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2008-02-18

[][]まあそりゃワーキングプアと一緒にされたくはないと思うけどさ

弁護士だから全国紙新聞社の社員くらいは高給取りであって当たり前とか、そういう感覚ってのはそんなに高給を取っていない一般庶民から見たら嫉みの対象だよね。数を増やすことについての問題点はもうちょっと別のところにあるんであって、法テラスの給料にしたって、毎日のように会社に泊まりこんで残業代は付くわけなく、9年間で昇給したって額面20万そこそこっていう人だって普通にいるわけで、「安定してていいじゃん」と思われてしまいそうです。

僕はそのへんのお金の問題は今まで論点にしていないと思ってたし、急に法曹関係者を増やすことで、満足な研修も出来ず、全体のレベルが落ちるとか、そういう問題はあるんだろうと思っていたけど、いざお金の問題になってみたらかなりの批判の声が弁護士から出てくる。まあ、東京新聞だか中日新聞だかの社説は酷くて、あたかも「安定した生活を望んではいけない」みたいになっているから、そりゃ反発もされるけど、そのときに声をそろえたように「論説委員レベルの給料なんて貰っている弁護士の方が少ない」みたいな、比較論になってしまうのか。大新聞の論説委員なんて多分かなりの高給取りで、そんなのと比べたら「安定した生活のみならず、高給取りであることを希望しているから弁護士が多くなることを望まない」と思っている、と勘違いされてしまいます。勘違いだよね?

なんかこう、こういう待遇の比較になると、医者と弁護士と公務員はいつも引き合いに出されてまあそれはそれでどうなのかな、と思うわけですが、「安定した生活」の最低ラインより遥か上でそういった議論をされてしまうと、どうもいつ会社が潰れて路頭に迷うかわからない一般会社員としては、資格商売の強固さに対して文句のひとことも言ってあげたくなってしまうわけです。まあ、僕はそれほどでもないけど、最低ラインを割ってとてもじゃないけど安定した生活じゃない人にとって、法テラスの給料が低いなんて話はもう雲の上の話かと思ってしまうことでしょう。

司法改革の意義とか方向性が正しいかどうかはそっち系の人じゃないとわからないからなんとも言えないけど、こと給料の点についてはいくら反発しても(今みたいなロジックでは)庶民の理解は得られないと思います。

OguraHideoOguraHideo 2008/02/18 12:44 論説委員ほどもらえなくても仕方がないですが、30歳時の所得でいえば、私のゼミ生が普通に就職する企業にも劣りますし、可処分所得でいえば(法科大学院時の奨学金の返済や、弁護士会費等の分があるので、)圧倒的に劣ります。もちろん、フルタイムで働いても手取りが10万円前後という仕事もあろうかとは思いますが、法テラスのスタッフ弁護士の処遇はそれよりはまし(30歳で上記余分な出費を除いた手取りが15万円くらい)なのだから、人が集まらないのは弁護士が規制によって守られているからだといわれてしまうと、それはいかがなものかなあと思います。
 短期的には、法科大学院を卒業してしまった人が仕方なくてスタッフ弁護士に就職するかもしれませんが、34〜5歳で何の蓄えもなしに路上に放り出されるのを見れば、学部卒業時に民間企業等に就職するという選択が可能な程度に成績等が優秀な若者は、数年の時間と数百万の費用を費やしてまで、そのようなリスクを負わなくなります。すなわち、そもそも優秀な若者が法曹を目指さなくなるのです。市場経済における職業選択なんて、そんなものです。
 最近、企業の人材採用に関与する機会があるのですが、34歳まで手取り15万円という条件を提示して「この条件で応募してこないのは、労働者が恵まれすぎているからだ」などと述べる経営者は見たことがありません。といいますか、この労働条件で使える人材が集まると期待する経営者自体がいないように思います。学生や主婦のパートでもできる単純労働ならばともかく、ある程度の専門知識ないし能力を要する職業であれば、もう少しましな処遇をします。

NOV1975NOV1975 2008/02/18 14:52 いやいや、おっしゃらんとしていることはわかりますよ。最近医者を目指す人が減ってきたのは投資に対するリターン(しかも昔と違って、高給=リターンではなく、人間らしい生活も求められていますし、昔みたいな賄賂はリスクが高すぎますし)が足りないって事でしょう。同じことが(医者の場合はリスクの方が中心ですが)弁護士の待遇にも言えるだろうというのはおっしゃるとおりの市場経済の原理からすると当然ですよね。
IT業界だって、花形だったはずが実は3K(これは別に前からそうだったんですが…)ということで目指す人が減っています。
>34歳まで手取り15万円という条件を提示して「この条件で応募してこないのは、労働者が恵まれすぎているからだ」などと述べる経営者は見たことがありません
これはそうなんですが、みんな派遣みたいに働けみたいなすごいこと言ってたお偉方もいましたね。正社員とそうでないものの格差を考えると、正社員になれているだけで恵まれている、という時代になりつつあります。
法テラスの労働条件については、多分(僕も含めて)、一般の人はどのくらいのものなのか、実感がわからないと思うのですよ。
http://www.houterasu.or.jp/housenmonka/staff_bengoshi/gyoumu/
を見る限り、裁判官、検察官(まあ、この辺は出世もあるから独立を考えなければならない弁護士とは違うと思いますが)と同等の給与や住居補助ってだけで少なくともワーキングプアにはなり得ないよなと思いますよね。事務員の給与もでるわけだし。
※ところで、弁護士ってその後独立しないとやっていけないのですか?会計事務所みたいなのはないのかなあ。
結局は、金か、みたいな話になってしまうと、まあ大新聞の社説はともかく、みんなは「普通じゃん」と思うわけです。大卒の時点でみんな金かかっているわけで、理系なんか最近院卒でようやく一人前みたいな時代において、そこの費用は全額でなく差額で出さないと(そうして来た人に対しては)説得力はないし、大卒じゃない人はかなりの確率で正社員になれていません。先生のゼミの学生なんて、圧倒的に恵まれている上から数えたほうがいい学生じゃないんでしょうか?そうでもないのかな?
ただ、今の日本は頭脳労働に対する処遇は比較的ダメな感じだと思いますね。市場原理を導入したら、同業者の中でも勝ち組、負け組みがはっきり出てくる、という意味では法テラスの基準というのは負け組み基準なのかも知れませんが、就職先があるだけマシ、という冷ややかなものが市場原理なんでしょうね。

