「杞憂(きゆう)」も「矛盾」も中国の故事から来た言葉として有名である。空が落ちて来ると無用な心配をしたのが杞憂。何でも刺し通す矛(ほこ)と、すべてを防ぐ盾(たて)だと、二つを並べて売っていた商人が、その矛で盾を突くとどうなると問われたのが矛盾である 昔の笑い話も今は笑ってばかりはいられない。米国の毒性物質を積んだ偵察衛星が空から落ちてくるので米軍が撃墜するという。昨年は中国の人工衛星破壊実験騒ぎもあった。今回も、迎撃ミサイル使用は米軍初の試みで成功率百%ではないとあって、杞憂は杞憂でなくなった 一方、ロシアのプーチン大統領が任期最後の会見で、米のミサイル防衛(MD)計画を批判した。ポーランドなどロシア周辺にMD関連施設を作るなら、ロシアのミサイルは、その東欧諸国に照準を合わすと脅しをかけてきたのである 欧州ミサイル防衛網はイランなど中東からのミサイル攻撃を想定したものとされる。ロシアはそのイランにミサイルや核開発の恐れもある原発施設の開発支援をしている。矛も盾も売りつける商人を笑えた国ではない 矛盾だらけの世に、二十一世紀の杞憂は深まるばかりだ。
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