nikkei BPnet :: 日経BPのビジネス情報ポータル nikkei TRENDYnet :: トレンドウォッチ ポータル NBonline(日経ビジネスオンライン) :: ビジネスリーダーの羅針盤 PConline(日経パソコン オンライン) :: 仕事に役立つパソコン総合情報 ITpro :: ITプロフェッショナルのための専門情報 Tech-On! :: 技術者を応援する総合情報サイト 日経メディカル オンライン :: 臨床医のための情報サイト KEN-Platz(ケンプラッツ) :: 建設・不動産の総合情報サイト SAFETY JAPAN :: 安全な生活・セキュリティの総合サイト 経営とIT新潮流&EnterprisePlatform :: イノベータのための深掘り情報 BPtv :: 日経BPの動画ポータルサイト 日経キャリアNET :: 質の高い転職・求人情報
ITpro SkillUP



ITpro TOP ITpro SkillUP 必修講座100 ビジネスSkillUP 技術SkillUP IT関連資格 eラーニング キャリア ヘルスケア 新技術誕生物語
 


キャリア

こんなITエンジニアはいらない!
ITproB はてなAB お気に入りへ 印刷 ヘルプ

はてなアンテナ はてなブックマーク

Vol.37 地道な努力を嫌い 1度のつまづきですぐに投げ出す

記事一覧へ

ほんのわずかな失敗にも挫折してしまう若手エンジニアが増えている。乗り越えなければならない壁から逃げていては,いつまでもプロフェッショナルにはなれない。 「石の上にも3年」――。言い古された言葉だが,その意味するところは今も色あせない。

イラスト 野村 タケオ

 K社は,顧客企業向けに業務アプリケーションを開発するベンダーである。そのK社で人事業務を担当するHさんにとって,新入社員が入社する4月は1年で最も忙しい時期だ。今年は,150人の新入社員を迎えた。Hさんは,150人分の事務手続きや研修手配作業を前に,「毎年のことながら,殺人的だな」と苦笑してから,ふと顔を曇らせた。G君のことを思い出したのである。


一流を目指して再出発

 G君がK社に入社したのは,ほぼ1年前の4月だった。実は,当時24歳だったG君にとって,K社は初めての就職先ではなかった。大学を卒業後,一度は中堅SI企業のI社に就職したが,わずか10カ月で辞めてしまったのである。「職場の上下関係が厳しいうえに,残業を強要される。しかも,毎日の仕事が単調で代わり映えしないことに耐えられなくなった」というのがG君の言い分だった。

 I社を退職後,G君は次の就職先を探した。だが,実務経験が10カ月しかないG君を受け入れる企業はなかなかなかった。そんなある日,新聞を読んでいたG君の目に,K社の募集広告が飛び込んだ。経験の浅い社会人を「第二新卒」として採用するというのだ。「これだ!」。G君はさっそく,K社に履歴書を送付。筆記と面接試験に経て,採用にこぎつけた。

 4月の入社式を済ませると,G君は新卒入社組と一緒に研修に臨んだ。まず,ビジネス・マナーや社会人としての心得を学ぶ,1カ月の一般研修を受講した。その後,いよいよ技術研修が始まった。「情報システム概論」を皮切りに「OS」や「開発言語」,「データベース」,「ネットワーク」と,ITエンジニアに必要な基礎知識を,2カ月で網羅する予定だった。研修スケジュール表を見たG君は,「今度こそ,ゼロから基礎を固めて一流のITエンジニアを目指すぞ」と,大いに意気込んだ。

 しかし,それも長くは続かなかった。講義についていけなかったからだ。「10カ月とはいえ実務経験があるから」と密かに抱いていた自信を打ち砕かれて,G君はすっかりやる気を失った。講義中も,「ああ,ITなんてつまらない」とため息ばかりつくようになった。当然のことながら,演習の成績は常に最下位だった。5月末には,出社するのも嫌になっていた。

