「宍道湖七珍」を守れ!

果たしてワカサギを呼び戻せるか?

小澤 健二(2008-02-07 10:30)
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 皆さんは「宍道湖七珍」をご存知だろうか?

 宍道湖は、山陰の島根県松江市の西側に位置し、全国第6位の面積を持つ湖で、約20もの川とつながっている。

 その川を通して海ともつながっているので、川の淡水と海の海水が混ざりあっていて、このように塩分を含む湖は「汽水湖」と呼ばれている。そんな宍道湖でとれる魚介類は、「宍道湖七珍」といわれ、宍道湖を代表する味となっているのである。

 「宍道湖七珍」を僕が初めて知ったのは、高校の修学旅行で松江を訪れた時だった。
  
 「皆さん、シンジコシッチンって知ってますかあ?」

 観光バスのガイドさんが、僕らに問いかけた。

 「なんだ、シンジコシッチンって……?」

 そこで「宍道湖七珍」がどんなものかを知った。

  その「七珍」とは、シジミ、シラウオ、アマサギ(ワカサギ)、冬スズキ、コイ、モロゲエビ、ウナギの七つである。

 それが、その旅の思い出のひとつになっていて、「宍道湖七珍」と言う言葉が記憶の片隅に残っていた。その記憶を頭の片隅から引っ張り出させるニュースが、先日、ラジオから流れてきた。

 「七珍」のうち、地元ではアマサギと呼ばれているワカサギが、絶滅の危機に瀕しているというのである。

 ワカサギというと、真冬に、凍った湖の水面に穴を開け、釣り上げるというイメージが強い。

 実際、ワカサギの本来の分布域は、太平洋側は千葉県以北、日本海側では島根県以北の北日本であり、雪国が多い。そうではない宍道湖はその南限といえる。

 そんな宍道湖のワカサギの漁獲高が、ここ数年で激減しているのだ。1965年には、年間600トン近い漁獲量を誇ったが、94年の猛暑で大量死し、以降はほとんど姿を見かけなくなったという。2006年の産卵量は、2005年の20分の1に激減したそうである。

 湖の水温上昇が一因とされ、絶滅が危ぶまれる深刻な事態になっている。こんなところにも、地球温暖化の影響がでてきているとは……。

 「宍道湖七珍」が「六珍」になりそうな危機的状況を打開すべく、地元の宍道湖漁協は対応策を考え実行した。

 他県に生息しているワカサギの受精卵を譲り受け、宍道湖で孵化させようとしたが、宍道湖では水温が高すぎて、孵化しなかった……。

 そんな試行錯誤を重ねた末に浮上したのが、「ワカサギバンク」構想である。

 このプロジェクトは思いがけないところから生まれた。松江市内の農業用ため池を管理する農家が、池の有効活用を模索する中で、ワカサギの稚魚700匹を試験的に放流したところ、自然に繁殖を繰り返し、2年間で3万匹にまで増えた。

 夏場は湖底でも水温が30度に上昇する宍道湖に対し、ため池は水深2メートル以下でも、水温が常に25度より低く保たれている層があるため、高温に弱いワカサギが生き残ることができるという。

 そこで育った稚魚を宍道湖に放流しようというのが狙いだ。

 何十年か前、東京でも多摩川に鮭の稚魚を放流し、「カムバックサーモン」という運動が行われていたが、今回の宍道湖漁協の取り組みには、それ以上の切実さと思い入れを感じる。

 やはり「七珍」は「七珍」であり続けて欲しい。「六珍」になってしまっては物凄く寂しい。これからの宍道湖漁協の「挑戦」に期待したい。

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