さまざまな年代の人たちが、吹奏楽の練習に励む姿が先日の本紙に載っていた。楽譜に注ぐ視線は真剣そのものだ。
選抜高校野球大会に初出場する井原市の興譲館高が結成した市民参加の吹奏楽応援団である。応援に華やかさと勢いを加える吹奏楽部が、興譲館高にはない。そこで思いついたのが、地元を中心に広く協力を得ることだった。
不利な状況を逆手にとって、興譲館高がモットーとする「地域に根差した学校」につなぐ発想は見事だ。市内や近隣の小中高生をはじめ六十代まで百人を超える人々が名乗りを上げた。狙いは的中した。
「後輩の快挙がうれしい。アルプススタンドで応援するのが長年の夢だった」と喜ぶOB。「知人が野球部員の保護者だから」と広島県から参加した人もいるという。チアリーダーも、興譲館高のチアリーディング部に、市内の幼稚園児や小学生らが加わって九十人規模になった。
多くの協力の背景には甲子園初出場に加え、地域とのつながりに力を入れてきた学校の努力がある。学校施設を開放した「地域セミナー」では、教師とともに生徒が助手として一役買い、親近感を増してきた。
地元に愛されるチームを目指す興譲館野球部の快挙が地域を元気づけ、力をもらった市民が選手をもり立てる。強いきずなから生まれた興譲館高の「地域賛歌」が甲子園に響く日は近い。