全国から3万人が参加する17日の東京マラソンで、新潟産「コシヒカリ」のおにぎり3万個が配られる。中越沖地震から復興する同県農業をアピールしようとJAグループ新潟が企画した。この企画のアイデアを出し、裏方として支えるのが県食品・流通課長の目黒千早さん(49)。PRの舞台を首都の巨大イベントに見定めた裏には、行政経験で磨いた深い読みがあった。
「新潟米de復興支援ありがとうin東京マラソン2008」。今回の企画を発案した目黒さんは、昨年4月、県産農産物の消費拡大などを担う同課に異動するまで、産業関係の部署で特産の金属製品や織物、加工品などの販促に携わってきた。
東京マラソンに目を付けた理由は、日本初の本格的な都市型市民マラソンとして注目が高まっていることや、応援などを含め、全国から大勢の人が集まる有数のイベントであることを挙げる。
とりわけ、エリート選手だけが走る大会と異なり、食べ物へのニーズが高い大会であることに注目する。初開催の昨年は、提供されたバナナ(4万2000本)や人形焼き(6000個)が不足したり、沿道のコンビニエンスストアで食料を調達するランナーも多かった。
17日はゴール地点で、おにぎりのほかに米粉パン3万個も配る。「走りきった後の栄養補給に食べてもらえば、新潟米のおいしさがさらに引き立つはず」ともくろむ。
昨年7月の地震発生後、目黒さんは避難所への食料手配の責任者として陣頭に立った。地域の経済活動が止まると、農産物販売にも直接影響することを肌身で感じた。観光客の減少は今も尾を引く。県外に向けて、被災地の負のイメージがまだ完全にはぬぐえていないとも感じている。「元気で明るい新潟を継続的にアピールし、被災前以上に販路を広げていきたい」と目黒さん。
マラソン当日は、JA関係者とともに会場で思いを込めたおにぎりやパンをランナー一人一人に手渡すつもりだ。