◇知事「攻めと守りに腐心」
県は15日、5902億500万円の08年度一般会計当初予算案を発表した。前年度当初は知事選を控えた骨格予算だったため、肉付け後の7月現計予算と比較すると0・2%減。歳入は、主要財源の落ち込みを貯金の取り崩しと借金で埋め合わせする構図で、県は「持続可能な財政基盤の構築は道半ば」と自己分析した。歳出では、新規事業136件(前年度147件)を盛り込んだほか、縦割り行政を是正するため新設した部局連携事業116件に129億円を計上した。広瀬勝貞知事は会見で「人口減少社会の中で、その影響を緩和する『攻め』、現状の町村部対策などへの『守り』に腐心した」と述べた。予算案は道路特定財源の暫定税率が維持される前提で編成。廃止されれば61億円の下方修正が必要で、道路関係予算は執行留保され、年度途中に減額修正される。【梅山崇、小畑英介】
◇医師不足問題、定着図る施策満載
医師の都市部への偏りを解消しようと新年度、「医師の卵」が臨床研修後の「後期研修」(3年間)を大分、別府市以外の病院で受ける気にさせる仕掛けを考える。小児科医、産婦人科医が対象。研修とはいえ診察に携わるため、地方医療の「戦力」に組み込む。
大分大医学部に委託する3年がかりの研究で、新年度は2707万円を計上。同大から「へき地医療拠点病院」(12カ所)に後期研修医を派遣、仕掛け開発のヒントを集める。
こうした後期研修を受ける医師への研修資金貸与(月15万円)の対象を13人(今年度)から18人に拡大。研修後、1年以上県内で働けば返済は免除する。
また、地域中核病院に2年以上勤めた医師には、国内外での診療技術習得の研修中も給料を保証する制度(県が半額助成)を創設。5人の利用を見込み、研修後1年以上元の病院で働けば返済は免除する。
更に、社会人から大分大医学部に編入する県内出身者には、入学金、授業料に加え、月15万円を貸与。卒業後7年間の県内勤務で返済を免除する。
これら三つの貸与・助成制度の予算を、前年度の1568万円から5334万円に積み増した。
看護師、助産師の確保も急務のため、1年で1割近くが辞めるとされる新人看護師へのカウンセリングを始め、将来の看護師発掘のため小中学校で看護に関する授業を始める。予算は967万円。
助産師増強は、09年度に助産師学科新設を計画する藤華医療技術専門学校(豊後大野市三重町)に施設整備費として2413万円を助成する。【梅山崇】
◇自動車産業参入促進、PTで地元企業支援
自動車関連産業新規参入促進事業に1867万円を計上した。
県の要請で、ダイハツ九州(中津市)から県産業創造機構に1人派遣されている現役技術者に加え、新年度さらに同社の1人を迎え、プロジェクトチーム(PT)を結成。参入を目指す地場企業への助言や、発注者との仲介をする。「県内の関連企業は実力をつけているが、受注はまだまだの状態」(県工業振興課)といい、PTの現役社員らに企業側のニーズを伝えたり、人脈を構築してもらったりして受注につなげる狙い。3年間の予定。【小畑英介】
◇30人学級制、公立中1年全校で
県内全公立中1年で30人学級制を新たに導入する。60校で80学級が増加する見込み。教員の人件費1億5864万9000円を計上した。
分割することで20人を割り込むことは認められておらず、40人近い学級がそのまま続くことはあり得る。
小学校と比べて同級生の増加や生活環境の変化、思春期の心身の成長などに伴い、いじめ、不登校などの把握件数が小6から中1になると急激に増える「中1ギャップ」が背景にある。
1学級の人数にゆとりを持たせることで生徒の気持ちにも余裕が生まれ、教師もきめ細やかな対応が可能になり、学力向上にもつながる、との狙い。
福島、福井両県が中1での30人学級を導入。それ以外に40人未満(35など)の少人数学級編成をしているのは8県。本県は04年度から小学1年、06年度から同2年に拡大導入している。同年度の30人学級の担任アンケートでも、学習や身の回りのことにきちんと取り組むようになったとの結果が出ている。【大島祥平】
毎日新聞 2008年2月16日