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建築基準法改正後の大臣認定プログラムはどうなるのか
【第2回】大臣認定プログラムは一般ソフトとどう違うのか

昨年6月の改正建築基準法の施行後、 建築確認申請の構造計算書を作成する大臣認定プログラムが不在の状態が続いています。このほど、1本のプログラムが「仮認定」され、正式認定に向けて産官 連携のコンソーシアムによりチェック作業が行われています。改正建基法で大臣認定プログラムに求められる要件とは何なのか、そして今後、大臣認定プログラ ムはどうなるのかを国土交通省住宅局建築指導課の小野田吉純課長補佐に聞きました。



国土交通省
住宅局 建築指導課
課長補佐

 小野田 吉純 氏


国土交通省のホームページ
http://www.mlit.go.jp/


───建築基準法の改正後に新たに大臣認定構造計算プログラムに求められた機能とは、具体的にどんなものがあるでしょうか。


小野田 前にも述べましたが、大きく分けて「偽造防止のための機能」と「審査を迅速に行えるようにするための機能」とがあります。

偽造防止のための機能については、法改正前にも改ざん防止措置が講じられていましたが、一部のプログラムでは出力結果の改ざんができました。そこで、法改正後は計算の出力結果の改ざんを防止できるように求めています。

また、改正前は、計算の途中でデータの置き換えが可能なプログラムもありました。そこで、計算途中でのデータ置き換えができないようにすることも求めています。


───構造計算書の偽装事件では、故意に弱い地震力を入力して、応力計算の結果を許容応力度内に収まるようにした例もありましたが。

小野田 改正前は、基準に適合しない数値の入力も可能でした。しかし改正後は、法令などに適合しない数値は入力できないように入力制限機能を設けることを義務付けました。


入力制限の例。コンクリートの設計基準強度に10.0(N/mm2)を入力。仕様規定エラーのメッセージボックスが画面上に表示される。入力値を適用範囲内の数値に変更しない限り、入力情報は登録されない。(以下の画像:NTTデータ)


───審査を迅速に行えるようするための機能としては、どんなものが新たに要求されていますか。


小野田 法改正前は、入力データ、出力データ、そしてチェックリストの書式がプログラムごとにまちまちで、どこに何が書いてあるのかを探すだけでも時間と労力がかかっていました。法改正後は、この書式を統一することで、審査する側も効率的に行えるように求めています。

例えば、入力データでは、部材の一覧表などを設けてわかりやすい入力データを表示する機能、出力データでは構造計算書の構成やプログラムからの出力を法令に沿った形で出力する機能などです。

また、出力にはプログラムの大臣認定番号やバージョン、日時などをヘッダーやフッターに付加することにより、いつ、どんなプログラムで計算を行ったのかを、すべての出力ページでチェックできるようにしています。これも、法改正前にはなかった要件です。


構造計算書の出力例。偽装防止のために図が多用されている。審査の効率化が図れるように計算書の書式も統一されている
ヘッダーとフッターの表示例


───建築確認申請のもととなる入力データから、出力結果が正しいかどうかを、審査側で計算してチェックする機能についてはどうですか。

小野田 改正前は、外部からデータを入力して再計算することが難しいプログラムがありました。改正後は、入力データを読み込ませることにより、再計算できるように求めています。

このほか、改正前はプログラムの使用中にミスなどがあったとき、エラーの意味などがわかりにくい場合もありました。これも改善しました。

例えば、入力した数値がプログラムの適用範囲を超えていた場合などは「適用範囲外」として、出力結果に大臣認定番号が表示されないようにする機能です。

このほか、入力値の間違いではないがピロティ構造などで特殊な値を入力した場合に設計者のコメントがいる場合には「警告」、また修正の必要はないが注意事項を提供する「注意」などのメッセージ内容をわかりやすくすることを求めています。



ヘッダーの出力内容は、計算結果の内容や計算実行方法により異なる



───今回の作業で、特に苦労しているところはどこですか。

小野田 構造計算プログラムに、これほど徹底的に偽装や改ざんを防止する機能を盛り込むというのは前例がありません。

参考になるものがほとんどない状況で、新しいプログラムを実現させなければいけないわけですから。プログラムの開発というよりも、お手本となる仕様づくりの方が大変だったのです。

また、構造基準が改正建基法施行の直前に決まりましたので、プログラム開発もスタートが遅くなってしまった面もあります。





(次回は2月18日に掲載します)

2008年02月12日 00:00 |

 

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