「川崎病誤診で5カ月長男死亡」親が那覇市立病院提訴
発熱などの症状で那覇市立病院を受診した生後五カ月の男児が、小児科医の診療ミスにより死亡したとして、男児の両親が二十日までに、那覇市と同病院の医師三人に対し、計五千九百三十万円の損害賠償を求める訴えを那覇地裁に起こした。病院側は本紙の取材に対し、「訴状が届いてから(事実関係を争うかどうか)検討するが、今のところ誤診はなかったと判断している」と話した。
亡くなったのは那覇市に住む公務員の男性(24)と妻(30)の長男。
訴状によると、長男は二〇〇六年五月、高熱が続いたことから同病院に入院。担当医は「化膿性リンパ節炎」と診断。約二カ月後も高熱が出て再入院したが病状は改善せず、七月二日に突然呼吸停止となって息を引き取った。死亡診断書にも、原因は「不明」と記録された。
初診当時、担当看護師がリンパ節のはれ以外にも、目の充血や唇の紅潮、発疹などを確認した記録がある。乳幼児を中心に、心臓に冠動脈瘤ができて重症となる恐れがある、急性熱性発疹性疾患「川崎病」の典型的な症状を示していたが、同病を想定しての治療はなされなかったと、両親は主張している。
国の「川崎病診断の手引き」によると、(1)五日以上続く発熱(2)手足のむくみ、手のひらや足裏、指先の赤い斑点(3)発疹(4)両眼球の結膜の充血(5)唇や舌の紅潮(6)急性期における非化膿性のリンパ節のはれ―のうち、五つ以上の症状を伴えば川崎病とする診断基準が確立している。
両親は、〇六年五月に入院した段階で、長男には(1)(3)(4)(5)(6)の症状が出ていたが、担当医が誤診し、必要な治療を受けられなかったと主張している。父親は「看護師も観察記録で川崎病の疑いを指摘していた。今の医療で手に負えない病気じゃない。初診時の見落としが、息子が死ぬ引き金になった」と強調。「私たちは事実を知りたい」と訴えた。
[ことば]
川崎病 1967年に川崎富作医学博士により報告された、主に4歳以下の乳幼児に発症する原因不明の病気。心臓に酸素と栄養を送る冠動脈が炎症で膨れてこぶになり、心筋梗塞の原因となる。治療を受けた場合、致死率は0・1%前後。