2008年02月21日 更新

飛び蹴り、首絞め、イエロー6枚…岡田監督が怒りの猛抗議

ベンチから選手に指示を出す岡田監督(撮影・森本幸一)

ベンチから選手に指示を出す岡田監督(撮影・森本幸一)

相手GKと接触して、右わき腹と腰を痛めた安田理(撮影・森本幸一)

相手GKと接触して、右わき腹と腰を痛めた安田理(撮影・森本幸一)

安田理は担架でピッチを後にした(共同)

安田理は担架でピッチを後にした(共同)

 東アジア選手権・男子(20日、中国・重慶)完全なアウェー状態での中国戦勝利にも、岡田武史監督(51)は不機嫌だった。不可解なジャッジ、相手の執拗(しつよう)なラフプレー。カッカした指揮官とは対照的に選手は落ち着いていた。ハートは熱く、頭は冷静に−。岡田ジャパンの成長ぶりに、指揮官はW杯予選突破の手応えを得た。

(ペン・志田健、峯岸弘行、川越一)

 「試合前からタフになると思っていたが、選手は冷静に戦ってくれた。けが人がまた出たというのは、レフェリングだけの問題じゃないが残念」。会見場では1度も笑顔を見せず無表情だった指揮官。不可解な判定、中国のラフプレーにご立腹だった。

 君が代演奏でブーイングも出ず、不気味な平穏を保った試合。負けた瞬間にはペットボトルが投げ入れられ、発煙筒もたかれたが、試合中は予想された反日ムードはほとんどない。

 問題があったのはピッチだ。中国側に足を投げ出すタックルなどのプレーが続出。相手の警告は4枚に及んだ。後半11分にはMF安田が相手GKに右脇腹と腰を蹴られて病院送り。左足首をひねって交代したDF駒野を含め軽傷の見込みだが、離脱者が続出する中、怒りは当然だった。北朝鮮人主審の判定も疑問符が付いた。

 中国のラフプレーに付き合わず落ち着いてプレーした選手たちに、岡田監督は「選手たちに冷静にと言ったが、選手は冷静だった。私が1人興奮していた」と称賛の言葉を贈った。

 レフェリーへの抗議など、試合中も落ち着きなく走り回った指揮官。北朝鮮戦後には「気持ちが入ってない」とカツを入れた。戦う監督の“熱さ”がチームに伝わり、相手とは正反対のフェアなプレーで爆発した。

 「粘り強く戦って結果を残してくれたので、これで最終戦、(23日に)韓国とチャンピオンシップを目指して戦える。全力を尽くしたい」。アウェーでの3・26W杯予選・バーレーン戦前に、敵地戦克服の糸口はつかんだ。まずは東アジアの盟主の座をつかみ、その勢いで南アフリカへと続く階段を一気に駆け上がる。

★安田理は右わき腹と腰痛め

 北朝鮮戦での活躍で左MFで起用されたDF安田理(G大阪)は、後半立ち上がりに相手GKと接触し、苦しそうな表情を浮かべて途中退場した。縦パスで抜けだし、ゴール前で絶好機を迎えたが、GKの激しい当たりに転倒。右わき腹と腰を痛めたため、大事を取って病院で検査を受けることになった。

試合後、日本選手の乗ったバスの行く手を塞ぐ中国人サポーター(撮影・森本幸一)

試合後、日本選手の乗ったバスの行く手を塞ぐ中国人サポーター(撮影・森本幸一)

試合終了後、日の丸の小旗を焼く中国サポーター(撮影・川越一)

試合終了後、日の丸の小旗を焼く中国サポーター(撮影・川越一)

★また日の丸焼かれた!反日感情根強く

 この日の日中戦には17日の開幕戦の約2倍となる3000人の警備員が動員されたが、試合終了後に中国ファンが日の丸の旗を焼くなど、反日感情の根強さをうかがわせた。

 4年前のアジア杯の反省から、日本のサポーターはゴール裏の一角に“隔離”。試合前から「罵詈(ばり)雑言を吐かないように」とのアナウンスが流れ、国歌演奏中のブーイングも一瞬で収束した。

 しかし0−1で試合終盤を迎えると、徐々にヒートアップ。中国ファンの一部がペットボトルを投げ込み、たどたどしい日本語で日本のサポーターに向けて「バカヤロー」と叫び始めた。さらには発煙筒に火をつけ、警備員が駆けつけて羽交い締めにする一幕も。試合終了後にも、日の丸の小旗にライターで火をつけるファンがいた。この状況に、不測の事態に備えて派遣されていた駐重慶日本総領事館の館員は、日本のサポーターを最寄りのモノレール駅まで送り届けたほどだ。


■騒乱の04年アジア杯VTR

 日本のA代表が中国で試合を行うのは04年7−8月のアジア杯以来。ジーコ監督に率いられた日本は、その1次リーグ3試合と準々決勝を重慶で戦った。試合前には君が代斉唱中に中国人サポーターが大ブーイング。反日サポーターは日本代表の帰りのバスを取り囲む行為まで。反日行動は準決勝の済南まで飛び火。北京での地元・中国との決勝前には、小泉首相が「友好的にやってほしい」と異例のコメントを出し、中国政府の国家委員が介入して両チーム間でフェアプレー会議を開催させたほど。決勝は日本が3−1で勝ち、2大会連続3度目の優勝を飾った。