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漁船団、迫る艦船に「危ない」 無線に清徳丸は反応なし

2008年02月20日08時01分

 父と子を乗せた漁船が真っ二つに割れた。穏やかな千葉・房総半島沖で、海上自衛隊のイージス護衛艦とマグロはえ縄漁船が衝突した。事故当時、ともに出港した僚船の船長らは、近づいてくる大型船に危険を感じ、かじを切っていた。国民の生命を守るはずの自衛艦との事故に、家族や漁師仲間らから怒りの声があがった。

図

  

 吉清(きちせい)治夫さん(58)と長男哲大(てつひろ)さん(23)を乗せた漁船・清徳丸は19日午前1時ごろ、千葉県勝浦市の漁港を数隻の僚船とともに出港した。ほぼ同時刻に隣の港を出た天津小湊漁協の漁船によると、海は穏やかだったという。「最高のなぎ。遠洋まで行くには、もってこいの天気だった」

 清徳丸と同じころに出港した幸運丸の堀川宣明船長によると、清徳丸を含む船団は幸運丸の後方約3キロの位置を、漁場に向けて時速約15ノット(約28キロ)で航行していた。

 午前3時半ごろ、幸運丸のレーダーに、左舷前方約9キロから接近してくる船影が映った。12〜13ノットで東京湾に向かっているようだった。

 「なんの船だ」「タンカーか、フェリーか」

 後続の漁船同士が無線などでやりとりを始めた。しかし、その中に清徳丸の吉清船長の声はなかったという。

 幸運丸は、イージス艦から見て右舷から左舷に横切る形で前方を通り抜けた。清徳丸などの船団が後ろに続いていたが、イージス艦はそのまま直進してきた。

 「危ない」

 後続の船は無線で連絡しあい、衝突を回避するため、次々とかじを切った。イージス艦は、曲がったり止まったりする様子がなかったという。清徳丸はこのときも無線連絡に反応しなかった。幸運丸のレーダーには、直進している清徳丸の影が映っていた。

 イージス艦は前方に向かってライトを4、5回点滅させた。その後に停船し、今度は作業灯のような強い光で海面を照らし始めた。堀川さんは「汽笛などイージス艦からの危険を知らせる合図には気づかなかった。何かが起こったと思ったが、まさか衝突とは思わなかった」と振り返る。

 清徳丸と船団を組んでいた金平丸の市原義次船長は、事故があった場所の近くで、午前4時過ぎに大きな船と遭遇した。このとき、金平丸や清徳丸など漁船5隻が約3キロ内に集まっていた。

 大きな船は青い明かりを見せ、正面から向かって来た。市原さんはすぐに右にかじを切ったが、それでも衝突の危険性があるとみて、左にかじを切り直した。「船は真っすぐ近づいてきた。こちらは左右どちらによけるか迷ったが、最後は左によけた」と話す。

 新勝浦市漁協所属の惣新丸は事故の一報を受けて19日朝、現場海域に捜索に向かった。午前11時ごろ、現場に着いた。渡辺正明船長(38)によると、船は真っ二つに折れ、船首側と船尾側がそれぞれ100メートル離れた状況で、沈みかけていた。

 千葉県水産情報通信センターによると、19日は清徳丸からの連絡はなく、遭難信号も受信しなかったという。

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