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通販事業は、
なぜ貧乏くさいのか。

中村 修治
有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役社長
中村 修治/販売/マーケティング
3.0
238
2008年2月17日 01:51

ダイレクトマーケティングシリーズ、その2です。

ジャパネットたかたのテレビの下取りキャンペーンは魅力的だっ。32型のハイビジョン液晶テレビが、TV台付きで208,000円。古いテレビの下取りを40,000円なので、実質168,000円。消費者心理に、ずっきゅーーーんである。

買い換え促進の一番大きな障壁は、「お金がない=経済的理由」ではない。「まだ使える=心理的理由」である。お客様の「もったいないやん」の壁を、いかに乗り越えるかが大きな問題なのだ。特に、戦前、戦後の激動の時期を過ごした世代の、その意識の壁は大きいっ。一番、お金を保有している世代の消費促進に、「もったいない」は、避けて通れないっ。

ジャパネットの高田さんは、この世代の心理をよくわかってらっしゃる気がする。ややこしいスペックよりも、「下取り」なのである。佐世保なまりの話し方は、「この人なら、まだ使えるテレビをなんとかしてくれるやろ」と安心感を与える。「もったいないけどしゃーないな」と思わせてくれる。贅沢を礼賛しないところに、ジャパネットたかたの「商い」の本質があるように思う。

「贅沢は素敵」だ。しかし、通販ビジネスにおいては、「贅沢は敵」である。未だに、高額消費のカタログショッピングは、一部にしか普及していない。言い方に語弊はあると思うが、大概の通販は、未だ「貧乏くさい」。かっこいいより、未だ「一生懸命」。戦後復興の時代の「商い」のようで面白い。時代は、常に原点回帰をしながら一歩ずつ進化する。これも、ヘーゲルの言うところの螺旋的発展の法則だろうか・・・。

断言はできないが・・・時代がいかに発展しようとも、「贅沢礼賛」の通販ビジネスは成立しないと考える。何故なら、ヒトは本当の贅沢をしたいとき「自らが物理的障壁を乗り越えてその幸せを享受しにいく」ものだから。そもそも、物理的距離の障壁を取り除くことが発展の基盤である通販に、ヒトは本当の贅沢を求めることができないから。

だから、ジャパネットたかたのように・・・通販ビジネスには、「心理的距離を縮める努力」が欠かせないのだ。「小さな心の贅沢」をいかに与え続けられるかが、今後さらに、通販ビジネスの成否の鍵になると思うっ。

通販事業に参入しようという大手メーカーに限って、失敗する。
広告費の使い方は、「もったいない」。
その在庫の山は、「もったいない」。
お客様を、そんな簡単に扱って、「もったいない」。
その人材を、そんなに簡単に見切って、「もったいない」。
成長産業だから仕方ないが・・・あああっ、もったいないっ。

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