日本列島プチ改造論 パオロ・マッツァリーノ
イラスト:岡林みかん
 
著者プロフィール
バックナンバー

  第65回 家だって、返品できてもいいじゃない

 通販って、楽しそうですね。カタログをもらって眺めていたら、おや? 業者や商品にもよ
るのでしょうけど、商品が気に入らなかったら返品できるところも多いんですね。裏を返せば、
商品に自信があるってことなんでしょう。
 そう考えると不思議なんですが、家って、なんで返品できないんでしょうね。何千円の健康
器具が返品できるのに、人生を賭して買う何千万円の家やマンションが返品できないのは、お
かしくないですか。家だって、返品できてもいいじゃない。
 みなさんもうすっかりお忘れかもしれませんけど、昨今の偽装ブームの発端は、2005年末に
発覚した耐震偽装マンションの件だったんです。いま、そのあおりを受けて、家を建てたくて
も建たない状態が続いてます。タテタクテモタタナイ。特定の男性ならずとも深刻な話です。
耐震偽装発覚以来、建築確認の審査がきびしくなり、やたらと時間がかかるようになったのが
原因です。
 建物を建てるには、事前に図面を提出して、建築基準法などに違反していないかどうかを審
査してもらわねばなりません。これが建築確認です。
 政府のお役人は、偽装を防ぐには建築確認審査を徹底すればいい、と考えたようですね。前
々回(第63回)、私は警告しました。秀才エリートのみなさんは計算された予定調和がお好き
ですが、結果的に無責任になりがちだと。これもその例です。だって、いくら図面が完璧だっ
て、建築中に手抜き工事をされたらまったく意味がないじゃないですか。大事なのは、予定で
なく結果なんです。
 欠陥住宅や偽装をなくすには、事前の図面でなく、結果としての完成した建物の品質にこそ、
責任をもってもらうべきです。そのためには、注文建築はともかく、とりあえず建て売りの戸
建てやマンションに関しては、返品を認めさせればいいのです。
 入居後、たとえば1年間をお試し期間とします。1年あれば住み心地もわかりますし、専門
家に頼んで、建物に欠陥がないかどうかチェックしてもらうこともできます。それで気に入ら
なければ、家を返品できるようにするんです。ただしもちろん、住んでいた期間の家賃(近隣
の相場から計算)は払ってもらいます。
 本当に品質がよく、それに見合った価格の住宅なら、たとえ返品されても買い手はみつかる
はずです。返品されたことで売値が急落したら、もともとの値段がぼったくりだったんです。
 どこの住宅メーカーも、家の品質を売り文句にしてますよね。それを証明するには、結果と
しての商品の出来に責任を持つしかないんですよ。
ページの先頭へ