研修から脱落

 6月上旬,G君の様子を見かねたHさんがG君をオフィスに呼び出した。「何か問題があるようだね」。G君は,「研修内容が難し過ぎるんです。僕にはついていけません」と口をとがらせた。Hさんは腕組みして少し考えてから,「理解できないところがあったら放置せず,講師に聞くなり自分で調べるなりして,その日のうちに解決することだ。最初は大変だろうが,だんだん自信を持てるようになるはずだよ」と励ました。しかし,その後もG君に変化は見られなかった。相変わらず,つまらなさそうに座っているだけだった。

 それでもなんとか7月中旬,G君は製造業向け開発本部に着任した。Hさんは「やれやれ」と胸をなでおろした。ところが,Hさんの安堵は一時的なものだった。9月初め,G君は再びHさんのところにやってきてこう言った。「現場に出て確信しました。やっぱり,僕はこの仕事に向きません」。

 Hさんは「まだ1カ月しかたっていないのに,何が分かるんだ」と言いたい気持ちをぐっとこらえて,G君の話を聞いた。G君は,「一生懸命やっているのに,先輩に怒られてばかり。どうせ僕には適性がないんです。ITにも興味を持てません」と泣き言を並べて,「もう,続ける自信がありません。辞めます」と言い放った。

 Hさんは,G君のあまりに短絡的な思考に驚きながらも,「まあ,そう結論を急ぐな。『石の上にも3年』と言うじゃないか」となだめた。さらに,「壁に突き当たる度にギブアップしていては,何も達成できないよ。くよくよ悩まずに,成長する機会と考えれば自ずと道は開ける」と諭した。だが,G君の反応は薄かった。「…そうですね」とそっけなく言って,自分のオフィスに戻って行った。

再び逃げ出す

 10月半ば,Hさんは社内の廊下でG君にばったり出くわした。Hさんは,「どうだい,仕事には慣れたかい?」と声を掛けた。すると,G君から思いがけない言葉が返ってきた。「実は僕,今月いっぱいで退職します。やっぱり,エンジニアとしての適性がなかったんです」。Hさんは肝をつぶして,「え,それでどうするんだ?」と尋ねた。G君は,にっこり笑って答えた。「O社に転職します」。

 O社と言えば,K社と同じITベンダーである。Hさんは思わず,「ITに関心が持てないから辞めるんじゃないの?」と聞き返した。「大丈夫。今度は営業部門ですから。よく考えると,僕はそもそも営業向きだったんですよ」とケロッとしていた。Hさんはあぜんとした。内心は,「営業担当者といっても,IT知識は不可欠なのに。目先のことから逃げ出すことしか頭にないのか」と思っていた。

 それから数カ月後。Hさんが小耳に挟んだところによると,G君はK社の同期会に顔を出した折,転職先のO社について不満をこぼしていたらしい。「営業なんて,頭を下げるばかりでつまらない。自分はやっぱり,腕一本で稼ぐエンジニアの方が性に合っていると思う」と話していたという。Hさんはこの話を聞いて,「G君は,全く変わっていないんだな」と,あきれ返った。それ以来,HさんはG君の消息を聞いていない。

 はっと我に返ったHさんは,苦い思い出を振り払って目の前の作業に戻った。目の前の新入社員名簿を見ながら,そこから「第2のG君」が出ないことを願った。

今回の教訓
・一人前になるには,やり遂げる闘志と強い意志が不可欠だ
・時に,失敗は最高の師である
・悩まずに問題を明確にして解決せよ

連載を一冊にまとめた書籍「こんなSEはいらない!」が日経BP社から好評発売中です。ぜひお買い求めください。


岩井 孝夫 クレストコンサルティング
1964年,中央大学商学部卒。コンピュータ・メーカーを経て89年にクレストコンサルティングを設立。現在,代表取締役社長。経営や業務とかい離しない情報システムを構築するためのコンサルティングを担当。takao.iwai@crest-con.co.jp

     [記事一覧へ]   


 [2008/02/21]



出典:日経ITプロフェッショナル 2005年6月号 164ページより
(記事は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)


ITproB 会員登録
コメントを書く お気に入りへ
コメントを読む 印刷
はてなAB ヘルプ
はてなアンテナ はてなブックマーク


ページトップ

ITproからのお知らせ








キャリア・デザイン 関連ブログ!

