ギョーザ事件　あいまい決着では不安は消えぬ

2008年2月16日（土）01:39

　中毒の原因となった有機リン系殺虫剤「メタミドホス」は、なぜ混入したのか。中国製冷凍ギョーザ事件の捜査に、目に見える進展がない。

　日中の警察当局が緊密に連携し、真相を解明することが重要だ。

　中国外務省が「日中合同の調査チームを発足させたい」と述べた。製造元の中国側に捜査への熱意がなければ、何も前進しない。政府として、中国側に徹底調査を働きかけていくことも大事だ。

　消費者の間には、冷凍ギョーザ以外の冷凍食品にも買い控えが広がり、ほかの中国製輸入食品への不信感も高まっている。解明が遅れるほど、中国には深刻な痛手となる。日本の冷凍食品業界などにも、影響が出始めている。

　消費者の不安解消と冷凍食品産業の動揺を最小限に食い止めるには、原因の究明が欠かせない。

　中毒事件が明るみに出て半月以上になる。その後、別の有機リン系殺虫剤「ジクロルボス」が混入した冷凍ギョーザも見つかっている。どれも、製造元は中国河北省の天洋食品だ。日本では一般に流通していないメタミドホスが、未開封の包装袋の内側からも検出された。

　殺人未遂事件として共同捜査本部を設け、国内関係者から事情を聞くなどしている千葉、兵庫県警は、「中国での製造から袋詰めの段階で混入した可能性が高い」としている。

　出荷の際に段ボールに詰められ、日本の小売業者まで密封状態で輸送されるため、途中の段階で故意に混入させるのは難しいからだ。

　捜査当局は、検出されたメタミドホスの詳しい成分鑑定を行い、流通地域など出所を特定したいとしている。成分が中国国内のものと一致すれば、出荷前に混入した可能性が一段と高まる。

　主権の壁があり、日本の捜査員が中国に行って工場を捜索し、関係者を聴取することはできないが、科学的データが得られれば、中国側の捜査に役立つ。

　一部に極めて高い濃度が検出されたことから、畑で使用された残留農薬が原因ではない、とする見方が強い。

　中国の検疫当局幹部は「中日友好の発展を望まない少数の過激分子が極端な手段に出たのかもしれない」と語った。さらに１週間後には、「生産から輸出までの過程で人為的に混入される可能性はほとんどない」と述べた。しかし、具体的な根拠がある発言ではないようだ。

　責任の押し付け合いにならないよう、意思疎通を図るべきだ。明白な証拠に基づく原因の特定以外には、消費者の信頼は取り戻せない。

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