ここから本文エリア 医師不足、患者は大病院志向で輪番崩壊 救急医療2008年02月16日 救急施設の3割は「看板」だけ――。救急医チームの搬送実態調査から明らかになったのは、多くの地域での「輪番崩壊」だった。救急医不足や不採算に加え、患者の大病院志向も要因に挙げられる。 「名ばかり」施設が全国最多の231カ所にのぼった福岡県。県東南部の京築地区では、20施設による輪番を06年度にやめた。市町村や医師会が現状を調べると、2病院に搬送が集中していたためだ。消防隊員は「当番病院だからと要請しても、先生がいない、と断られた」と明かす。 今も、主にこの2病院へ運ぶ。重い患者は北九州市へ。県担当者は「患者が完全な医療を求めるようになり、大病院に運ぶ傾向が強まった」。 「名ばかり」施設が4分の3を超す高知県でも06年、宿毛市など県西部の18病院による輪番が廃止された。地元消防組合によると、ここも以前から事実上、搬送先は2病院だけだった。 やはり高率だった京都府。京都市内には救急病院が60近くあるが、市消防局は「救命救急センターが付属するなど設備や人員が整った病院だと受け入れてもらいやすい」。別の消防本部の救急隊員も「輪番病院に運ぼうとしても、患者から『心配だから大きい病院へ』と言われたら拒否できない」と漏らす。 一方、福井、宮崎、沖縄各県は輪番参加病院がすべて1日1台以上を受け入れていた。ただ、福井の9病院による輪番制は休日用。平日は輪番不参加を含む41病院が搬送を受け入れることになっているが、結局、9病院に搬送が集中していた。 1次(軽度)から3次(重篤)まで症状のレベルにあわせて医療機関に運ぶ▽輪番制を組んで夜間・休日の地域救急を担う、といった現在の救急医療体制は、77年にできた。当時、救急の主な対象は交通事故で、自由診療のため利幅が大きかったが、今は高齢者らの急病が多く、医療費抑制で報酬は増えない。経営的理由で救急から手をひく病院が増えたとされる。 杉本壽(ひさし)・大阪大大学院教授(救急医学)は「月に何度かの当番で設備や人的態勢を整えるのは経営的にも厳しい。訴訟のリスクもある中で、日中の診療でぎりぎりの医師たちの力をさらに使うのは無理がある。輪番を含め、地域の実情に合うように救急医療体制を見直さなければ、崩壊は避けられない」と指摘する。 PR情報この記事の関連情報関西ニュース
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