高校駅伝を題材にした映画「奈緒子」に主演した女優の上野樹里さんをGET! テレビドラマ「のだめカンタービレ」では「ヘンタイ」呼ばわりされていましたが、素顔は? インタビューでは芝居への真剣な気持ちが感じられました。映画のロケ地・長崎の思い出もたっぷり聞き出しました。
-映画は1年ぶりですね。
上野:待ちに待ったって感じ。オールロケだし、映画は本当に楽しいんです。ドラマには失礼ですが、ドラマばかり続くと危ないなという感覚もあったんです。
-というと?
上野:世間からすればコメディーで火がついた感じだと思うんです。実際そういう芝居が多かったですし。でも、毎回面白い芝居ができると限りませんし、上野樹里が出てるっていうスター性を追い掛けてもいません。何を伝えたいのかはっきりしないとなと、思ってたところに今回の役が来たんです。
-シリアスな役ですが、奈緒子のどこに魅力を感じましたか?
上野:ドラマは記号的なせりふや説明が多く、それをいかに面白く見せるか工夫が必要なんですが、「奈緒子」は正反対の脚本。キャラクターが描かれずこんなにせりふが少ない役は初めて。全然違う自分を見ていただけると思います。
-チームのマネジャーですが走るシーンもかなりありました。きつかった?
上野:私、短距離ですが陸上の経験があるんです。でも、撮影では疲れすぎて演技なんかできなかったですね。それがリアルで良かったんですが。
-ロケ地の壱岐、長崎の思い出は?
上野:壱岐では壱岐牛とか刺し身とかウニ丼とか食べながら夏バテを乗り越えました。長崎ではたくさんのエキストラの方々が猛暑の中、日傘も差さずに協力してくださったんですよ。
-地元の人たちと交流したんですか?
上野:島の温泉で知り合ったおばさんが「ごはんを食べよう」と家に誘ってくれたんです。娘さんが私のファンで陸上部でもあるってことで話が盛り上がって。「のだめ」のビデオが流され、一緒にピアノも弾きました。そのうち連絡網が回って、近所の人と集合写真まで撮りました! 島の人の温かさがうれしかったです。
-古〓(ふるまや)監督は上野さんのことを「街角で動物に出くわした感じ」と評していましたが、自分の性格を分析すると?
上野:「野性」かもしんないですね(笑)。感覚の人? でも感受性が強いってよく言われますけど、どんな生き物も感じてますからね…。
-女優を目指したきっかけは?
上野:目指してないです!(笑) すいません、(歌手の)SPEEDになりたかったんです。モデルオーディションに合格したら歌ったり踊ったりできるのかなと思って、とりあえず芸能界に入ったけど、モデルの仕事なんか何もやってないし、そのうちCMが決まって、次にドラマ、次に映画となって。皆さんのおかげで、女優という仕事を今はやらせていただいております(笑)。
-「のだめ」で上野さんの名前が全国の茶の間に浸透しました。振り返ってみるとどんな作品でしたか?
上野:連ドラの主演やったのも初めてだったし、毎週たくさんのせりふや動きを覚えることに精いっぱいでした。もっと演じたいと思ったところで終わったという感じ。でもたくさんの人に見てもらえたことはうれしいですね。
-一番リラックスできる時間は?
上野:特にない。本番もリラックスしてます。リラックスしてないって不自然体ってことですよね。インタビューも何を質問されるか楽しみだし、人といることが好きなんです。
-「のだめ」のふるさとは福岡県大川市、今回も長崎。九州のイメージは?
上野:いろんな人がいると思うんですが、反応が「気長」だと。長崎の舞台あいさつも最初静かに迎えてくれたんですが、最後はとっても盛り上がりましたから!
(文・南條進、写真・永田浩)
〈プロフィル&メモ〉 ▼うえの・じゅり 1986年5月25日、兵庫県加古川市生まれ。2003年「ジョゼと虎と魚たち」で映画デビュー。「スウィングガールズ」で日本アカデミー賞新人俳優賞。出演作は「幸福のスイッチ」「虹の女神 Rainbow Song」など。
▼映画「奈緒子」
ぜんそくの療養で長崎県のある島を訪れていた小学生の奈緒子が誤って海に転落。救出しようとした雄介(三浦春馬)の父が命を落とした。罪の意識に苦しむ奈緒子(上野樹里)は6年後、天才ランナーに成長した雄介を支えようと島に戻った。目指すのは高校駅伝長崎県代表のいすだ。監督は古〓(ふるまや)智之。原作・坂田信弘。
=2008/02/20付 西日本新聞朝刊=