長くなりましたが、結局いいたいのは、大新聞や優秀な学生の就職先の給料と比べてとやかく言っていたら、そもそもそこに対してすら多大な格差を感じている多くの人たちが怒るから、あまりいい訴え方じゃないよ、ということですね。
エントリの本文では、僕の給与に対する考え方というよりは、一般にどう受け止められるのかを書いたわけです。僕自身は、法テラスの給与は不当とまではいかないけど、専門知識を駆使する、資格が必要な職業を舐めてるよなあって思うわけですが、そういう感想を持ってもらえるには今の経済状況じゃあちょっと難しいんじゃないかと思った次第です。

NOV1975NOV1975 2008/02/18 14:53 「思いますよね」「思われます」って書いてあるのは大抵は、そういう世の中の受け止め方があるよね、ってつもりで書いています。

fjskfjsk 2008/02/18 15:27 話がそれるかもしれないけれども、「登録料」と「会費」の話ってどれぐらい一般の人に知られているんでしょうね?うちのツレが行政書士の資格は持ってるんですが、話を聞いてみると「行政書士は資格だけじゃ仕事はできなくって登録が必要。登録に10万、会費が月1〜2万ぐらい」と聞いて片手間とか副業でやるには固定費が高すぎる仕事なのね…と思ったのですが、どうやら弁護士の場合はもっと会費がすごい金額みたいで…。ツレは将来、司法資格を取って田舎に帰って高齢者とか女性の相談に乗るような仕事をしたいと考えてて、それは私も賛成なのですが、これってどう考えても赤字になるよなぁと。この辺日弁連と一般の弁護士との間でも考えに乖離がありそう。
そういう現実を見るとTVドラマに出るような、自転車でじーちゃんばーちゃんの相談に乗る田舎の弁護士なんて幻想ですよ、と思ってしまうんですが、ドラマしか見ない人はそう思わないでしょうねぇ。…実は幻想ではなく実現する方法があるとか?

OguraHideoOguraHideo 2008/02/18 15:41 なお、法テラスのスタッフ弁護士は、30〜34歳では、同世代の高卒男子よりも収入が低いことを自分のブログの方に書いておきました。

OguraHideoOguraHideo 2008/02/18 15:43 会によって差がありますが(大規模庁は、人が多い分、会費が少なくて済みます。)、概ね月額5〜10万円です。

NOV1975NOV1975 2008/02/18 16:00 高卒以下ってのはさすがに気持ち的に厳しいですね。平均値より中央値で比較してみたいものではありますが…
これで上手く独立してリターンを得ることができないとさすがにちょっと辛いかな。もっとも、その先にちゃんとリターンがあれば生涯賃金では〜という話になります。高卒は30〜34でもう12〜16年くらいは勤続しているので、その時点ではある程度差が付いてしまうように見えるのはしかたないと思います。あと、この平均って無職やフリーターも入っているのかな…その辺がわかってくると、だいぶ一般の人にも実感が湧くと思います。
会費の月額5〜10万はかなり多いですね。こういうのって弁護士会側が「法テラス所属は会費免除」って出来ないものなんですか?できないなら辛すぎますね。
ちょっと会費の意識とかは世間一般とかけ離れているような感じですので、どう活用されているかが見えてこないといわゆるセレブの職業的な印象を打破できません。いろんな実態を明かしてもらえると、医師みたいに同情の声が大きくなると思いますよ。

fjskfjsk 2008/02/18 16:13 法テラス所属の会費についてはこちらで言及が。
http://puni.at.webry.info/200701/article_11.html
この辺を見ると、もしかすると一般弁護士と弁護士会の間でも意見は違うのかもしれません。

NOV1975NOV1975 2008/02/18 23:34 なんかそのエントリ読むと弁護士会の会費が高いことに対する怒りが転化されているように見えますね。僕は弁護士と弁護士会はもっと一枚岩かと思ってたんだけど、全然そんなことないのね。
しかし、税金払ってるから云々的な物言いを弁護士の方もなさるのですね。

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