国保負担能力で医療格差

 国民健康保険(国保)料の滞納によって国保証を取り上げられ「資格証」を交付された被保険者の2006年度の受診率が、一般の被保険者と比べて「単純平均」で51分の1に止まっていることが2月20日までに明らかになった。年所得200万円世帯(4人家族)の年間保険料が収入の2割以上の約43万円に上る自治体もあり、高い保険料等によって国保加入世帯の約2割・約474.6万世帯が保険料を滞納する中、保険料を「払える」世帯と「払えない」世帯で医療格差≠ェ大きく広がってきている。

最大で344分の1の差
 
国保は、医療保険加入者の約4割を占める最大の医療保険。しかし、保険料(税)の滞納世帯は年々増加傾向にあり、厚生労働省の07年6月1日現在の調べで加入世帯の18.6%に達している。また、保険料の納期限から1年以上滞納している世帯に交付される「資格証」(医療機関の窓口で10割を支払う)の交付数は、滞納世帯の7.17%(34万285世帯)となっている。

 こうした状況を重く見た全国保険医団体連合会(保団連、住江憲勇会長)の地域医療対策部会が資格証を交付された市町村国保被保険者の06年度の受診率調査を実施。秋田・茨城・東京・福井・山口・徳島・宮崎・沖縄の1都7県を除く39道府県の国民健康保険中央会(国保連)が回答した。

 調査の結果、資格証の交付を受けた被保険者の受診率(推計)は、一般被保険者の受診率と比べ、最大で344分の1(山梨県)、最小で18分の1(青森県)の開きがあった。39道府県の一般被保険者の受診率と、資格証を交付された被保険者の受診率について、それぞれの受診率を足して39で割ったもので乖離(かいり)を見た「単純平均」では51分の1となった。

 また、05年度との対比で一般被保険者の受診率は全都道府県で増加しているのに対し、資格証を交付された被保険者の受診率は05年度との対比が可能な29道府県のうち20道府県で低下していた。これら29道府県の単純平均では、一般被保険者の受診率が「31.58」上昇する一方、資格証の受診率は「1.12」下がっていることも分かった。

高い国保料が要因に
 
国保加入世帯は、無職世帯主が53.8%で、「所得なし」世帯が27.1%を占めている。厚生労働省の05年度国民健康保険実態調査報告によると、加入世帯の1世帯当たり所得額は約168万円。例えば、大阪府守口市では、年所得200万円の4人家族で年間保険料が約43万円と収入の2割以上に達し、滞納世帯は約27%に上っている。
 被保険者が支払う各保険料(事業主負担を除く)を見ると、国(政府)が直接運営する政府管掌健康保険(政管健保)が平均4.1%、厚生労働大臣の認可を得た健康保険組合が運営する組合管掌健康保険(健保組合)が平均3.27%に対し、国保は8.47%になっており、「所得に比べて保険料が高すぎることが、国保料滞納の基本的な要因」という指摘もある。

 国保をめぐっては、国が00年以降、保険料の滞納者から保険証を取り上げ資格証などを発行することを各自治体に義務付け。医療関係者によると、一部の自治体では「滞納を続けるなら、あなたの信用を失いかねない」といった赤い督促状を送るほか、100歳を超える高齢者独居世帯に「短期証」を出したり、乳幼児や学齢期の子どもがいる世帯に資格証を発行するケースが増えているという。

 このような結果と実態を踏まえ、保団連は「国は保険料の収納率向上を掲げて資格証の発行を義務付けたが、滞納世帯は増加傾向にあり、資格証の交付が収納率の向上に奏功していないことは明らか。『払いたくても払いきれない保険料』の実態が広がっている。滞納対策と国保加入者の療養を確保することは別個の問題であり、資格証の発行は直ちに止めるべき」と強調。舛添要一厚生労働大臣に「国保資格証の義務的交付に関する改善要望書」を提出した。

資格証
 
国保被保険者資格証明書の略。「災害その他政令で定める特別な事情」がなく1年間、保険料を滞納した世帯主は国保証の返還に応じる必要がある。資格証で医療を受けた時には、病院や診療所でかかった医療費の全額を窓口で支払い、後日、患者が市区町村に領収書を添えて請求すると、保険給付分(原則7割)が戻ってくる。



更新:2008/02/20 14:00     キャリアブレイン

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08/01/25配信

高次脳機能障害に向き合う 医師・ノンフィクションライター山田規畝子

医師の山田規畝子さんは、脳卒中に伴う高次脳機能障害により外科医としての道を絶たれました。しかし医師として[自分にしかできない仕事]も見えてきたようです。