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「救急」医療機関、名ばかりが3割 医師チーム分析

2008年02月16日03時06分

 全国の救急医療機関の少なくとも3割近くが、救急車の受け入れ台数が1日あたり1台未満で、事実上機能していない「名ばかり救急」となっていることが、日本医大などの救急医チームの分析でわかった。医師不足や救急部門の不採算化が背景にあるとみられ、病院が交代制で地域の救急を担う輪番制度でも、4府県は参加施設の4分の3以上が名前だけの救急だった。専門家からは、救急患者の受け入れ不能が常態化している一因、との指摘も出ている。

 厚生労働省が保管している05年度分の「医療機関ごとの搬送現況調査」などから分析した。救急医療機関としての最低限の条件を「1日1台以上の救急車受け入れ」として、地域の救急の要となっている救急輪番参加施設について調べた。

 05年度、救急車を受け入れる医療機関は全国に4774あった。このうち輪番に参加していたのは3185で、その42.3%にあたる1348施設で当番日あたりの救急車受け入れが1台未満だった。救急医療機関全体では、少なくとも28.2%が事実上、機能していない「名ばかり救急」だったことになる。

 都道府県別では、「当番日あたり1台未満」の医療機関の割合が全体の4分の3以上あったのは、京都、高知、福岡、鹿児島の4府県。

 本来は交代制の輪番制度について当番日数でみると、週1回以下の医療機関は全体の39%。一方で、ほぼ365日担っているとみられる施設は27%あった。入院までの医療に対応できるように決められた全国369カ所の2次医療圏では、実際に機能している救急施設が「まったくない」地域が5%、「1〜3施設」が51%を占め、限られた病院に救急搬送が集中する実態が浮かんだ。

 分析した日本医大高度救命救急センターの近藤久禎医師は「輪番不参加の施設でも1日1台以下のところは多いと考えられるので、看板だけの救急施設の割合はさらに高くなる可能性がある。救急対応ができるところに診療報酬や人的資源を集めた方が効果的だ」と話す。

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 〈救急医療と輪番制度〉 現在の救急医療体制は77年にできた。1次(軽症患者)、2次(入院や手術の必要な患者)、3次(生命の危険がある重篤患者)の症状のレベルに応じた医療機関の整備▽地域の医療機関が交代で夜間・休日をカバーする輪番制度などだ。当時、救急の主な対象は交通事故で、自由診療のため利幅が大きかったが、今は高齢者らの急病が多く、医療費抑制で報酬は増えない。訴訟のリスクなどもあり、経営的理由で救急から撤退する病院が増えたと指摘されている。

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