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社説(2008年2月19日朝刊)

[相次ぐ米兵不祥事]

異常で由々しい事態だ

酒酔い運転に住居侵入

 それにしても度が過ぎる。尋常ではない。海兵隊という組織の中で、隊員の規律さえ維持できないような劣化現象が起きているのではないか。

 米兵による暴行事件を深刻に受け止め、米側トップのシーファー駐日米大使やライト在日米軍司令官、ジルマー在沖米四軍調整官、メア在沖米国総領事らが入れ替わり立ち代わり謝罪し、再発防止策を約束したにもかかわらず、足元では、底の抜けたバケツのように不祥事が相次いでいる。

 十七日早朝、沖縄市中央の県道で、キャンプ・フォスター所属の二十二歳の海兵隊員が道路交通法違反(酒酔い運転)の疑いで現行犯逮捕された。

 呼気一リットルから〇・六一ミリグラムのアルコールが検出されたという。

 十八日未明には、キャンプ・シュワブ所属の二十一歳の海兵隊員が名護市辺野古の民家に侵入したとして住居侵入の疑いで現行犯逮捕された。

 容疑者は酒によって一軒家に侵入し、ソファで寝ていたという。

 海兵隊は十四、十五の両日、「日常わきまえなければならない規範」を身につけるため全隊員を対象に法令順守の倫理教育を実施したばかり。組織を挙げて綱紀粛正に乗り出したその矢先に、不祥事が連続して起きたのである。由々しい事態だ。

 なぜこうも海兵隊員の不祥事が相次ぐのか。この問題に根本からメスを入れない限り、今後も「綱紀粛正」「再発防止」の四字熟語をむなしく繰り返すだけだろう。

 一九九五年の暴行事件から今年で十三年。復帰後最大規模の抗議のうねりの中で「沖縄に関する日米特別行動委員会」(SACO)が設置され、基地の整理・統合・縮小計画や地位協定の運用改善などが合意された。だが、米兵による卑劣な性犯罪など、凶悪事件は後を絶たない。

 隊員は半年もしくは一、二年のサイクルで異動するため、「良き隣人」教育を根付かせるのは難しい。しかも沖縄は、アフガニスタンやイラクと直結する出撃拠点だ。

 九五年以降の日米両政府の再発防止の取り組みは、はっきり言って失敗だった、と評価せざるを得ない。

実効性のある防止策を

 今回の暴行事件の容疑者は基地外に住む三十八歳の海兵隊員だった。

 米兵が基地外に住む場合、地位協定第9条によって自治体への届け出義務が免除されており、自治体は米兵が何人住んでいるのか、その正確な数字をつかんでいない。

 民間地域に住んでいても外国人の登録および管理に関する法令が適用されず、自治体行政が及ばないというのは問題だ。

 容疑者の身柄が拘束されているので今回は地位協定上の問題はないという政府の説明は一面的だと言わざるを得ない。

 米軍のこれまでの再発防止プログラムは、基地内に住む若い米兵を対象にしたものだった。その盲点が浮き彫りになった以上、従来の対策を全面的に見直すことが必要だ。

 日米両政府は、防犯カメラの設置や日米共同パトロール、夜間外出の制限などを検討しているといわれる。

 米軍憲兵と県警の共同パトロールは、事件が発生した場合、米側に身柄を拘束される可能性があり、県警としては受けいれられないだろう。共同パトロールを実施するにしても、違った仕組みが求められる。

 その種の再発防止策は、しかし、「ぬるい」という印象がどうしてもぬぐえない。過去に同じようなことが何度も繰り返されてきたからだ。県民が求めているのは、抜本的な対策である。

再び「県民大会」の動き

 私たちは九五年の暴行事件以降、基地の整理縮小と海兵隊の撤退・削減こそが最大の解決策であることを繰り返し主張してきた。

 実質的な負担軽減と実効性のある再発防止策を目に見える形で進めるには、米軍再編計画の見直しも視野に入れた取り組みが必要だ。

 もう後がないという強い決意が日米両政府にあるかどうか。県民は言葉ではなく実際の行動を求めている。

 復帰後、基地問題が大きく動いたのは、超党派の取り組みによって「女性の人権」や「暮らしの安全」「過重な負担の軽減」を両政府にぶつけた時である。

 女性団体や教育団体などの県民大会を求める声を政党は、正面から受け止めてほしい。住民意思を明確な形で示すことが今、求められている。


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