<地方議員の集会〜1月23日>
「道路特定財源堅持ガンバロー!」
ガソリン税の暫定税率リッター25円をめぐる攻防。
「暫定税率が廃止されれば地方に道路が造れなくなる」という声が与党や自治体から上がる一方、ガソリン税は、官僚たちの天下り先に流れていた。
【記者〜2007年】
「こちらの駐車場は道路特定財源から90億円かけて造られたのですが、その収益は1円も国に還元されていないのです」
VOICEの取材で明らかになった「天下り駐車場」。
ガソリン税など道路特定財源から995億円をかけ、全国14か所に建設された地下駐車場だが、その運営は国土交通省の天下り先である財団法人が独占し、収益は1円も国民に還元されていなかった。
そして天下りの役員らは年間1,600万円を超える報酬を受け取っていた。
【駐車場整備推進機構・矢野善章専務理事〜2007年】
(Q.なぜ収益から用地代を国に納めていないのか?)
「用地代ではなくて、国と一緒に造った駐車場ですから」
(Q.国民の税金を95%出して造ったんですね?それを使って営業されてるわけですよ)
「その結果ですね、路上における違法駐車対策が。交通事故とか交通渋滞が大幅に減ってくると」
(Q.それは民間が経営しても同じ効果が得られるのでは?)
「そんなことはございません」
しかし、ガソリン税などがつぎ込まれた「天下り駐車場」はまだまだあった。
<記者>
「国道43号線の高架下です。こちらは国有地なんですが、300台の車をとめられる駐車場が広がっています」
大阪・港区。
阪神高速と国道43号線が走る高架下に、300台以上を収容する月極駐車場がある。
料金はひと月、1万6,800円。
土地は国のもので、ガソリン税などで整備されたのだが、駐車場の運営はまたも国交省の天下り先のホージンが独占していた。
<記者>
「こちらの駐車場は管理人がいるわけでもありませんし、門はこのように手動になっていて、ほとんどコストはかかっていないことになります」
設備も最小限の駐車場。
かなりの利益があがりそうだ。
こうした国道高架下で駐車場2,200台分を独占管理するのが、社団法人「近畿建設協会」。
駐車場で年3億円の売り上げを上げる。
一方、協会が国に納める土地の使用料は3,000万円足らず。
つまり、ガソリン税などがつぎ込まれた土地を格安で借り、年2億7,000万円もの粗利益を上げていることになる。
協会の職員は729人中、95人が国交省OB、常勤役員5人も国交省からの天下りだ。
彼らにだけ、なぜ特権が認められるのだろうか?
<近畿建設協会・豊原実総務部長>
(Q.国の土地を安価で占有して2億7,000万円の粗利益を上げているようにみえる)
「そこが誤解を招くところ。駐車場については契約でなく、許可を受けてやってる事案でございますんで・・・。上がった収益は必ず還元する。そういうところでないとダメだと」
収益は国民に還元していると強調する総務部長。
では、いったい何に使っているのか…。
<近畿建設協会・豊原実総務部長>
「少なくとも通常3億円の収入に対して2億近い人件費等が必要ではないか」
調べてみると、人件費になんと9,000万円。
文書費・事務費に6,000万円など2億円近い経費を使っていた。
<近畿建設協会・豊原実総務部長>
(Q.2,000台ちょっとの駐車場を管理するのに、9,000万円の人件がなぜかかる?)
「実体論としてそういう数字がある」
(Q.なぜかかるのか聞いてるんです)
「だからかかったということでしょう。経費上」
(Q.公益事業をやると言っておきながら、結局人件費に消えているのでは?)
「人が多ければ当然、人件費はかかる。公益の事業をするのは人ですから。人の費用は当然かかる」
やはり、職員の給料に費やされていた。
さらに、ガソリン税はこんなものにも使われていた。
大阪・梅田の地下街。
この一角にガソリン税で造った施設がある。
「道の相談室」。
道路に関する様々な相談を受け付ける窓口という趣旨だが、年間4,500万円の運営費(2か所分)は、ガソリン税などでまかなわれていた。
業務は先ほどの近畿建設協会が随意契約で受注。
果たしてこの施設、活用されているのだろうか?
〜2月1日〜
取材班は相談室の1日を追ってみることにした。
午前10時、営業が始まる。
<記者>
「1人、男性が入りました」
さっそく1人目の相談客が訪れた。
何を相談したのか、聞いてみると…。
<相談に来た男性>
「(近所の)橋をどういう理由で壊して再度付け替えているのかと」
(Q.どのような回答?)
「(回答は)『市の方に聞いて自宅に直接連絡します』と」
(Q.あそこではわからない?)
「あそこではわからない」
ところが、その後は相談者が途絶えた。
<記者>
「正午になりました。結局相談に来たのは午前中は男性1人だけでした」
その後も時折、人が出入りするが…。
<相談室を訪れた女性>
「ドコモショップの場所を聞いてたんです」
(Q.道の相談ではない?)
「はい」
<相談室を訪れた男性>
「コインロッカーの場所聞いたんですが、あいにくわからないと。あんまり役に立たないですね」
道路の相談は、ほとんどないようだ。
<記者>
「シャッターが閉まります。午後6時です。きょうは結局、道路の相談は2人だけでした」
そもそもこの業務、国土交通省OBにしかできない仕事なのか。
<近畿建設協会・豊原実総務部長>
「いろんな方が質問される時に、どういう質問だと的確に判断する。そういうことができるのは道をしっかり体にしみつかせきた人間。そういう職員ができる、と」
これを含め、近畿建設協会は年間65億円もの事業を国交省から随意契約で受注。
実は、全国には他にも7つの同じような天下り法人があり、2006年度は700億円近い業務を随意契約で請け負っているのだ。
つまり、ガソリン税などが不透明な形で天下り法人に流れていたわけだが、これらの法人は役員報酬などの公開を拒んでいる。
そこで、取材班は元国交省キャリア官僚の理事長に直接話を聞くことにした。
<近畿建設協会・霜上民生理事長>
(Q.国土交通省OBの人件費をねん出するために、随意契約や占有をさせてるんじゃないか?)
「そういう発想は一切ないと思いますよ。平成18年度19年度からガラッと変わってきているんで、今後についてはまったくそういう話にならないと思う」
(Q.いまだに最終的には随意契約続いてるじゃないですか?)
「それは会計法上1社しか手を上げなかったときに、随意契約になってるだけで」
(Q.1社しか手を上げられないような条件を付けてるじゃないですか?)
「それは私が付けたわけではなくて、国におっしゃったらどうですか」
(Q.役員報酬を公開しないのはなぜですか?)
「それは我々一人一人の人権の問題だと思います」
(Q.役員でしょう。経営者でいらっしゃるわけだから。しかも公益法人の経営者なんですよ?)
「ですからそういうこと。一人一人の人権がどこまで保護されるべきか。我々がためこんで酒盛りしようという気持ちは一切ない」
実態が不透明な天下り法人に流れるガソリン税。
まず、こうした無駄を徹底的に省かなければ、暫定税率を続けることへの理解はとても得られそうにない。
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