以下(一般的に最大出力の50パーセント以下)であれば瞬時に出力を調整できるゾーンが設けられています。これを「港内操船モード(Maneuvering Mode)」といい、このモードでの最大速力は特に「スタンバイ・フル(Standby Full Ahead)」または「マヌーバリング・フル(Maneuvering Full Ahead)」と呼んでいます。そして船がエンジンの調整を必要としない大洋へ出ると、いよいよその船の最大巡航速力に上げられますが、この最大速力のことを「ナビゲーション・フル(Navigation Full Ahead)」と呼んでスタンバイ・フルと区別しています。

他船を避けるには...一旦ナビゲーション・フルに設定されるとエンジン保護のため、エンジンが自由に調整できる港内操船モードに減速するまで時間がかかります。そのため、大洋航海中に他船と衝突するおそれがある場合は通常、針路を変えることのみで船を避けることになります。このように船は港を出ると特別な事情がない限り、次の港に着く直前まで最大巡航速力「ナビゲーション・フル」で航走します。

緊急時にはエンジン損傷を覚悟!...針路変更だけで他船を避けられない場合、エンジンを停止または逆転させて危険を回避しなければなりません。他船が目前に迫った危険な状況下で、エンジン保護のために悠長に時間をかけて減速していては「衝突→沈没→エンジンだけではなく船体全損」の図式が成立することはご察しのとおりです。そのため、エンジン保護プログラムを解除して短時間でエンジンを停止(厳密には増速もできます)させることができる緊急モードが備えられています。また、緊急時にエンジンを全速後進させることを特に「クラッシュ・アスターン(Crash Astern)」といい、その名のとおりエンジン損傷を覚悟してでもプロペラを逆転させて船を停止させる、いわば船の「急ブレーキ」です。

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