2008年2月19日(火) |
県内にある二十七の自治体病院で、医師が百四十五人足りないという。このため診療科が閉鎖されたりして利用する患者が減る。病院の規模や収入が細り、経営も苦しくなっていく。 開業医や比較的大きな病院が多い旧三市ではなく、開業医が少ない地域で住民の頼みの綱になっている自治体病院などの医師不足は深刻な問題だ。 大学病院が医師を派遣していたが、新卒の医師の多くが大都市の病院での研修を望むようになり、大学自体が必要な医師の確保に迫られて派遣先の病院から医師を引き揚げていく。 自治体病院に残る医師は長時間労働を強いられ、激務に耐えられなくなったりしてやめていく。医師不足に拍車がかかる。その悪循環が止まらない。 厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)は、二〇〇八年度から実施する診療報酬改定の内容を了承した。自治体病院などで働く医師の報酬を手厚くする。 昼夜を問わない対応が必要な産科や小児科、救急医療などに携わる勤務医の処遇の改善や、きつい労働負担の軽減を図る狙いだ。方向は間違っていない。 だが、県内の多くの医療関係者が疑問視しているように、医師不足対策としては不十分だ。悪循環を食い止めて、地域医療を再生させるには程遠いと指摘せざるを得ない。 改定の焦点は、開業医の再診料を下げた分を勤務医不足対策に振り向けられるかどうかだったが七百十円で据え置きとなった。病院(二百床未満)の再診料は五百七十円から六百円に上がる。差は縮まったものの、患者は開業医より安い病院の方を選ぶだろう。勤務医の激務が大きく改善されそうにはない。 やりくりしてひねりだした勤務医対策の財源は千五百億円だが、これは全国の病院収入の約1%にすぎない。しかも、この収入増加分が、そのまま勤務医の処遇改善に使われるかどうかも分からないという。 新卒の医師が流出し、地方の医師不足を加速させる主因の一つになっている臨床研修制度は改善されない。一方で、国は自治体病院に経営の効率化を厳しく求めている。 総務省が示した「公立病院改革ガイドライン」は、空きベッドが多い病院には診療所化などの規模縮小を促している。 国は地方交付税削減も続けてきた。それが自治体の財政を乏しくし、病院への財政支援をしにくくして病院の経営悪化にもつながっている。 膨らみ続ける医療費の国の負担分を減らし財政悪化を防ぐ。そのため、大学医学部の定員を削り医師数を抑制してきた。診療報酬は下げてきた。 そうしたことも含めて財政再建を重視してきた国の政策は、住民生活に欠かせない地域医療を結果的に弱らせ、縮小させる方向に導いているとも映る。 鯵ケ沢 |