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【滋賀】

医師不足、患者減の悪循環 東近江の2市立病院

2008年2月17日

 合併により2つの市立病院を管理する東近江市は、両病院とも常勤医師がこの2、3年でそれぞれ3−4人辞めているほか、患者数が減り経営が悪化している。市は内外の病院医療関係者らで市立病院等整備委員会を立ち上げ、医療体制の方向性を協議しているが打開策は見えてこない。地域医療を守りたい、との使命感は、増える医療赤字でぐらついている。 (前嶋英則)

 関連の市立病院は能登川病院(同市猪子町)と蒲生病院(同市桜川西町)。いずれも病床数百二十の中小病院で、二〇〇六年度の病床利用率は能登川病院が70・2%、蒲生病院が58・6%と低迷しており、同年度の両病院の赤字は計二億一千万円に達している。

 ことし一月二十八日に開かれた「市立病院等整備委員会」の第一回会合。能登川病院の中條忍院長は「医師不足が深刻で、医師から退職願が出されないか毎日、心配している」と話し「数字は赤字だが、病院が地域にどれだけ貢献しているかも分かってほしい」と訴えた。蒲生病院の加藤正人院長は「整形外科医が二人辞め、困っている。医師が減れば経営を圧迫する」と苦しい胸の内を述べた。

 両院長が指摘した医師不足は医療制度改革「新医師臨床研修制度」によるところが大きい。市によれば、これまで大学を卒業した医師の多くは出身大学の付属病院に就職して二年間の研修を受け、三年目に教授の指示で地方の公立病院などに派遣されていたことから、医師の確保に頭を痛めることはなかった。

 しかし、改革により医師が研修先を自由に選べるようになり状況は一変した。大学病院で研修する医師が減ったことで地方に派遣できなくなり、これまで派遣していた医師を公立病院などから引き揚げる事態に。能登川病院は現在、常勤医師は十四人から十人、蒲生病院は十三人から十人になり、さらに減る可能性もあるという。

 「四年前までは赤字も少なく、経営は安定していたが、医師が辞め患者が減る悪循環になり大幅な赤字になった」と病院関係者は嘆く。

 同整備委員会は二病院の経営統合や病床数の見直し、市内の他病院との連携などを協議し、今秋までに医療体制を整備したいとしている。中村功一市長は「二つの病院をどのような形で存続、整備していくのが望ましいか、意見をいただきたい」と協議の成り行きを見守っている。

 蒲生病院周辺地域には開業医は一カ所しかなく、病院は一次医療(外来)も担っている。一方、能登川病院周辺地域には開業医が十一カ所あり、一次医療の開業医と二次医療(入院)の病院とが役割を分担して地域医療を守っており、中條院長は「なくすわけにはいかない」と語気を強めた。

 小鳥輝男委員長(東近江医師会長)は「最大公約数的な福祉を目指し、地域住民も当事者意識を持ってほしい。我田引水になっては困る」と苦言を呈す。国内各地で多くの自治体病院が赤字に苦しんでいる中、将来を見据えた手だてとともに、地域医療のあり方について市民と議論をする場を設けることも重要だ。

 

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