イキイキ★キャリア塾

さばいばる日記

おいしいキャリアの作り方


SkillUPおすすめ講座


●
こんなITエンジニアはいらない!
Vol.37 地道な努力を嫌い 1度のつまづきですぐに投げ出す

●
判例で理解するIT関連法律
第15回 下請法 外部委託における元請けの義務を知る

●
奥井規晶の悩むなら聞け!
システム運用はITのスキルが上がらず不安。このまま続けていくべきでしょうか?

●
先達の業界に学ぶプロジェクトマネジメント
第4回 IT業界は「ユーザー」と「オーナー」の区別ができていない

●
元気が出る!ツボ押しレッスン
第4回 首のコリを取る

●
ITエンジニアのココロとカラダの相談室
第12回 異動で“5月病”にかかったらまず悩みを打ち明ける

●
3万人調査で分かったITエンジニアの実態
第4回 スキルレベル編---30代前半と40代前半がスキルレベルの転換期

●
プロジェクトマネジメントの理論と実践
第12回 レポーティング−−プロジェクトの状況を客観的データで示し的確な報告を行う

●
ITエンジニアに襲いかかる「こころの病」への傾向と対策
第3回 こころの病の発見はセルフケアが基本

●
開米のドキュメント図解術駆け込み寺
第4回 【図解術】違うものは,違うとわかるように表現しよう

ITエンジニア必修講座100


●
金融業界の業務とシステムを知る
Part15 銀行編(1)銀行の基本的な役割と情報システムの発展経緯

●
製造業の業務とシステムを学ぶ
Part4 自動車メーカー編(1)――CTO販売が特徴,新車開発プロセスをPLM...

ビジネスSkillUP講座


●
判例で理解するIT関連法律
第15回 下請法 外部委託における元請けの義務を知る

●
芦屋広太一つ上のヒューマンマネジメント
5分で人を育てる技術 (44)“「○○を考えて説明して」と言われてしまった人”に...

技術SkillUP講座


●
こちらセキュリティ相談室
第19回 自分の個人情報を守る(前編)

●
Java技術最前線
「Java SE 6完全攻略」第62回 Javaでマルチリンガル - スクリプト...

ヘルスケア


●
元気が出る!ツボ押しレッスン
第4回 首のコリを取る

●
ITエンジニアのココロとカラダの相談室
第12回 異動で“5月病”にかかったらまず悩みを打ち明ける

資格試験対策講座


●
「失敗」から学ぶ合格の秘訣 IT資格不合格体験記
第13回 CIA(公認内部監査人)

●
「失敗」から学ぶ合格の秘訣 IT資格不合格体験記
第12回 不合格には理由がある---情報処理技術者試験全区分合格までの道

一歩上を目指す!キャリアUP


●
こんなITエンジニアはいらない!
Vol.37 地道な努力を嫌い 1度のつまづきですぐに投げ出す

●
奥井規晶の悩むなら聞け!
システム運用はITのスキルが上がらず不安。このまま続けていくべきでしょうか?




辞書の種類を選択


ITpro ITのニュース・時事解説 ITpro Data サービス・製品総覧 ITpro Watcher 識者が語るIT 会員限定サービス


ITproについて会員登録・メールマガジン購読ITproプレミアム(有料サービス)MyITproについてITpro Researchについて
ITproへのお問い合わせ・ご意見日経BP書店日経BPケータイメニュー広告について
著作権リンクについて|個人情報保護方針/ネットにおける情報収集/個人情報の共同利用についてサイトマップ
プライバシーマーク

日経BP社Copyright (C) 1995-2008 Nikkei Business Publications, Inc. All rights reserved.
このページに掲載されている記事・写真・図表などの無断転載を禁じます。著作権は日経BP社,またはその情報提供者に帰属します。
掲載している情報は,記事執筆時点のものです。