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手術減、経営痛手 麻酔医確保に苦渋の厚遇 泉佐野病院

2008年02月20日

 3500万円は正当な報酬なのか。大阪府泉佐野市の市立泉佐野病院が麻酔科の常勤医確保のために掲げた厚遇は、現状の労働環境では地域医療が守れなくなっている実態を浮かび上がらせた。ただ、全国最悪レベルの財政難にあえぐ市で、異例の高額報酬が論議を呼びそうだ。

 同病院には従来、奈良県立医科大が麻酔科医を派遣していたが、医局員の減少を理由に撤退。病院側は昨年度、国立循環器病センター(大阪府吹田市)から副院長を招き、その人脈で常勤医を確保していたが、以前より医師が1人減り、年間2千件前後の手術を担う麻酔科の過酷な労働が深刻になっていたという。

 運転資金の不足を示す同病院の不良債務は06年度末で約10億円。今年度はさらに数億円増える見込みで、1540億円もの借金を抱え、財政再生団体転落の危機にある市にとって、同病院の赤字減らしは喫緊の課題だ。

 同病院では現在、麻酔科医の負担を少なくするため、手術件数を大幅に減らしており、多くの救急搬送などに対応できない状況が続く。同病院事務局は「手術を減らせば収益悪化に直結する。麻酔科医が不在になり、さらに手術が少なくなれば病院経営に大きな痛手となる」と説明する。

 勤務医の報酬をめぐっては、三重県尾鷲市が05年、産科医を年5520万円で確保した例がある。林行雄・大阪大医学部付属病院教授(麻酔)は「激務や待遇面で大学でも麻酔科医が去っており、高額報酬で募集せざるを得ない事情は理解できる。だが、手術はチームで行うもので、麻酔科医だけの厚遇は感情的しこりが残りかねない。あくまで一時的対策と考えるべきだ」と話す。

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