京都府京都文化博物館

財団法人 京都文化財団

特別展示室

川端康成と東山魁夷 −響きあう美の世界−展

ノーベル文学賞受賞作家・川端康成(1899〜1972)が、現代を代表する日本画家・東山魁夷(1908〜99)と親しく交流したことはこれまでにも知られていましたが、近年、康成と魁夷の間で交わされた書簡がまとまって発見され、あらためて話題になりました。そこには、魁夷の作品や、康成が収集した美術品をめぐる、二人の芸術家の魂の邂逅をうかがうことができます。

当館では平成14年12月から翌年1月にかけて、「没後30年 川端康成 文豪が愛した美の世界」と題する展覧会を開催し、美術コレクターとしての康成に光を当てました。康成ゆかりの展覧会の第二弾となる本展では、往復書簡や折々に記された康成と魁夷の言葉をガイドにして魁夷の優品の数々を見つめ直すとともに、前回の展覧会でも紹介した川端康成記念会に所蔵される康成コレクションから3点の国宝や新発見の作品などを厳選、さらに、康成がかつて所蔵していた美術品をあわせて展示します。

珠玉の言葉たちと美術の競演をご堪能ください。

会期 [4階特別展示室]
平成20年1月16日(水曜日)〜 2月24日(日曜日)
月曜日休館(祝日のときはその翌日)
10時〜18時(入場は17時30分まで)
入場料(常設展もご覧になれます)
一般:1,000円(800円)
大高生:700円(560円)
中小生:400円(320円)
*( )内は前売券及び20名以上の団体料金
割引引換券をプリントする
主催
京都府、京都文化博物館、毎日放送、毎日新聞社
後援
京都市、京都府教育委員会、京都市教育委員会、京都商工会議所、京都府観光連盟、京都市観光協会、歴史街道推進協議会、NHK京都放送局、KBS京都、エフエム京都
監修
川端香男里(川端康成記念会理事長)、平山三男(川端康成記念会評議員)、東山すみ

主な展示品

東山魁夷作品

冬華▲「冬華」昭和39年

年暮る▲「年暮る」昭和43年

浦上玉堂「凍雲篩雪図」【国宝】▲浦上玉堂「凍雲篩雪図」【国宝】

「樹根」(目黒区美術館)昭和30年
「白夜」(北澤美術館)昭和38年
「青い沼」(個人蔵)昭和38年
「冬華」(東京国立近代美術館)昭和39年
 *前期[1月16日(水)〜2月3日(日)]展示
「月篁」(東京国立近代美術館)昭和42年
 *後期[2月5日(火)〜2月24日(日)]展示
「谿紅葉」(兵庫県立美術館)昭和43年
「北山初雪」(川端康成記念会)昭和43年
「夏に入る」(市川市東山魁夷記念館)昭和43年
「年暮る」(山種美術館)昭和43年
「秋深し」(ポーラ美術館)昭和44年
「萌ゆる春」(佐久市立近代美術館)昭和44年
「緑のハイデルベルク」(北澤美術館)昭和46年
本制作、挿絵、習作、スケッチ、リトグラフなど約50点
川端康成記念会所蔵品
浦上玉堂「凍雲篩雪図」【国宝】江戸時代
池大雅・与謝蕪村「十便十宜図」【国宝 *1件2点】江戸時代
岸田劉生「麗子喜笑図」大正11年
木村荘八『伊豆の踊子』挿絵原画 昭和初年
古賀春江「煙火」 昭和2年
草間弥生「不知火」 昭和30年
など約20点
川端康成旧蔵品
    
浦上玉堂「山廻路轉図屏風」(大阪市立美術館寄託)江戸時代
 *後期[2月5日(火)〜2月24日(日)]展示
富岡鉄斎「蝦夷人図屏風」(京都国立博物館寄託)明治25年
 *前期[1月16日(水)〜2月3日(日)]展示

