大阪市消防局は14日、07年の救急患者の搬送で、病院側に断られて受け入れ要請が20回以上になった事例が320件に及んだと発表した。06年は104件で、3倍以上に急増。要請を63回も繰り返したり、受け入れまでに5時間13分を要したりした事例もあった。医療体制が全国トップクラスといわれる大阪でも、救急患者の受け入れ環境が急速に悪化している実態が浮かび上がった。
全国的な関心の高まりを受けて06年分に続いて集計。病院側の受け入れ拒否理由については記録を残していないため、分析はできていない。
同局によると、320件中、20回台(20~29回)が256件と最も多く、50回台と60回以上が各1件だった。20回以上の要請で、現場到着から病院到着までに要した平均時間は約1時間半だった。
時間帯では、午前0~3時が101件▽午後9時~午前0時が76件▽午前3~6時が66件--など、深夜から未明の当直時間帯に集中。診療科別では、内科126件▽脳神経外科86件▽整形外科59件--などで、脳神経外科は前年の3・6倍、整形外科は5・4倍に増えていた。
飲酒(77件)や薬の多量服用(61件)、精神疾患(21件)などの症状を併せ持った患者の場合は、診断が難しいため搬送先確保が困難になる傾向があるという。320件中、搬送時や直後に患者が死亡した例が少なくとも2件あるが、搬送時間が長くなったこととの因果関係は不明だ。
大阪市の07年の救急出動件数は20万4373件で、31年ぶりに前年(20万5036件)を下回った。その一方で、要請が20回以上のケースが急増している。
市消防局は理由の一つとして、市内の2次救急病院(救急入院に対応できる病院)が、06年の90病院に対して今年は84病院に減少したことを挙げた。医師や看護師不足から救急診療をやめた病院や、病院を閉鎖した例もある。夜間・休日に診療スタッフをそろえるのは不経済との声も強い。【井上直樹、野田武】
毎日新聞 2008年2月15日 大阪朝刊