◎優良町家認定 「格付け」を保存の動機付けに
金沢市は新年度から実施する金澤町家の利用活性化基本計画の中に、歴史的に価値の高
い町家を「優良町家」として認定する制度の創設を盛り込む。同市内の町家のいわば「格付け」とも言え、市民が町家の魅力を再認識し、維持保存の動機付けを高めるために生かしたい。
一般に「金澤町家」と呼ばれる建物は、一九五〇(昭和二十五)年以前に建てられた木
造住宅を対象とし、該当するのは約八千七百棟である。だが、これまでこの基準以外に明確な価値の区分けは設けられておらず、江戸末期から残る幅広い時代層の木造住宅をひとくくりにしている印象が強かった。
町家の所有者や居住者も、その建物が伝統の町家であると意識せずに住んでいる場合が
少なくないと見られる。そうした認識の薄さもあってか、ここ八年ほどで約二千二百棟が取り壊されている。そんな現状を考えれば、保存の優先順位を明確にし、所有者に歴史的価値を認識してもらうという観点からも、分かりやすいランク付けは必要であろう。
優良町家は、金澤町家活性化懇話会の提言に折り込まれたもので、認定証が交付されプ
レートも掲示される。認定の基礎資料として、外観調査も実施するようだ。町家の中で文化財的価値の高いものは、こまちなみ条例などで保存建造物になっている建物もあるが、優良町家については、市民らに幅広く町家の価値を認知してもらい保存を促すという意味から、従来の保存建造物の選定より、基準を緩やかにすることも検討されていいだろう。
最近では、町家に耐震補強やオール電化などの高機能を付加し、伝統の装いをまとった
新しい住宅、宿泊施設として売り出すといった民間主導の「町家ビジネス」も生まれてきている。
こうした中で金沢市も、新年度に向けて策定する活性化基本計画を基軸に、モデル町家
を選定し、補修整備や新たな活用事業に乗り出す。現存する町家の中には、空き家になっているものが千軒を超えるとも言われる。「使いながら保存する」という意味で、優良町家に認定された建物も、活性化計画の中で新しい用途を提案し、目に見える形で発信していけばどうか。
◎18歳成年 多角的な検討が必要だ
現行の民法は「年齢二十歳をもって、成年とする」と規定している。鳩山邦夫法相がそ
の年齢を引き下げる民法改正の是非を検討するよう法制審議会に諮問した。十八歳を念頭におき、法制審は一年をかけて答申をまとめるそうだ。
が、結論をせく必要はあるまい。この問題では多様な広がりをもって賛否両論があり、
加えてそのいずれにも一長一短があることからすると、専門分野を異にする、いろんな識者による多角的な突っ込んだ検討が不可欠と考えたい。
法相の諮問は昨年五月に成立した国民投票法を受けたものである。すなわち、同法は「
日本国民で年齢満十八年以上の者は、国民投票の投票権を有する」と規定し、付則で二〇一〇年五月の施行までに公選法や民法について「検討を加え、必要な法制上の措置を講ずる」と見直しを明記しているのだ。
しかし、何歳をもって成年年齢とするかの物差しは単純でない。米国の多くの州、英国
、フランス、ドイツなど欧米諸国が成年年齢を十八歳以上と定めており、選挙権年齢も同じにしていることを世界の潮流とみなしたり、十八歳の約七割が親に扶養されている日本の現実を逆手に取って若者の自覚を促し責任を持たせる効果に期待したりして法制上の統一を求める賛成論はそれなりに理解できるのだが、そうでない国も少なくないのである。
韓国やニュージーランド、タイなどの成年年齢は二十歳以上だが、選挙権年齢となると
、韓国は十九歳以上、ニュージーランドとタイは十八歳以上だ。一様に成年は何歳からだと仕切ることに疑問を持つ法律家もいる。事柄によって前倒しできるものもあるし、できないものもある。事柄に応じて成年年齢が違ってもよしとする考え方もあるのだ。はやい話が、十八歳を成年とすることに統一し、喫煙も飲酒もOKだなどとするのは一面的にすぎるのだ。
進歩が著しい脳科学の最新の成果の一つとして、人間関係などにも配慮し、分別のある
判断を下す、そうした働きをする脳の領域の発達の完成は二十歳すぎとの説もある。いろんな分野の専門家が見解を出し合う場で検討ができないものか。