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2008年2月18日

◎就業体験研究会 人材の地元定着促す仕組みを

 石川県産業創出支援機構が県内のものづくり企業や高等教育機関と設立する「インター ンシップ研究会」に期待したいのは、人材の地元定着を促す戦略的な仕組みづくりである。

 インターシップは学校教育の一環として学生の職業意識、実社会の適応能力などを身に つける狙いで一九九〇年代から本格的に始まったが、理系人材の争奪戦が激しさを増す中、企業にとっては人材確保の手段として重視する傾向が強まってきた。人材の地元定着を図るには「体験型」のような教育的側面のみならず、産学が人材養成で手を携えるという大きな視点がいる。学生、教育機関、企業それぞれが負担を感じず、利点を享受できるようなプログラムを開発してほしい。

 県内の昨年十二月の有効求人倍率を職業別でみると、ものづくり企業の求人を示す「専 門的・技術的職業」は二・九五倍で、平均の一・三五倍を大幅に上回った。こうした傾向は全国的なもので、団塊世代の大量退職や、それに伴う県外大手メーカーの大量採用、若者の理系離れなどを背景に、地元中小企業の採用難が深刻化し、たとえ優れた技術を持っていても知名度の点で苦戦を強いられている現実がある。

 県産業創出支援機構が設立する研究会は、金大工学部、北陸先端科技大学院大、金沢工 大、石川高専、金沢高専のインターンシップ担当者や参加希望企業で構成される。ものづくり企業の中には実習ノウハウが乏しく、指導する人材も含めて受け皿が整わずに学生受け入れに二の足を踏むケースもあるとみられる。先進的な取り組みをしている企業があればプログラムを蓄積し、研究会の中でモデルとして確立させてほしい。企業と教育現場が率直に意見を出し合い、お互いの要望を近づける場として研究会が機能していけば人材養成の一貫性も生まれてくるだろう。

 石川県内では企業と大学、高専の産学連携が活発化しているが、人材育成を通して接点 を拡大することで、教育現場なら新たな学習テーマ、企業ならビジネス創出や開発のヒントにつながるかもしれない。この地域にふさわしい双方向のインターンシップ制度を定着させ、人材流出に歯止めをかけたい。

◎官邸の情報機能強化 諜報活動をタブー視せず

 政府の検討会議が、安全保障に関する首相官邸の情報機能強化策をまとめた。内閣情報 調査室に情報分析官を新設するのが目玉で、安倍晋三前首相が意欲をみせていた日本版CIAの設置など抜本的な組織改革は見送られた。しかし、検討会議が指摘する通り、国際テロや大量破壊兵器の拡散、北朝鮮の核・ミサイル問題など国民の安全にかかわる情報収集は喫緊の課題であり、引き続き情報機能の強化策を検討してもらいたい。

 戦後日本では諜報活動がタブー視され、今もはばかる空気が残っているが、国際社会で は、国家存立のためインテリジェンス(諜報・情報)活動は当たり前とされ、その能力が強化されている。政府の情報の中枢である内閣情報調査室の職員が、在日ロシア大使館員に現金をもらって内政情報を漏らしていた事件は、諸外国が行っている諜報活動の一端と、諜報や防諜に関する日本の鈍感さを示すものである。

 こうした事件を教訓に、情報漏えい防止策の強化が指摘され、秘密保全の新法が検討さ れることになった。守りの強化は当然としても、翻って日本政府は対外情報の収集をどれくらい積極的に行っているか。インテリジェンス活動は「必要な毒」とも言われるが、そうした冷徹な認識に立って対外情報機能をもっと強化する必要があろう。

 自民党は一昨年、国家の情報機能強化に関する提言の中で、対外情報業務に特化した情 報機関を内閣情報調査室に新設し、その道のプロを養成するよう求めた。検討に値する提言である。

 情報機能に関して指摘されるのは、収集力の強化とともに、情報を的確に分析、評価し て迅速に首相官邸に伝える能力の重要性である。日本では外務省や防衛省、公安調査庁などが情報活動を行っているが、それぞれに縄張り意識がぬぐえず、情報の共有化がうまくできていないという。今回の情報機能強化策で内閣情報分析官を新設し、分析官が作成した「情報評価書」を合同情報会議にかけて首相に伝えるシステムにするのは、縦割りの弊害に対応するためである。新年度に設けられる情報分析官と新しい仕組みを狙い通りに機能させてもらいたい。


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