2008年02月18日 週刊ダイヤモンド編集部
急増する都認定保育所と増えない幼保園、保育民営化の実態は?
大手企業の開設続く事業所内保育所
もう1つの新しい動きが、事業所内保育所である。
「2006年、社内へのアンケート調査で企業内保育所開設への意識を聞いたとき、コメント欄に『もし保育施設が社内にできるのなら、会社の近くに引っ越します』というメッセージを読んで、驚いた」
こう振り返るのは、今年の1月に東京・天王洲のオフィスに事業所内保育所「シティ・キッズガーデン」を開設した、シティグループ・サービス・ジャパンの宮原文彦バイス・プレジデント。アンケートでは、社内保育施設を使う予定がない社員たちからも賛成の声が多かった。以後、チャイルドケアセンタープロジェクトを発足させ、1年以上かけて計画を進めた。運営委託先は、複数社の候補のなかから、「かつてベビーシッターを依頼して評判がよかったことと、日英2ヵ国語のバイリンガル保育に対応できるという条件で、ポピンズに委託した」。
事業所内保育所への自治体の支援策も活発化している。東京都は昨年から3ヵ年で、100施設を対象に事業所内保育施設支援事業を開始。都の基準を満たす施設には経費の一部を補助するという。その承認第1号が、昨年11月に開設したサマンサタバサジャパンリミテッド。続いて同年12月にはリクルートおよびシティグループ・サービス・ジャパンが承認された。事業所内保育所への支援は、大阪府や島根県にも広がっている。
一方、最近増えつつあるのがマンション内保育所だ。三井不動産や住友不動産なども、今後開発する高層マンションには地域へも開放した保育所を設置するという。さらに東京都は財政支援として、300戸以上の大型マンションが保育所を設ける場合には、改修費の半分(上限2000万円)を補助すると発表した。
小学館プロダクションでは、2011年に認定こども園の開設を申請予定だが、その物件も注目の的だ。中央区勝どきに建設される大型賃貸マンションで、全535世帯のうち100世帯分は、子育て世帯支援として家賃を安めに設定するという。成功すれば、子育て世帯への支援策としての新しいモデルケースとなるだろう。
保育事業が老人介護と似て非なる点は、個々の事情に即したケアよりは、月齢どおりに成長していく子どもを見守るという点だ。それには、企業モラルはもとより、基本的な育児知識と段階別の保育スキルが必要で、逆にその原則さえはずさなければ、大きな失敗はない事業だともいわれる。産業化への可能性は、あとは企業の育児理念とモラルにかかっている。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 町田久美子)
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