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東京―大阪間は飛行機?新幹線? 値下げで「消耗戦」

2008年02月17日10時00分

 東京―大阪間の旅客を奪い合う空と陸の値下げ合戦が激しさを増している。割安なネット予約と新型車両の導入で優勢な新幹線に対し、大手航空2社も割引運賃の値下げで反撃する。新興航空会社の攻勢も受け、自ら収益を削る「背水の陣」。原油高で物価の上昇傾向が続く中、利用者にはありがたい「消耗戦」が続きそうだ。

 「東京―大阪、1時間10分で、なんと11000円〜。ヒコーキ以外じゃ、こうはいかない」

 全日本空輸が値下げの広告に使っているコピーだ。新幹線への対抗意識が強くにじむ。

 同社と日本航空は1月上旬から、大阪(伊丹)、関西、神戸の3空港と東京を結ぶ路線の割引運賃を値下げした。全日空の場合、搭乗前日までに予約する「特割」が1万4000〜1万1000円。最高で約2000円安くした。日航もほぼ同水準だ。

 全日空幹部は「新幹線のぞみの料金が念頭にあった」と認める。東京―新大阪間ののぞみは1万4050円、インターネット予約なら1万3200円だ。旅客の大半を占める「浮動層」は、安さで交通機関を選ぶ傾向が強く、「値段で負けるわけにはいかなかった」。

 原油高の影響で、両社は4月から普通運賃を9%値上げして2万2500円にする。それでも、客の8割が利用する各種割引運賃は据え置いた。

 1日平均6.7万人が動く東京―大阪間は、JR、航空ともに譲れぬ「ドル箱」だ。90年代後半にまず攻めたのは航空各社。値下げと増便で、16対84(95年度)だった対新幹線シェアを35対65(05年度)に高めた。

 だが、03年10月の新幹線品川駅開業を境に、JRが激しく巻き返す。のぞみの本数を大幅に増やし、ネット予約を現行水準に値下げした。

 昨年7月に投入し、1日30本が走るN700系も座席の快適性や、所要時間を5分縮めた速さが好評で、7〜12月ののぞみ利用者は3〜5%の連続増。JR東海は今年3月末から始めるICカードで東京―新大阪間を1万3000円に値下げする。

 大手航空2社はここ数年、原油高に苦しみ、値下げに慎重だった。だが、06年2月からスカイマークが神戸―東京間、07年9月にスターフライヤーが関西―東京間に参入。1万円前後の割安運賃を打ち出し、搭乗率はともに平均約80%と好調に推移している。

 あおりを受けた全日空、日航両社の大阪、関西―東京間の旅客数は昨年9月以降、6〜12%の大幅な前年割れ。新興2社が80〜90%の搭乗率だった年末年始も大手2社は60%程度と振るわず、これ以上の客離れを食い止める必要に迫られた。

 ただ、原油高に歯止めがかからない現状で値下げは両刃(もろは)の剣だ。日航幹部は「本当はここまで運賃を下げたくなかった。搭乗率が劇的に高まらないと苦しい」と漏らす。

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