 鈴木は相手DFに首をしめられた(AP、クリックで拡大) |
【重慶=久保武司】何のための大会なのか−。サッカー東アジア選手権で中国に1−0で完勝した岡田ジャパンだが、中国からは90分間、ラフプレーの集中砲火を浴び、北朝鮮の主審は明らかに中国寄りの不可解な判定を連発。試合後はペットボトルが投げ込まれ、日の丸が焼き払われるという相変わらずの光景が繰り広げられた。ただでさえ日本は中国の毒入りギョーザで我慢の限界。中国や北朝鮮の低レベルに付き合わされるのは、もうこりごりだ。
GK楢崎(名古屋)は試合後、左目の下に大きな絆創膏を張った姿が痛々しかった。「相手FWは避けようともせずに、あえて顔を蹴り込んできた」という。後半9分にはMF安田(G大阪)が1対1になった相手GKのスパイクの裏を見せての飛び蹴りを食らって担架で退場。40分にはFW田代(鹿島)がバックチャージを受けながら、北朝鮮の主審は「ノーファウル」。
 田代(左)が受けた明らかなバックチャージにも笛は吹かれなかった(撮影・森本幸一、クリックで拡大) |
普段は冷静な岡田武史監督も『北の笛』に退席すれすれの猛抗議を繰り返し、「岡田さんが熱く燃えてくれたおかげで、ピッチの中は全員冷静だった」(楢崎)というほど。岡田監督も試合後は「私一人が興奮してしまった」とバツが悪そうではあったが、あれだけのひどい判定を受けながら、日本協会からは抗議や意見書も出ない。
観客も最低だった。引きあげる日本選手にめがけてペットボトルの嵐。スタンドでは日の丸が燃やされ、日本代表を乗せたバスは群衆に囲まれて公安部隊とにらみ合いになった。大会組織委の中国人スタッフが「早くバスを出さないと大変なことになる」と全員の乗車を待たずに出発させようとし、「何やってんだ。止めろ!!」とチームスタッフが制止する一幕もあった。
 日本選手団を乗せたバスは中国サポーターに道をふさがれ、公安部隊に守られながら競技場を後にした(撮影・森本幸一、クリックで拡大) |
勝ったとはいえ、ケガ人続出で罵声を浴び、何一ついいことはない。おまけにこの大会のスポンサーは、ピッチの看板をみれば一目瞭然(りょうぜん)。すべて日本企業の支援で運営されている。中国や韓国代表のスポンサーは「広告代理店が競合会社なので、一銭も出してくれない」(日本協会関係者)という。盗人に追い銭とはこのことだろう。
出場選手をみても日本は海外組はゼロで1軍半。韓国代表も「今回は2軍のメンバーしか連れてきていません」と協会幹部が明言するほどだ。優勝賞金50万ドル(約5500万円)に血眼になっているのは地元中国と、ほぼベストメンバーで招集された北朝鮮代表だけ、といっていい。
東アジア選手権は今回が3回目。「東アジアのサッカー向上」を目的に2年に1度開催されるが、これだけの審判や観客のレベルの低さを目の当たりにすれば、その大義名分も疑わしく思えてくる。Jリーグ開幕、W杯アジア3次予選も控える大事な時期に、「代表に出してけが人で返されてはたまらない」と、各クラブから岡田ジャパンへのブーイングが噴出する可能性も出てきた。
会場の雰囲気に気押されたか、右サイドで再三のピンチを招いた19歳の内田(鹿島)は、敵将ペトロビッチに22番が素晴らしかったと激賞されたDF中沢に試合後、「おまえよかったな。こんなブーイングの中でサッカーができて」と声を掛けられ、「うれしかった」と話した。
貴重ではあるが、アウエーの経験だけが収穫ではリスクが大きすぎるのではないか。この調子でいけば、8月の北京五輪でも同じ騒動が繰り広げられることになる。日本も黙っている場合ではない。
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東アジアサッカー勝敗表(20日現在)
| 【男子】 | 試 | 勝 | 分 | 敗 | 点 | 得 | 失 | 差 |
(1) | 韓 国 | 2 | 1 | 1 | 0 | 4 | 4 | 3 | +1 |
(2) | 日 本 | 2 | 1 | 1 | 0 | 4 | 2 | 1 | +1 |
(3) | 北朝鮮 | 2 | 0 | 2 | 0 | 2 | 2 | 2 | 0 |
(4) | 中 国 | 2 | 0 | 0 | 2 | 0 | 2 | 4 | −2 |
ZAKZAK 2008/02/21