というわけで、今年読んだライトノベルの個人ランキングでも発表してみようかと。
対象は今年発売された作品ね。
シリーズものの場合は、1巻に当たるものが今年発売されていることが条件。
(なので、1巻は昨年発売の「灼眼のシャナ」などは対象外)
とりあえず、10位から~
10位 しずるさんと偏屈な死者たち
富士見ミステリー文庫の上遠野浩平氏の作品。
ぶっちゃけ、そんなに面白いってわけでもないんですけど、やっぱり上遠野氏の文章は安定感があるというか。
安心して読めるのも事実。
一応、ミステリーというジャンルになってますけど、本質は「ブギーポップ」とかと変わらない気がします。
9位 キーリ
電撃文庫、壁井ユカコさんの作品。
今年の電撃大賞の<大賞>受賞作、だったかな。
大賞ってことを意識しすぎると、やや期待外れな出来に感じるけど。
普通に上手くまとまってる、それなりに面白い作品。
……どうしても、褒める点が見つけづらい作品なので、辛口評価になってますけど。
誰が読んでもそれなりに面白く感じられるということは、それだけ万人向けってことだろう。
まぁ、だからこそ、ピンポイントでターゲット(読者層)を絞ってる作品と比べるとどうしても評価は上になりづらい、かなぁ。
世界観とかは嫌いじゃないんですけど、もう一押し欲しいなぁ、という印象。
8位 ムシウタ
角川スニーカー文庫、岩井恭平氏の作品。
デビューは去年の12月の「消閑の挑戦者」で、あと1ヶ月遅ければ、こっちもベスト10に入ったはず(苦笑)
まぁ、そっちは置いといて「ムシウタ」です。
人間に寄生して特殊な能力が使えるように、って設定は渡瀬草一郎氏の「パラサイトムーン」なんかに近いね。
まぁ、あっちよりもマイナスイメージの方が強めだけど。
キャラの心情とかの描写は上手いんですけど、もうちょっとインパクトが欲しいかな。
というか、自分、まだ2巻読んでないんですけど(爆死)
2巻の内容次第では、更に上に行く可能性もあるってことで。
7位 12月のベロニカ
富士見ファンタジア文庫、貴子潤一郎氏の作品。
富士見の大賞受賞作、かな。
これも例に漏れず、大賞ってことを意識すると、そこまで面白い話じゃないんだけど。
この作品の魅力はやっぱり、そのトリックだと思うんですよね。
ジャンル的にはファンタジーで、騎士である主人公がヒロインを助けながら、敵と戦ったりと、いわゆる王道路線っぽい感じで。
そこに、ミステリー小説などでよく見かけるトリックを利用することで、読者にミスリーディングさせて、終盤に種明かし的なものがあるのがファンタジーっぽくなくて新鮮。
ぶっちゃけ、トリック自体は有名なもので、だからそういうのに慣れてる人が読めば、すぐに「あぁ、そういうことか」って気づいちゃうレベルだと思うんですよね。
重要なのは、ファンタジー物というジャンルの中でこういうトリックを利用した点。
この作家さんの真価が問われるのは2作目だと思うわけですよ。
次回は同じようなことしても、単なる二番煎じになると思うし。
6位 マルドゥック・スクランブル
ハヤカワ文庫JA、冲方丁氏の作品。
全3巻構成で、まだ1巻しか読んでないんですけど、期待度も込めてこの順位。
とりあえず、世界観の構築が絶妙。
近未来っていうのかね、それでいて、妙に古めかしい部分もあったりで。
状況説明的な文章がそれほど多くないにも関わらず、その場面を頭の中で浮かべられるのは純粋に「上手い文章」なんだなぁ、って思います。
キャラも魅力的です。
主人公は事故死に見せかけて殺されそうになった一人の少女。
瀕死の彼女を救うために、現在では使用が(通常は)禁止されている技術を使って。
その結果、電子的にあらゆるものに干渉できる身体を手に入れて。
パートナーとなる一匹のネズミと共に、襲い掛かってくる奴らを返り討ちにしていく。
ってのが1巻の簡単なあらすじ。
とりあえず、主人公の少女が色んな意味で最高なのですよ。
その生い立ちも生半可なものじゃないし。
ニトロプラスの「ファントム」や「鬼哭街」が好きな人はかなりの確立でハマるかと思います。
5位 シャープ・エッジ
電撃文庫、坂入慎一氏の作品。
電撃の何かの賞を受賞した作品、だったかと思う。
1・2巻の時点ではそこそこ面白い佳作って感じでしたが。
3巻で一気にブレイク。
やってることはそんなに差異はないんですけど、描写の仕方が3巻は圧倒的に分かりやすい。
なので、1・2巻読んで、理解できなかった部分が上手く補完されるというか。
とりあえず、戦闘シーンは飾りなのですよ。
まぁ、それも要素の一つではあるけれど、メインではない。
そこに気づかないと、「戦闘シーンがつまらん」とか「カナメが強すぎ」みたいな意見になってしまう。
微妙に読み手を選ぶ作品な気がします。
4位 学校を出よう!
