現在位置:asahi.com>文化・芸能>コラム>小原篤のアニマゲ丼> 記事 オタクには年齢も国境もない2008年02月11日 今年もベルリン映画祭が始まりました。私も映画担当記者として過去3回赴きました。冬のベルリンは寒く、いつも曇り空(ときどき雪)。朝から夜まで映画を見て、合間に取材し、食事は屋台のホットドッグ(焼いたソーセージ+モソッとしたパン=うまい!)ですませ、取材がない時はカフェで本や資料を読み、ホテルに帰ったらビールやワイン(スーパーで買った安いの)をぐびぐび飲んで寝ます。
一番思い出深いのは2度目の02年、宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」が最高賞の金熊賞を獲得した時です。グランプリが日本作品というだけでも十分なニュースですが、三大映画祭でアニメが最高賞を獲ったのは史上初で、それが国民的人気の宮崎アニメというんですからそりゃもう大騒ぎ。おかげで記者人生2度目の1面トップを書くことができました 。まさか自分が取材に行った映画祭でアニメがグランプリとは。しかも、中学・高校のころ名画座巡りをして年に3、4回くらい見ていた「ルパン三世 カリオストロの城」の宮崎監督作品とは。ちなみに、最初に書いた1面トップもアニメの記事でしたが、その話はいずれまた。 さて、そんな驚きの受賞結果を迎えるとはまだ知らぬ私は02年2月9日(土)夜、ベルリン映画祭メーン会場前の広場にて、「千と千尋」の公式上映を見終わって出てくる人々の中にいました。上映は10時半からでしたので、実はすでに10日(日)未明なのですが、広場はたくさんの人でごった返しています。目的は一般の観客の反応を取材すること。いい加減な英語で話しかけると、何人かが答えてくれました。「たくさん出てくる神様やお化けの姿が変わっていて、楽しい」「千尋が、内に秘めたパワーを発揮するところに感動した」 次は……私は広場の人混みをじーっと見つめました。どこかにいるに違いない。どこだ? 「見える、私にも見えるぞ」(心の中の声) 十数人の若者グループに目をつけた私はすすすっと歩み寄り、話しかけました。 「日本から来た記者ですが、感想を聞かせてくれませんか?」 その中の数人がニッコリ笑って言いました。「ニホンゴ、デキマス」。ビンゴ! 期待通り、アニメファンの集団でした。キャラクターTシャツやコスプレをしていたわけではありませんが、そこはそれ、こっちも「同類」ですから何となく分かるものです。日本のアニメとマンガのファンクラブのメンバーで、会員は450人いると言います。 「これ、私たちの本」と日本語で言うので「あぁ、同人誌ですね」と答えたら、「いいえ、雑誌です!」と英語で怒られてしまいました。英語にときおり日本語を交ぜ、取材を進めることに。 編集を担当しているというその男性に「千と千尋」の感想を聞くと「始まりは面白いが、終わりはただ出来事が続いていくだけでクライマックスがない。普通の観客にはつまらないかもしれない」。語ってくれます。 別の男性は「『もののけ姫』は最初、ドイツのメディアに『無意味な殺戮(さつりく)』と言われたんだ。その後、称賛されるようになったけどね」。 10代くらいに見える女の子(深夜に出歩いていいのか?)に「どのキャラクターが好き?」と訪ねると、ちょっと恥ずかしそうにはにかんで「ハクが好き」。隣の子も「ハク!」。反応が日本と変わりませんなあ。 「好きなマンガは?」 「ドラゴンボールが好き」「井上雄彦」「CLAMP! とてもグレート」「私もCLAMP!」 「去年の10月、CLAMPにインタビューしたよ。『X―エックス―』の話を聞いた」 「本当? どんな結末になるのかなあ」 「取材した時は、かなり終わりが近いって言ってた」 「いつ終わるって?」 「さあ…。テレビアニメになったんだよ」 「知ってる!」「面白い?」 「いい出来なんじゃないかな」 小雪もちらつく深夜のベルリンの路上にて、取材はいつの間にかただのオタクトークに。オタクには年齢も国境も関係ありません。 プロフィール
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