救急医療情報システム、過半数が利用せず

 病院の空きベッド数を医療機関が入力し救急搬送時に役立てる「救急医療情報システム」について、国内757カ所の消防本部の過半数が「利用していない」と答えたことが2月14日、消防庁の調査で分かった。ベッド情報を消防本部で表示するものの、更新頻度が低く信頼性が低いことなどが主な理由。リアルタイムでシステムに入力していると回答した医療機関は1割にとどまり、救急医療情報システムが救急搬送時に生かされていない実態が浮き彫りになった。

 昨年夏に奈良で起きた妊婦の死産など相次ぐ救急医療機関の受け入れ拒否の問題を受け、消防庁は救急医療情報システムが効果的に活用されているか検証するために調査を実施した。

 救急医療情報システムを整備していない山形県と島根県と沖縄県を除く44都道府県にある757カ所の消防本部に調査したところ、「利用していない(「全く利用していない」と「ほとんど利用していない」の合計)」が53.2%と過半数を占めた。「主たる照会手段」と答えたのは14.8%にとどまり、「補完的な照会手段」は32.0%だった。

 「利用していない」と答えた消防本部が挙げた理由の内訳は、「リアルタイムの情報ではない、情報の信ぴょう性が低い」が27.4%と最多だった。このほか、「当番制・輪番制が確立しているため不要」が25.8%、「独自で情報収集している」が13.2%、「医療機関数に限りがある」が10.8%などだった。

 システムを「リアルタイムで更新している」と答えたのは、入力システムを持つ4,358の2次、3次救急と救急告示医療機関のうち11.1%にとどまった。「1日2回の定時更新」は30.8%、「1日1回の定時更新」は28.9%と、過半数が1日に2回以内の定時更新だった。更新しにくい理由として、リアルタイムに近づけようとすると手間やコストがかかるなどの負担感を挙げている。空床を表示していても実際にはほかの救急患者や入院患者に対応しているため難しいケースもあるとした。

 消防本部がシステム活用のために必要なこと(複数回答)として挙げたのは、「リアルタイムの表示」が71%、「『受け入れ可能』と表示した場合の確実な受け入れ」が69%と多かった。ほかには「表示項目の細分化」が20%、「他の都道府県システムとの連結」が18%だった。

 各消防本部のシステムの利用状況については宮城県が10月末から12月21日の間に実施したものを取りまとめ、医療機関の情報提供状況については消防庁が今月4日から8日にかけて調査した。消防庁は消防機関と医療機関の連携に関する作業部会を設置して、システムの活用などについて議論してきたが、今回の調査を受け、リアルタイムに情報を更新する仕組みの構築などを求めて中間報告を3月に取りまとめる。


更新:2008/02/15 17:39     キャリアブレイン

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08/01/25配信

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