その他
川端康成墨跡、原稿、書簡及び東山魁夷書簡など 約40点

チラシのダウンロード
A4表裏/PDF 2.1MB

川端康成と東山魁夷

川端康成—略歴

川端康成書簡▲池大雅・与謝蕪村「十便十宜図」【国宝】江戸時代

大阪市生まれ。15歳で孤児となり、中学2年から作家を志す。東京帝国大学文学部卒業。『新思潮』や「伊豆の踊子」などを発表した同人雑誌『文藝時代』などを創刊。1944年、菊池寛賞を受賞。1968年、ノーベル文学賞を受賞。1972年、仕事部屋で自殺。1973年に財団法人川端康成記念会により川端康成文学賞が創設。1985年には茨木市立川端康成文学館が開館。

東山魁夷—略歴

「緑のハイデルベルク」昭和46年▲「緑のハイデルベルク」昭和46年

横浜市生まれ。東京美術学校日本画科卒業、研究科修了(結城素明に師事)。その後、ベルリン大学哲学科美術史部に留学。1947年、日展で「残照」が特選。1950年、日展出品の「道」で大きく評価される。1956年、「光昏」で芸術院賞受賞。1969年、文化勲章受章。1981年、約10年の歳月をかけて制作した奈良・唐招提寺御影堂障壁画を完成。平成11年没。

担当学芸員から・・・

川端康成と東山魁夷の遺族のもとから、100通にものぼる往復書簡が見つかりました。これらの書簡から、二人は深い精神性を秘めた交流で結ばれていたことがわかりました。二人はただ親密なだけではく、相互に畏敬の念すらもっていたようです。友情の親密さ親愛と、畏敬は同じではありません。「畏」は「畏怖(おそれる)」、「敬」は「敬愛」または「尊敬」です。近代日本の芸術を代表する大きな二つの個性は、小説と絵画という相互に活躍する場をこえて認め合って敬い、また同時に怖れる気持ちもあったということになります。

川端康成書簡▲川端康成書簡

川端康成の小説は、中学の国語の教科書にも載っていますが、一読すれば一種悪魔的な美意識がその底を貫いていることが分かります。ところが、川端が東山魁夷に見た怖れとは何でしょうか。魁夷は親しみやすい叙情性あふれる作品を描き、没後8年を経た今もその人気はおとろえません。川端は、ただ見た目にやさしい日本画の世界をそこに見ていたわけではなさそうです。

東山魁夷書簡▲東山魁夷書簡

ここから先の謎解きは、展覧会でのお楽しみです。展覧会では、魁夷の作品に加えて、二人の折々の言葉、川端が蒐集した美術品も展示しています。川端は魁夷の作品に何を見ていたのでしょうか。また何故そこまで深い「魂の交流」とでもいうべき行き来が二人の間にうまれたのでしょうか。

二人の精神の深部を、言葉で説明しつくすことなど、もとよりできません。しかし展覧会では、皆さんそれぞれに、この二人のあいだの「何か」を見て、感じていただくことができるのではないかと考えています。


京都文化博物館/学芸員/長舟洋司

関連行事 対談「川端康成と東山魁夷 魂の交流」(無料)

お話し
川端香男里(財団法人川端康成記念会理事長、東京大学名誉教授)
聞き手
水原園博(毎日放送シニア・プロデューサー、財団法人川端康成記念会評議員)
日時
2月3日(日) 午後2時〜3時30分(午後1時30分開場)
会場
別館ホール
申込方法
往復ハガキに住所、氏名(返信面にも)、電話番号、参加人数(2名まで可)を明記し、「川端康成と東山魁夷」展係へ。先着順、定員200人。

音声ガイド(有料)

展覧会会場では、音声ガイド(作品解説)端末をご利用(500円)いただけます。サイトからご自分の携帯端末にダウンロードすることも出来ます。
■ダウンロード(300円)http://www.ca-mus.co.jp/myguide/myguide-bunpaku.html