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昨年、金沢など数都市で限定公開された映画「コマンダンテ(司令官)」は、二〇〇二年に米国のオリバー・ストーン監督がキューバのカストロ議長に密着取材した異色のドキュメントである。こんな場面があった 一九六三年のケネディ暗殺事件の感想を聞かれた議長は「あれは単独犯行ではない」と言い切るのである。走る標的には最初の一発は命中しても、続けて当てるのは距離から見て不可能だという。革命戦士の言葉は説得力があった 昨日の本紙国際面にカストロ議長が五十年余の独裁に終止符を打つ記事が載った。同じ面に奇しくもケネディ暗殺事件の記録公開のニュースがあった。狙撃犯オズワルドを射殺したルビーは互いに事件以前からの知り合いだったと言うのがポイントで、興味深かった 映画の中で、キューバ国民はカストロ議長を「司令官」と呼ぶ。ストーン監督は「独裁者と言われるが」と質問すると議長は答えた。「独裁者?人民の奴隷だ」。半世紀も国を支配した者の知恵を聞く思いだった 新聞紙面に写る歴史の残映は、時にドキュメント映画以上に鮮明だ。二十世紀いまだ終わらずの感を強くする。
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