日本と韓国の大学生が両国間の歴史や交流を伝える遺構、施設を一緒に訪れながら意見を交わす「東アジア大学生平和・人権キャンプ」が、20日から25日まで福岡、佐賀、長崎3県で開かれる。九州で初の開催となる今回は、朝鮮人強制連行など“負の歴史”に光を当てる。関係者は「海峡を挟んで朝鮮半島と深い結び付きがある九州の現場に学び、新しい日韓関係をつくり出す契機にしたい」と意欲を示している。

 同キャンプは立命館大(京都市)や韓国のソウル大(ソウル市)、全南大(光州市)などが中心となり、2002年から日韓で交互に開催。12回目の今回は立命館アジア太平洋大(APU、大分県別府市)の学生たちが主催し、北九州市立大を含む14大学の64人が参加する。

 日本の国策の下、朝鮮半島出身者が被った強制連行・強制労働問題がメーンテーマ。21日には、福岡県の筑豊炭鉱をはじめ、全国の連行の実態を記録した写真約450点を展示する北九州市小倉北区の在日人権資料センターや、犠牲者を追悼する同県飯塚市の無窮花(ムグンファ)堂を視察する。

 同センターでは、写真の提供者で、この問題を30年以上取材している作家林えいだい氏(74)=同県田川市=から話を聞く。「日本国内に強制連行を否定する動きがある。何が歴史の実相なのかを若い目で見極めてほしい」。林氏は出会いを心待ちにしている。

 一行は、九州朝鮮中高級学校(北九州市八幡西区、22日)▽朝鮮人被爆者問題の掘り起こしに努めた故岡正治牧師の活動を紹介する「岡まさはる記念長崎平和資料館」(長崎市、23日)▽豊臣秀吉による朝鮮出兵の拠点となった名護屋城跡(佐賀県唐津市、24日)‐なども訪問。同宿し、視察の感想や今後の日韓関係を見据えた意見をぶつけ合う。

 実行委員会代表のAPU2年、有馬理紗さん(20)は「自分にない考えを互いに吸収し、日韓の溝を少しでも埋めるよう行動を始めるきっかけにしたい」と話している。

=2008/02/16付 西日本新聞夕刊=