電撃文庫、谷川流氏の作品。
1巻は、「涼宮ハルヒの憂鬱」同様に全然面白くなくて、購入回避作家に入れるか?とか思ったりもしたのですが。
2巻で一気に化けました。
こういう時間軸を動かしたりする作品には激しく弱いんですよね……
「途中でネタが分かった」って人もいたりするんですけどね。
自分は最後までどうなるのか分からなかったので、純粋に楽しめました。
3巻も2巻ほどではないにしろ、標準以上の出来でしたし。
何より、文章が素人目に分かるくらい読みやすくなってるのはポイント高し。
1巻の文章は読みづらさでは自分が読んだライトノベルの中でもワーストクラスだったんですけどね。
たかが、数ヶ月でここまで変われるものなのかと驚きました(苦笑)
1巻だけしか読んでないって人は是非2巻と3巻も読むことをオススメします。
その面白さは1巻の比ではないですから。
3位 シルバー・ウィング
電撃文庫、神野淳一氏の作品。
前作「シルフィ・ナイト」が電撃の大賞の何かを受賞してたはず。
で、その「シルフィ・ナイト」の続編というか、番外編的な内容なわけですが。
「シルフィ・ナイト」読んでなくても一応は読めなくもないかなぁ。
明確な続き物じゃないし、あくまで同じ世界、同じ時間を舞台にしてるだけなので。
何というか、戦争物なんですけど。
中身は極上の恋愛物だったりする(笑)
で、戦争+恋愛っていうと、どうしても悲劇的な結末を想像してしまうわけですけど。
この作品はどっちかって言うと、恋愛に重きを置いてる気がするので、二人ともちゃんと生きてます。
終盤の展開は、涙なくしては続きを読めないっていうか。
ライトノベルでは久々に泣きました。
なんていうか、キャラの心情の描写が凄い丁寧で、主人公とヒロインが少しづつ惹かれていくのが良く分かる。
「シルフィ・ナイト」で足りないと思った部分を見事なまでに補完してる感じ。
今年の電撃の新人作家の中では文句なく一番だと思います。
2位 終わりのクロニクル
電撃文庫、川上稔氏の作品。
なんと言っても、その厚さが凄まじい(笑)
現在、1巻<上>、1巻<下>、2巻<上>、2巻<下>と4冊出ているわけですが。
その4冊で約3000円です。
1冊が薄めの文庫2冊分くらいの厚さで、色んな意味で圧倒的です。
というか、1巻<上>が今年の夏前に発売されて、わずか半年足らずでこのボリュームの本を4冊も出してるというのは、もはや異常と言っていいかと(爆死)
内容も、エロあり、戦闘あり、萌えあり、笑いあり、シリアスありと色々詰め込んであります。
キャラもこれ以上ないってほど、個性的というか、特殊な奴ばかりで。
独自の世界観も凄いですけど、やっぱりそれ以上にキャラが強いなぁ、という印象があります。
2巻になって、個人的には多少大人しくなった感もありますけど、それでも電撃標準レベルを遥かに上回ってるのは確か。
1位 銀盤カレイドスコープ
スーパーダッシュ文庫、海原零氏の作品。
大賞というのは、こういう作品にこそ与えられるべきだというお手本のような作品。
やっぱり、今年の1位はこれしかないです。
2位の「終わりのクロニクル」とは接戦でしたけどね。
新人であるという点と、今までにない面白さという2点でこっちを1位に。
この作品、何が良いって言われると、逆に答えづらくて。
薦める時も「ここが良い」とかじゃなくて、「とにかく良いから読め」としか言えなかったりするんだけど(爆死)
強いて個別に挙げていくならば。
