過去放送内容


#284 隠し事・ウソ スペシャル

ゲスト:田丸麻紀 安田美沙子 里田まい 田宮榮一

これぞでっちあげ

次回予告
これぞでっちあげ/家族を騙した偉大な父














1988年2月、オーストラリア・シドニー空港は多くの報道陣であふれていた。メディアが注目していたのはアメリカからやって来たホセという青年。白い服に身を包んだこの若者、一体何者なのか?

実はこの数日前、オーストラリアの大手新聞社に『アメリカの19歳の青年、ホセ・アレバレズには、「カルロス」という古代の神聖な魂が宿っており、ホセはその「カルロス」と交信して様々な予言をする』という内容の郵便物が届けられた。霊能者ホセの経歴や実績が書かれた内容の本と共に同封されていたビデオテープには、ニューヨークのブロードウェイ劇場で公演を行うホセの姿が映っていた。観客を魅了するホセ、客席からはスタンディング・オベーション。そんな人物が、今度はオーストラリアを訪れ、オペラハウスで霊能力を公開するという。新聞社もテレビ局もアメリカから来る大物の霊能者にすぐに飛びついた。

こうして、シドニーに降り立ったホセ・アレバレズは多くの報道陣に迎えられ、到着後すぐに共同記者会見が開かれた。そしてあるテレビ局でホセの独占インタビューが放送される事になった。彼が交信する「カルロス」という男の霊は、これまで170回生まれ変わりを繰り返し、世の中を見て来た2000歳の魂。それが乗り移ると、何とその場でリポーターの身近な不幸を言い当てた。他のテレビ局もすぐさまホセの特集を組み、何と彼は立て続けに8本の番組に出演した。こうしてホセの名は、オーストラリアでも知られ、期待は高まり、メディアはますます過熱した。

そして何とチャンネル9でも特集が組まれることになった。しかしそこでは、ホセに疑いの目で質問をしてくる司会者に、マネージャーが激怒、水をかけ、生放送中にホセたちは帰ってしまった。このハプニングは、マスコミにセンセーションを巻き起こした。もちろん一般の人たちもホセに注目し始め、彼は一躍時の人となった。そしてオペラハウスでの公開霊媒の日、本物をこの目で見ようと会場は超満員となった。ホセは聴衆の前で「カルロス」となり、交信を始めた。カルロスの霊(ホセ)は、数々の質問に答え、イベントは大成功に終わり、会場にいた人々は口を揃えてホセを賞賛した。

ところが、一週間後、国民驚愕の事実が明らかとなる!チャンネル9の人気報道番組“60ミニッツ”が霊能者ホセの真実の姿を放送したのだ。その内容とは…
何とホセは、アメリカで有名なマジシャンであるジェームズに、霊能者になるべく訓練を受けていたのだ。そう、これはとんでもないインチキだった!一体何のためにそんなことをしたのか?実はこの数ヶ月前、“60ミニッツ”のプロデューサーがある企画を提案したのだった。それは「大衆やメディアがいかに騙されやすいかを証明するために、偽の霊能者を仕立てよう」というもの。もちろん、メディアに配った資料のプロフィールもビデオも全て作り物。プロデューサーの企画説明にマジシャン・ジェームズが賛同し、たまたま遊びに来ていた友人のホセに声をかけ『霊能者』を演じてもらったのだった。

ホセが人前に出る時は、ホセの耳に小型の受信機を付けさせ、受け答えは全てジェームズが行っていた。またあの司会者への水かけ騒動も、“60ミニッツ”と同じ番組。念入りなリハーサルをし、同じ局の番組すら騙したのだ。この事実にメディアは仰天した。番組“60ミニッツ”に非難が集中したが、これに対しジェームズは「アメリカに1本確認の電話をすれば全てが嘘だとすぐに分かるような簡単なウソ。でも誰一人として確認をしなかった。騙されるマスコミも非難されるべき」と反論した。そもそも報道する上で、裏を取らなかったことに問題があると主張。

しかしこの“60ミニッツ”が莫大な金額をかけたこの企画、結果、チャンネル9の報道局長はクビとなった。騒動から20年経った今、この教訓は生かされているだろうか?この出来事は、大衆やマスコミがいかに騙されやすいか、という警鐘を鳴らすものとなった。
NEXT