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イージス艦事故:「あたご」に回避義務 レーダー役立たず

海上自衛隊横須賀基地に接岸した海上自衛隊イージス護衛艦「あたご」(右)の船首部分を調べる関係者=2008年2月19日午後5時9分、本社ヘリから岩下幸一郎撮影
海上自衛隊横須賀基地に接岸した海上自衛隊イージス護衛艦「あたご」(右)の船首部分を調べる関係者=2008年2月19日午後5時9分、本社ヘリから岩下幸一郎撮影
イージス艦と漁船の予想進路
イージス艦と漁船の予想進路

 千葉・野島崎沖で海上自衛隊のイージス艦「あたご」=艦長・舩渡健1等海佐(52)、7750トン=とマグロはえ縄漁船「清徳丸」(全長約12メートル、7.3トン)が衝突した事故で、清徳丸を右舷側に見て航行していたあたごに海上衝突予防法に基づく回避義務があったことが分かった。乗組員による目視が不十分だったため清徳丸に気付くのが遅れ、回避動作が間に合わなかった可能性が高い。海上保安庁と海自は行方不明の清徳丸船主、吉清治夫さん(58)と長男哲大さん(23)の捜索を続けると共に、横須賀海上保安部が業務上過失往来危険容疑で艦内を家宅捜索し、舩渡艦長らから事情を聴く。

 石破茂防衛相の自民党部会での説明によると、あたごは19日午前4時5分ごろ、野島崎沖を北に向かって航行中、漁船1隻が右前方から進路を横切った。そのころ、見張りの乗組員が右方向に緑の灯火を視認した。実際は清徳丸の灯火だったが、この時点では漁船の灯火かどうか分からなかったという。

 同6分ごろ、緑の灯火がスピードを上げて動いたため漁船と確認。全力の後進をかけて回避動作をした。清徳丸は前方約100メートルで大きく面舵(おもかじ)(右舵)を切った。同7分に衝突。レーダーに清徳丸が映っていたか、それを乗組員が認識していたかどうかは不明という。

 海上衝突予防法では、清徳丸の場合、左舷に赤、右舷に緑、後部に白の灯火が義務づけられている。あたごから見て清徳丸が右から左に航行していた場合、赤の灯火が見えることになり、乗組員の証言とは矛盾する。漁をしている時はこのほかに緑の灯火が必要だが、当時は操業していなかったという。横須賀海保などは灯火状況や見え方についても詳しく調べている。

 同法によると、2隻の船が進路を横切る場合、右舷側に他の船を見る船に避ける義務がある。やむを得ない場合を除き、相手の船首方向を横切ってはならない。衝突を回避するには、減速、停止、後進、面舵などの方法があり、あたごは全力後進をかけ減速したが間に合わなかった。横須賀海保などは、回避動作が十分だったかについても調べる。

 事故当時、あたごは当直態勢で夜間航行をしており、艦橋に10人程度の乗組員が目視などで洋上を監視。さらに前方の船舶を映す水上レーダーでチェックしていた。海自幹部によると、レーダーは近くなると役に立たず、300~400メートルからは乗組員による目視が頼りになるという。衝突が回避できなかったのは、目視が不十分だった可能性がある。

 一方、海保と海自は24時間態勢で巡視船、護衛艦、ヘリコプターなどを出動させ、吉清さん親子の捜索を続けている。捜索に加わっていた漁船が日中、現場近くで吉清さんのウインドブレーカーを発見した。海自は前後に分断された清徳丸の船体を、千葉県館山市沖にえい航している。【本多健、伊藤直孝、内橋寿明】

毎日新聞 2008年2月19日 21時57分 (最終更新時間 2月19日 23時39分)

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