自治体が当初予算案発表の季節を迎えています。四月からの一年間に展開する施策のお披露目ですから、首長の会見には高揚感が漂います。
岡山市の予算案も十八日に発表されました。予算が目指す都市像は何か、市民ニーズをくんだ施策展開か―。分厚い資料の何をどう伝えるかは頭を悩ませるところです。
新規事業の中で何を取り上げるかも考えどころですが、今回は岡山市足守地区にある歌人木下利玄(一八八六―一九二五年)の生家修復事業を選びました。
市が管理する県指定史跡でありながら、荒れ放題で、見かねた地元有志が二〇〇五年七月に修復に向けて募金活動をスタート。当時、山陽新聞でも取り上げました。町並み保存地区のいくつかの施設では、この記事を拡大コピーして生家の現状を観光客に伝え、修復への賛同と募金を呼び掛けています。
年に何度か足守を訪ねるのですが、当初は記事が保存活動に役立っていることに、うれしい気持ちになりました。しかし、記事に掲載された生家の写真は柱が傾き、壁が落ちてあまりに無残。何度か見るうちに「何とか早く修復してほしい」と願うようになりました。
そうした気持ちと、地道に保存を訴えてきた地元の皆さんにいち早く吉報を、との思いが重なり、十九日付全県版で紹介しました。
修復は二〇一〇年度まで。今度は修復された生家を足守地区の魅力アップにどうつなげていくかに知恵をしぼる番です。こちらにも地元の皆さんの活躍に期待がかかります。
(政治部・板谷武)