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「産業突然死」の時代の人生論

日中関係改善の努力がご破算になる可能性も

 さて、ここで従軍慰安婦問題が米国で騒がれるようになった経緯をまとめてみたい。下の図である。

 キーになっているのはマイク・ホンダという議員だ。彼は、その名からも知れるように日系米国人だが、彼を支持し金銭的援助をしているのは、中国や韓国系の米国人である。彼はこの問題に長くかかわっており、これまで8度も決議案を議会に提出していた。ただし、その決議案は毎回、否決されていたのである。しかし、最近ニューヨークタイムズが大きく取り上げたことから注目されることになった。日本では朝日新聞がそれを報道し、国会でも話題になった。

 ところが安倍首相は国会で「米下院での決議案は、客観的な事実に基づいていない」と発言したのである。彼の発言の元になっているのは、下村官房副長官の「日本軍が関与していたことを示す資料は見付からなかった」というコメントだ。また安倍首相は国会で仮に米国の下院が対日非難決議を可決することがあっても「それで直ちに日本が謝罪することにはつながらない」と答弁している。つまり、本件で謝罪するつもりはない、ということである。

 それに対してシーファー米駐日大使は「そういう歴史認識を持っているのであれば、重大な問題を引き起こす」と心配する発言をしている。安倍首相や彼の仲間たちが、こういう国際的に非常識な発言を止めない限り、どんどん大きな問題に発展するだろう。安倍首相は中国との関係改善に尽力し、それはわたしも一定の評価を与えている。しかし、これをきっかけに米国との関係がこじれ、すべてご破算になるかもしれない。

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