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社説天声人語

天声人語

2008年02月18日(月曜日)付

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 きのうの東京マラソンを皇居北のお堀端で見た。配られた読売新聞の小旗を毎日新聞本社前で振ることになった。後から来る走者ほど笑顔が目立つ。ウサギ、カエル、ウシのかぶり物、力士の着ぐるみもいた。競走とお祭りが、同じ道をゆく▼銀座に先回りして先頭集団を待つ間、この催しの魅力は都心の車道を走る「非日常感」だろうと納得した。行く手には車のない清潔な道が延び、歩道から見上げるのとは違う左右対称の空が広がる▼初回の去年より6万人多い15万人超が申し込んだという。博報堂生活総合研究所の嶋本達嗣さんは、本紙で「他者と適度な距離感を保ちつつも、ゆるやかな連帯を味わえる」と人気の背景を分析していた▼参加できた約3万人は、3万の思いを胸に走った。障害や病気を乗り越えた「証し」を求める人がいた。知り合いに雄姿を見せたい人もいただろう。そして、走ることの幸せが皆の背中を押していた▼五大陸を走破したフランス人、セルジュ・ジラールさんに聞いたことがある。走行中は脳がさえるので、計算を楽しむそうだ。女性ランナーの草分け、ゴーマン美智子さんは「レース翌日に暖かく着込んで、ゆっくりゆっくり走る時が最高」と語っている▼銀座から地下鉄に乗り、勝者のゴールは自宅のテレビで見届けた。道路網といい交通機関といい、東京は恵まれている。足と小銭を生かせる街ともいえる。青空のおまけもついた一日を振り返り、思った。都心に車のない、歩いてよし走ってよしの日がもっとあっていい。

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