2008-02-18
■[思ったこと]典型的なデートレイプ、そしてその加害者情報の開示の困難への無知

行きがかり上、この話題にも触れずにはおけない。なんというかひどい事件で、怒りを抑えるのがかなり困難である。
つきあっていた男子生徒が、その関係を背景に強要し、「呼び出して無理やり服を脱がせて撮影」したとされている。交際関係を盾にして、性的行為を強要した、典型的な「デートレイプ」事例と理解することが出来るだろう。
産経のサイトはサイトに画像への掲載の部分をクローズアップしているが、実質的に彼女に大きなダメージを与えたのは学校という地域コミュニティーへの画像流出のほうではないだろうか?ネットのコミュニティーへの流出は、確かに象徴的意味での精神的ダメージは大きいだろうが、制服が映ってるとか、そういった地域情報とリンクさえしていなければ、通常の精神構造を持った男は「似ている」程度でごちゃごちゃ言ってはこないものだから、結局は、彼女の生活を実際には大きく乱すことはない可能性もある。しかし、学校内での流出は、決定的に彼女に好奇の目を集中させ、彼女自身に心無い言葉がぶつけられることも容易に想像でき、相当に彼女の生活をかき乱したであろう事は想像に難くない。
地域コミュニティーにこの手の情報が流れてしまった場合、それから逃げるには、物理的な引越ししかないだろう。残念ながら、かなりの負担が被害者に課せられる。性犯罪の場合は世間は被害者に冷たい。うかつに撮らせたほうが悪いとか、高校生の癖にそういう付き合いをするのが悪いとか、そういう追い討ちをかけるような心ない、頭の悪い、自身の低レベルな精神の表出のような表現を厭わない馬鹿がこの世の中には満ち溢れているものだ。
とはいえ、学校というコミュニティーは実際には彼女が暮らす地域のコミュニティーとそれほど密接に接続しているわけではない。そういう意味では、可能性レベルではあるが、学校をやめ*1、自宅で静養し、そのようなノイズからも、破廉恥な好奇の目からも逃れて、今は心を休めているのかもしれない。
しかし、この状況下で、加害者の氏名を公表することに何の意味があるだろうか。デート・レイプの難しいところは、その加害者を公表することで、被害者が誰なのかまでも地域コミュニティーに告知してしまう危険があるところだろう。この場合、加害者の氏名公開と同時に、瞬時に加害者が通う高校の名前が知れ、そして、「その高校に通っていて退学した女子」という形で、もしかしたら学校からある程度はなれて学校内での噂とは無関係であったかもしれない自宅周辺の地域コミュニティーにおいてまでも、彼女の特定がなされてしまう場合もあるのである。*2
PCの向こうで自分勝手にエキサイトして「氏名公表しろ!」とかいきまくのは勝手だが、それが彼女に与える影響というものも3秒ぐらいは考えてみたらどうか。
これだけ長いと読めない子もいるかもしれないので、最後にまとめておく。
- これは典型的なデートレイプ。
- ネットへの流出よりリアルな身の回りへの流出のほうがきついのでは?ネットがからんでるからって、産経はしゃぎすぎじゃね?
- 下手に加害者の氏名公開とかすると、被害者の特定をますます地域コミュニティーに容易にさせるんじゃね?無責任に煽ってんじゃねーよ。
以上。
デートレイプってなに?―知りあいからの性的暴力 (10代のセルフケア)
- 作者: Andrea Parrot, 冨永星, アンドレアパロット, 村瀬幸浩
- 出版社/メーカー: 大月書店
- 発売日: 2005/12
- メディア: 単行本
かえって日本中のネット出歯亀に盛りをつける効果しかもたらされず、一方で国民の利益には資さない事件ではないかと思うのです。
私は今回は報道の姿勢には問題が大いにあると考えています。女性の画像流出事件などの場合は、流出していること自体を報道することは、二次被害をどう考えても拡散させるものです。(Winny などでの情報流出の対処法として既に語られていることだと思います。)