まず、キャラが良い。
キャラというか、主人公が、かな。
これだけ個性的な主人公も珍しいってくらい。
それこそ、「終わりのクロニクル」の主人公と同じ、或いはそれ以上に個性的。
一言で言えば傲慢、なんですけどね。
勿論、ただ傲慢なだけじゃなくて、自らの努力と才能に裏付けられたものであるから、読者としてはそれは不快な要素にはならず、むしろ、清々しくさえある。
あとは、フィギュアスケートというほとんどのライトノベル読んでる人が全然知らないであろう、マイナーと言っていい競技を題材にしてるにも関わらず、その滑ってる様子が容易に想像できてしまう。
ここが一番凄いところ。
動きのあるスポーツというのは、そもそも小説には向かないはずなんですよね。
野球やサッカーやテニスなど、漫画ではよく見かけますけど、小説でこういうスポーツを題材にしてるのはホントに少ないと思います。
フィギュアスケートなんて、野球・サッカー以上に想像しづらい、文章で表しづらいはずなのに、こんなに鮮明に映像が浮かぶ。
その1点だけでも確かにこれは大賞に選ばれて然るべき作品だと思う。
欠点も全くないとは言わないけど、敢えて欠点として上げる必要がある点は皆無。
3巻の発売が予定されてて、多少不安ではあるものの、やっぱりこれだけ面白い作品がまた読めるのかと思うと嬉しくもあり。
とりあえず、期待せずにはいられないです。
というわけで、こんな感じになりましたが。
一応、11位以下も入れて、まとめておきます。
1位 銀盤カレイドスコープ
2位 終わりのクロニクル
3位 シルバー・ウィング
4位 学校を出よう!
5位 シャープ・エッジ
6位 マルドゥック・スクランブル
7位 12月のベロニカ
8位 ムシウタ
9位 キーリ
10位 しずるさんと偏屈な死者たち
11位 Astral
12位 ブラックナイトと薔薇の棘
13位 涼宮ハルヒの憂鬱
14位 撲殺天使ドクロちゃん
15位 護君に女神の祝福を!
別に今年デビューした新人限定なわけじゃないんですけどね(苦笑)
ただ、新人の作品と、既にデビューしてる人の新作だと、前者の方が魅力的に思えてしまうんですよね。
結果、ベスト10の半分以上が新人さんになってます。
自分が好きな作家さんの新作だったら、第一優先で購入するんですけどねー
それと、電撃が圧倒的に多いのは仕様です(爆死)
戦略的なものを含めて、現在のライトノベル業界の中では電撃が2,3歩ぐらい先を行ってる感じしますからね。
スニーカーは経緯はどうあれ、谷川流氏が電撃でも書いてるのが痛すぎ(爆死)
あくまで私的な感想ですけど、「学校を出よう!」>>>(越えられない壁)>>>「涼宮ハルヒの憂鬱」なんで。
看板作家になりうる人が他でも普通に出してると、その作家さん=固有の出版社という風に結びつかないからねぇ。
これがまだ「ハルヒ」の方だけバカ売れしてて、「学校」が全然、だったりするなら。
上遠野浩平=電撃(ブギーポップ)と同じく、代表作のある出版社と結びつくんだが。
富士見はミステリー文庫リニューアルしたり、色々と頑張ってるけど。
良い新人はほとんど出てこないし。
看板作家には他所で新作出されたり。
現時点では一番旨みの少ない出版社になってる気がします(爆死)
ファンタジア文庫の方も、もっと大胆なリニュをしてみるとか。
変革期に差し掛かってるんじゃないかなぁ、とか思ったり。
時間があれば、新作以外のシリーズものの単作でのランキングも作ってみるかも。