産婦人科の分娩(ぶんべん)取り扱いを休止していた富士見町の県厚生連・富士見高原病院は、来年4月から分娩を再開することを決めた。今年4月に2人の医師が着任する見通しで、再開の条件だった小児科の常勤医師による診療体制が整った。矢嶋民雄町長と同病院の井上憲昭院長が19日、町役場で会見し発表した。
小児科の新医師は、松本市出身で東京都千代田区、自警会東京警察病院小児科部長の江川充(みつる)医師(59)と、県内出身で県内の総合病院に勤務する30代の女性医師。2人は4月1日付で着任。江川医師は副院長と、院内保育所「すずらん保育園」の園長に就任する。
江川医師は県の医師求人求職事業「ドクターバンク」に登録し紹介された。井上院長は、不在の解消が懸案だった小児科に常勤医師が決まり、2人が着任することについて「いくつもの病院が医師を求めている中で、ここを選んでくれた。町の応援が力になった。富士見高原の魅力も決め手になったと思う」と語った。
小児科は2005年6月から常勤医師が不在。現在は信州大学医学部からパートの小児科医を迎え、外来診療は週5日、午前中のみ行っている。4月からは午前、午後とも外来診療を行い、入院にも対応する考えだ。
産婦人科は、04年8月に常勤医師が開業に伴い退職。その後、全国的な医師不足、国の拠点病院集約化のために医師が確保できず、分娩は休止していたが、昨年4月に深井宣子(のりこ)医師(52)が着任。分娩再開の条件として、常勤の小児科医と助産師の確保、病病連携の充実を挙げていた。
町と病院は、お産など時間外診療に対応できる院内環境の整備に着手。町は所有す る旧長野地方法務局富士見出張所の建物を提供し、病院では1階を医局棟に、2階は深井医師の住居とするための工事を行っている。助産師は6人に増員する。
矢嶋町長は「分娩取り扱いの再開は町としても喜ばしいこと。安心して子どもを産める環境が整う。今後も病院の体制づくりを支援していきたい」と語った。井上院長は、山梨県側が甲府市まで小児科、産婦人科の病院がないことにも触れ、「(長野、山梨の両県をまたぐ)地域の基幹病院としての役割を担いたい」と意気込みを語った。04年まで同病院では年間に120―150人の新生児が誕生していた。